本日は第75期A級順位戦/4回戦「羽生三冠-稲葉八段は横歩取り」
本日の将棋界では
第75期順位戦のうち、最高峰・A級で注目の4回戦
「羽生善治三冠-稲葉陽八段」が行われています。
両者は先週の金曜日(21日)にも
第2期叡王戦・本戦トーナメント/2回戦を戦い
その時は羽生三冠が勝利。。
中2日での再戦となった 、本日は
A級の優勝争いに絡む急所の一局となりました。
2手目△3四歩。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: なし
△稲葉八段: なし
羽生三冠の今期ここまでの成績は
33戦20勝13敗(.606)。順位戦は2勝1敗。
今期も春の名人戦から4タイトル戦連続出場を果たし
名人戦で若き挑戦者・佐藤天彦八段(当時)の前に完敗。
無念の名人陥落となると、続く棋聖戦、王位戦も苦戦が続き
いずれもフルセットの死闘の末、辛くも防衛に成功。。
4月から6月にかけて
自己ワーストとなる公式戦6連敗を記録するなど
精彩を欠く将棋の内容とともに低調な成績が続きました。
しかし
将棋界に秋の到来を告げる王座戦開幕とともに
調子は一転、うなぎ上りに。。
西の怪童・糸谷哲郎八段の挑戦を受けた王座戦では
圧勝につぐ圧勝で開幕3連勝のストレート防衛を達成。
現在は公式戦8連勝中で勝率も6割を超えました。。
対します、稲葉八段の今期ここまでの成績は
20戦13勝7敗(.650)。順位戦は開幕3連勝中。
最新形の研究将棋に明るく
「横歩取り」、「角換わり」を主戦に据えて白星を量産。
その切れ味抜群の将棋は同世代の佐藤名人を彷彿とさせ
今期より初参戦を果たしたA級でも堂々の首位に立ちます。
本局は稲葉八段にとっての正念場。
金曜日の初手合いで敗れた羽生三冠に借りを返して
優勝争いに生き残り、弾みをつけたいところ。。
本局の先手は羽生三冠。
その初手は飛車先を突く▲2六歩から。
対する稲葉八段は2手目に角道を開ける
△3四歩と返して、対局はスタート。。
6手目△8五歩。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: なし
△稲葉八段: なし
続く3手目に羽生三冠が角道を開けば
稲葉八段はすかさず飛車先の歩を突いて
互い違いに飛車先を突き、角道を開ける形で
居飛車党王道の出だしとなりました。。
次に両者は息を合わせて飛車先を決め
いざ、「横歩取り」を目指します。。
15手目▲3四飛。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 歩3
△稲葉八段: 歩2
そのまま定跡手順で進行。
互いに飛車先で歩を交換して迎えた上図の局面で
羽生三冠が2筋の浮き飛車でお隣り3筋の歩を取り
戦型は両者得意の「横歩取り」に決定。。
上図から、次に
稲葉八段は3筋に回った先手の飛車先を角で受け
現代「横歩取り」の後手番の作戦の基礎となります
「△3三角戦法」を投入しました。。
23手目▲5八玉。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 歩2
△稲葉八段: 歩2
飛車を8四の地点に引いた(18手目)
稲葉八段が玉を立てたのをみて(22手目△5ニ玉)
羽生三冠も同じく玉を立て、まずは「相中住まい」に。。
次に稲葉八段は右の銀も立て(24手目△7ニ銀)
「美濃囲い」を築く、最新形に駒を組みます。。
この手に対して、羽生三冠は。。
25手目▲1六歩。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 歩2
△稲葉八段: 歩2
代えて▲3八金なら先手の定番「金開き」となりますが
羽生三冠は1筋の端歩を突いて、後手に手番を渡します。。
この手をみて、稲葉八段は23分時間を使ってから
7筋の歩を突いて急戦を示唆すると(26手目△7四歩)。。
27手目▲3八金。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 歩2
△稲葉八段: 歩2
羽生三冠はこのタイミングで金を3筋に上げ
オーソドックスな「金開き」に形を決めました。。
この辺りは前例のある序盤ながらも、水面下で
両者の駆け引き、思惑が交差します。。
30手目△9四歩。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 歩2
△稲葉八段: 歩2
午前の対局は上図の局面まで進行。
稲葉八段が9筋の端歩を突いたところで
昼食休憩突入となりました。。
【 昼食のオーダー 】
羽生三冠: サービスランチ(ロースとんかつ)
稲葉八段: 同上(エビフライとハンバーグ盛り合わせ)
相サービスランチでお分かりの通り
本局の舞台は稲葉八段のホーム・関西将棋会館にて。
32手目△9五歩。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 歩2
△稲葉八段: 歩2
午後の対局開始の一手で
羽生三冠が1筋の位を確保すると(31手目▲1五歩)
稲葉八段も追随し、反対サイドの9筋で位を確保。。
すると、次の瞬間。。
33手目▲1四歩。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 歩2
△稲葉八段: 歩2
羽生三冠はそのまま1筋の歩を突き合わせ
端から仕掛けを開始しました。。
稲葉八段は△同歩(34手目)と応じて、以下
▲1ニ歩~△2五歩~▲3六飛~△1ニ香~▲1七桂に
△4ニ玉をみて、下図41手目▲2五桂と進行。。
41手目▲2五桂。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 歩2
△稲葉八段: 歩3
羽生三冠は1筋の香車を吊り上げてから
桂馬が味良く跳ねて、後手の角に合わせます。。
この手に対して、稲葉八段は
読み筋とばかりに、わずか3分の少考で。。
42手目△8八角成。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 歩2
△稲葉八段: 角、歩3
ズバッと角交換を敢行しました。。
しかし
45手目▲1三歩。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 角、歩
△稲葉八段: 角、歩2
角交換成立後も
羽生三冠の攻勢はますます強まるばかり。。
まずは1筋の香車を再び叩いて吊り上げてから。。
47手目▲1ニ角。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 歩
△稲葉八段: 角、歩3
香車が浮いて出来たスペースに
手持ちの角をすかさず投入し、形を決めます。。
51手目▲7七桂。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 歩
△稲葉八段: 角、歩2
一方の稲葉八段はこの角には手をつけず
飛車を浮かして桂取りから反撃を開始します。。
(48手目△8五飛)
すると、羽生三冠は
飛車を2筋に移動させ、桂馬にヒモをつけてから
左の桂馬を跳躍させて、稲葉飛車に移動を勧告。。
ここで稲葉八段の手が止まり長考へ。。
52手目△2五飛。
上図での持ち駒
△羽生三冠: 歩
▲稲葉八段: 角、桂、歩2
1時間と26分にも及んだ大長考の末
稲葉八段は桂馬強襲し、飛車切りを決断。。
勝負に出ました。。
羽生三冠はノータイムで▲同飛(53手目)と応じ
以下、△同歩~▲2一角成~△4五角~▲3ニ馬に
△同玉をみて下図59手目▲5六歩と激しく進行。。
59手目▲5六歩。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 飛、金、桂、歩
△稲葉八段: 飛、角、桂、歩2
飛車交換成立後
羽生三冠は立て続けに角切りも断行。。
先手の強い踏み込みで終盤戦突入となりました。
稲葉八段が好所の角の打ち込みで反撃し
羽生三冠が5筋の歩を突き出した、上図の局面で
夜戦に備えて夕食休憩に突入。。
【 夕食のオーダー 】
羽生三冠: 肉なん定食(うどん)
稲葉八段: 皿そば
羽生三冠の積極的な指し回しが目を引きますが
果たしてどこまで形勢に響いているかは微妙なところ。。
稲葉八段がこのままポッキリ折れてしまうとは考え難く
夕食休憩明けからの攻防が実に楽しみであります。。
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NHK杯には渦中のの三浦九段が登場。。
アンケートの締め切りは26日(水)。