第29期竜王戦7番勝負/第2局「丸山九段、渾身の勝利」
初防衛を目指す渡辺明竜王に
丸山忠久九段が挑戦する、第29期竜王戦7番勝負。
開幕戦を渡辺竜王が制して迎えた注目の第2局が
昨日より、神奈川県箱根町「箱根ホテル小涌園」にて
開幕の時を迎えました。。
第2局の先手は渡辺竜王。
その初手▲7六歩に対して、丸山九段も2手目に
同じく角道を開く△3四歩と返して、対局はスタート。
続く3手目に、渡辺竜王が飛車先の歩を突くと。。
4手目△8八角成。
上図での持ち駒
▲渡辺竜王: なし
△丸山九段: 角
丸山九段はノータイムで角交換を敢行。
開幕戦を落とし、絶対に負けられない本局で
拘りの十八番「一手損角換わり」を投入しました。
33手目▲8八玉。
上図での持ち駒
▲渡辺竜王: 角
△丸山九段: 角
角交換成立後
水面下で駆け引きを繰り広げながら
手損のない通常の「角換わり」の常套手段である
「腰掛銀」を目指す進行となりました。。
丸山九段は流行形の「△8一飛・6ニ金」型を採用。
先に銀を中央5筋に構えた渡辺竜王は上図で手堅く
玉の入城を完了させます。。
39手目▲9八香。
上図での持ち駒
▲渡辺竜王: 角
△丸山九段: 角
丸山九段も遅れて銀を5筋に繰り出すと(38手目△5四銀)
渡辺竜王は9筋の香車を上げて、「穴熊」へのシフトを明示。
放って置くとどんどん先手陣が堅くなるとみた丸山九段は。。
42手目△6五歩。
上図での持ち駒
▲渡辺竜王: 角
△丸山九段: 角
渡辺竜王が玉を「穴熊」に潜り込ませた
次の瞬間、6筋の歩を突き合わせ仕掛けます。。
しかし。。
49手目▲6四桂。
上図での持ち駒
▲渡辺竜王: 角
△丸山九段: 角、銀、歩
丸山九段の主導で6筋で駒を捌いてから
渡辺竜王は手にした桂馬をすぐさま打ち込み
強く反撃に転じました。。
【 一日目終了図・53手目▲5一角 】
上図での持ち駒
▲渡辺竜王: なし
△丸山九段: 角、銀、桂、歩
渡辺竜王が桂馬をオトリに「と」金を作り
角の王手で激しく後手陣に迫った上図の局面で
丸山九段が次の手を封じて、一日は終了。。
一夜が明けて
迎えた本日、決着の二日目は。。
54手目△3一玉。
上図での持ち駒
▲渡辺竜王: なし
△丸山九段: 角、銀、桂、歩
丸山九段の封じ手は本命の△3一玉。
この一手となったからには以下、▲2四歩~△同歩に
下図57手目▲同角成までは一本道。。
57手目▲2四角成。
上図での持ち駒
▲渡辺竜王: 歩
△丸山九段: 角、銀、桂、歩2
ここまでが「封じ手」からの想定局面で
ようやく手番が回ってきた丸山九段にとっては
手の広い考えどころとなり、長考に入ります。。
58手目△3三銀打。
上図での持ち駒
▲渡辺竜王: 歩
△丸山九段: 角、桂、歩2
1時間と27分にも及ぶ大長考の末
丸山九段は手持ちの銀を3三の地点に投入し
先手の馬に直接ぶつけます。。
この手に対して、渡辺竜王は3分の考慮で。。
59手目▲3三角成。
上図での持ち駒
▲渡辺竜王: 銀、歩
△丸山九段: 角、桂、歩2
馬でこの銀を食いちぎり、畳み掛けます。。
丸山九段は△同銀(60手目)と払って、以下
▲4五桂に下図62手目△3七角と進行。。
62手目△3七角。
上図での持ち駒
▲渡辺竜王: 銀、歩
△丸山九段: 角2、桂、歩2
角と銀を交換した渡辺竜王は
右の桂馬を跳躍させて銀を狙いますが、しかし
丸山九段は銀取りに構うことなく空いたスペースへ
手持ちの角を打ち込み、ついに反撃の狼煙を上げました。
この局面で、切りよく
午前の対局は終了となり、昼食休憩に突入。。
【 お昼のメニュー 】
両者ともに「松花堂弁当」
66手目△4六角成。
上図での持ち駒
▲渡辺竜王: 銀2、歩
△丸山九段: 角、桂2、歩3
午後の対局開始の一手で
渡辺竜王が桂馬を捌いて銀を手にすれば
丸山九段も馬を作って待望の基点が出来ました。
74手目△8七歩。
上図での持ち駒
▲渡辺竜王: 銀2、歩3
△丸山九段: 角、桂2
丸山九段がそのまま攻勢を強め
上図の局面で飛車先の歩を切ったその裏に
嫌らしく歩を垂らします。。
この手をみて、渡辺竜王は
32分の考慮でじっくり読みを入れ直してから。。
75手目▲4一銀。
上図での持ち駒
▲渡辺竜王: 銀、歩3
△丸山九段: 角、桂2
後手の攻めは響いてませんよと言わんばかりに
後手陣に銀を打ち込み、形を決めました。。
82手目△5五角。
上図での持ち駒
▲渡辺竜王: 銀、歩3
△丸山九段: 桂、歩
玉を3一の地点に留めた状態で受けに回った
後手陣目掛けて渡辺竜王は飛車を走らせますが
丸山九段は狙いすまして天王山に角を打ち込み
渡辺飛車を狙いつつ、金に紐をつけました。。
84手目△7六桂。
上図での持ち駒
▲渡辺竜王: 金、銀、歩3
△丸山九段: 桂、歩2
渡辺竜王はそれでも構わず
飛車で金を捕獲しますが(83手目▲6四飛)
丸山九段は握った手番で力強く桂馬を跳ねると
この瞬間、先手玉には「詰めろ」が。。
長らく均衡を保ち続けた名勝負は、風雲急。。
丸山九段が主導権を握り、クライマックスを迎えました。
【 投了図・98手目△8八銀 】
投了図での持ち駒
▲渡辺竜王: 金2、銀、歩3
△丸山九段: 金、歩
渡辺竜王の反撃をものともせず
キッチリと先手玉に迫る丸山九段の前に
上図の局面で渡辺竜王は無念の投了。。
渾身の読み合い、攻め合いを制した
丸山九段があらめてその実力を満天下に示し
番勝負を1勝1敗の五分に戻しました。。
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竜王戦/第2局一日目の所感。
読む将棋Ⅱにて