第74期名人戦7番勝負/第5局「佐藤八段寄せに。。羽生名人、危うし」
3連覇を目指す羽生善治名人に
佐藤天彦八段が挑戦する、第74期名人戦7番勝負。
ここまで4局を消化し、佐藤八段が3勝1敗とリード。
名人奪取に王手がかかって迎えた大一番・第5局が
昨日より、山形県天童市「天童ホテル」にて開幕。。
第5局の先手は、カド番でもう後のない羽生名人。
気合も十分に放たれた初手は角道を開く▲7六歩から。。
2手目△3四歩。
上図での持ち駒
▲羽生名人: なし
△佐藤八段: なし
対します、佐藤八段も2手目に
同じく角道を開ける△3四歩と返して
注目の対局はスタートとなりました。。
6手目△8五歩。
上図での持ち駒
▲羽生名人: なし
△佐藤八段: なし
次に両者は息を合わせて飛車先を決め
佐藤八段が誘導する形で、また羽生名人が乗る形で
両者得意の「横歩取り」を目指す序盤の出だしに。。
15手目▲3四飛。
上図での持ち駒
▲羽生名人: 歩3
△佐藤八段: 歩2
そのまま定跡手順の進行で迎えた上図の局面で
羽生名人が2筋に浮いた飛車でお隣り3筋の歩を
かすめとり、戦型は今シリーズ4度目の採用となる
「横歩取り」に決定。。
次に、佐藤八段は
3筋に回った先手の飛車先を角で受けました。。
(16手目△3三角)
24手目△5一玉。
上図での持ち駒
▲羽生名人: 歩2
△佐藤八段: 歩2
飛車を8四の地点に引いた(18手目)
佐藤八段が玉を立てると(22手目△5二玉)
羽生名人も追随して(23手目▲5八玉)
まずは「相中住まい」模様に。。
次に後手は△7二銀と立てて
自陣の右側に「美濃囲い」を築く形が流行中ですが
佐藤八段は玉の真下に金を滑り込ませると。。
上図での持ち駒
▲羽生名人: 歩2
△佐藤八段: 歩2
銀を6筋に繰り上げ
数年前に流行し、現代は下火となっている
「△5二玉型中原囲い」に構えました。。
35手目▲7七桂。
上図での持ち駒
▲羽生名人: 歩3
△佐藤八段: 歩
8筋から機敏に仕掛け、基点を作った
佐藤八段に対して、羽生名人は桂馬を跳ねて
後手の飛車を追ってから。。
39手目▲3八金。
上図での持ち駒
▲羽生名人: 歩3
△佐藤八段: 歩2
オーソドックスな金開きに構えました。。
【 一日目終了図・57手目▲7四歩 】
▲羽生名人: 歩3
△佐藤八段: 歩
一日目は上図57手目まで進行。
羽生名人が飛車先7筋の歩を突き合わせ
互いの角が直接、相対峙した緊迫の局面で
佐藤八段が次の手を封じて、終了となりました。。
一夜が明けて
迎えた本日、決着の二日目。。
58手目△7四同飛。
上図での持ち駒
▲羽生名人: 歩3
△佐藤八段: 歩2
佐藤八段の「封じ手」は△7四同飛。
代えて△9七角成が本命視されましたが
突き合わされた歩を弾き飛ばす強気の一手から
二日目のスタートが切られました。。
この「封じ手」をみて
羽生名人の手がいきなり止まります。。
59手目▲4二角成。
上図での持ち駒
▲羽生名人: 角、歩3
△佐藤八段: 歩2
考えること1時間と9分の長考の後
羽生名人はこの一手となる角交換を敢行。。
佐藤八段が△同金寄(60手目)で
飛び込んできた角を払い、再び手番となった
羽生名人は、次に。。
61手目△4六飛。
上図での持ち駒
▲羽生名人: 角、歩3
△佐藤八段: 角、歩2
7筋で直接向かい合った飛車を
ここで交換することなく、4筋に移動させます。。
この手をみて、佐藤八段は11分の考慮で
5筋の歩を突き出して(62手目△5五歩)、以下
▲8八金~△8四飛~▲8七歩~△3三桂ときて
下図67手目▲6五角と進行。。
上図での持ち駒
▲羽生名人: 歩2
△佐藤八段: 角、歩2
羽生名人は手持ちの角を先に投入。
6五の地点にフワリと浮かせて、次に▲3四歩の
痛打を狙います。。
羽生名人の角の打ちこみに対して
佐藤八段は20分の考慮の後。。
68手目△2三銀。
上図での持ち駒
▲羽生名人: 歩2
△佐藤八段: 角、歩2
2筋の銀をスッと前に出し
手堅く3四の地点を受けました。。
この局面までで
午前の対局は終了、お昼休憩に突入。。
【 お昼のメニュー 】
羽生名人: 五目あんかけ焼きそば(サラダ・スープ付)
佐藤八段: サンドイッチ、リンゴジュース
69手目▲9五歩。
上図での持ち駒
▲羽生名人: 歩2
△佐藤八段: 角、歩2
午後の対局開始の一手で
羽生名人は9筋の歩を突き合わせ
端から仕掛けを開始します。。
70手目△4四銀。
上図での持ち駒
▲羽生名人: 歩2
△佐藤八段: 角、歩2
しかし、佐藤八段はこの歩を手抜いて
3段目に上げたばかりの2筋の銀を3筋へと
強気に繰り出し、攻め合い姿勢を示しました。。
ならば、と羽生名人は
3分の考慮で9筋の歩を取り込み(71手目▲9四歩)
以下、△4五銀~▲9六飛~△6四歩~▲7七角~
△9五歩~▲同飛に下図78手目△7四飛と進行。。
78手目△7四飛。
上図での持ち駒
▲羽生名人: 歩4
△佐藤八段: 角、歩
佐藤八段は流れるような駒捌きで
先手の飛車・角の大駒を押さえ込みます。。
何とか手を作りたい羽生名人は
3筋でむき出しになっている後手の桂馬に
叩きを入れますが(79手目▲3四歩)。。
80手目△2五桂。
上図での持ち駒
▲羽生名人: 歩3
△佐藤八段: 角、歩
佐藤八段は
桂馬の身代わりに取れる角を慌てて取らずに
狙われた桂馬を2筋へタダ捨て。。
羽生名人の▲同歩(81手目)をみてから。。
上図での持ち駒
▲羽生名人: 桂、歩3
△佐藤八段: 角2、歩
ドスンと飛車を突進させ、角を捕獲。
細かな手順に煌く才能の一端をちりばめながら
佐藤八段がジワジワと形勢をつかみに出ます。。
86手目△5七歩成。
上図での持ち駒
▲羽生名人: 桂2、歩4
△佐藤八段: 角2、歩2
羽生名人は端から踏み込み
飛車の後手陣突破の糸口をつかみますが
佐藤八段は構うことなく、5筋の歩を突き進み
歩成の王手で終盤戦突入を宣言すると。。
88手目△7九角。
上図での持ち駒
▲羽生名人: 桂2、歩5
△佐藤八段: 角、歩2
羽生名人の▲同銀(87手目)みて
佐藤八段はすかさず手持ちの角を後手陣に投入。
名人奪取へ一気呵成に寄せに出ました。。
上図から、以下
▲7八金~△5七角成~▲同玉に
△5六飛~▲4八玉~△5九角~▲4九玉~
下図96手目△5七歩と一直線に進行。。
96手目△5七歩。
上図での持ち駒
▲羽生名人: 角、桂2、歩5
△佐藤八段: 銀、歩
佐藤八段の厳しい寄せは続き
羽生名人、危うし。。この局面で
30分の夕食休憩に突入となりました。。
佐藤八段が垂らした歩は詰めろではないとのこと。
握った手番で羽生名人のドラマティックな反撃成るか。。
いよいよ
歴史的クライマックスが近づきます。。
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名人戦/第5局開幕前夜。。
名人戦/第5局・一日目終局直後の所感