野獣の迫力。。第55期王位戦7番勝負/第2局「羽生王位、一気の寄せで勝利をもぎ取る」
羽生善治王位に
木村一基八段が挑戦する、第55期王位戦7番勝負。
開幕戦を木村八段が制して 迎えた注目の第2局が
昨日より、徳島県徳島市「渭水苑」にて開幕。。
第2局の先手は木村八段。
その初手は角道を開ける▲7六歩から。
対して羽生王位が
2手目に飛車先の歩を突く△8四歩と返して
対局はスタート。。
3手目▲6八銀。
上図での持ち駒
▲木村八段: なし
△羽生王位: なし
戦型の選択権を委ねられた
木村八段は上図3手目▲6八銀として「矢倉」を明示。
10手目△4ニ銀。
上図での持ち駒
▲木村八段: なし
△羽生王位: なし
羽生王位も先手の駒組みに追随し
手番を入れ替えて行われた開幕戦/第1局に続き
一路、「相矢倉」を目指す出だしとなりました。。
16手目▲5ニ金。
上図での持ち駒
▲木村八段: なし
△羽生王位: なし
後手の作戦の分かれ目である上図16手目
△7四歩と飛車のコビンを開けば急戦含みでしたが
羽生王位は△5ニ金とし、持久戦を指向。。
31手目▲8八玉。
上図での持ち駒
▲木村八段: なし
△羽生王位: なし
上図31手目の局面で
木村八段は「矢倉囲い」の中へ玉の入城を完了。
ここまでは開幕戦と全く同じ進行となりました。
先に手を変えたのは
開幕戦を制した後手を持つ羽生王位。
開幕戦では
後手番だった木村八段が次に△9四歩(32手目)と
端歩を突いたところで。。。
32手目△2ニ玉。
上図での持ち駒
▲木村八段: なし
△羽生王位: なし
羽生王位は
先手玉に続けて玉を堂々と入城。
ガッチリと「相矢倉」が組み上がりました。
45手目▲6五歩。
上図での持ち駒
▲木村八段: なし
△羽生王位: なし
木村八段は現代矢倉の主流である
攻撃的な「▲4六銀3七桂」型に構えると
「宮田新手」▲6五歩と突いて、高らかに宣戦布告。。。
上図から、以下
△8五歩~▲2五桂~△4二銀と進行して迎えた
次の下図49手目。。
49手目▲3五歩。
上図での持ち駒
▲木村八段: なし
△羽生王位: なし
木村八段は3筋で歩をつき合わせて
仕掛けを開始しました。
67手目▲1三歩。
上図での持ち駒
▲木村八段: 銀
△羽生王位: なし
木村八段は角を利かせながら
執拗に端から羽生陣営へと絡みつきます。。
73手目▲3ニ銀。
上図での持ち駒
▲木村八段: なし
△羽生王位: 歩2
木村八段はグイグイと前への圧力を強め
上図で早くも手持ちの銀を後手陣へと投入し
攻撃の形を決めましたが。。
74手目△1五歩。
上図での持ち駒
▲木村八段: なし
△羽生王位: 歩2
羽生王位は
そ知らぬ顔で1筋の香車をまず、外しました。
この局面で終了時刻の午後6時となり
木村八段が次の手を封じて、一日目は終了。。
一夜が明けた
迎えた本日、決着の二日目。
75手目▲4三銀成。
上図での持ち駒
▲木村八段: 金
△羽生王位: 香、歩2
木村八段の「封じ手」は
羽生陣営に打ち込んだ銀で金を取る▲4三銀成。
次に羽生王位の△同銀を見てから。。
77手目▲8三金。
上図での持ち駒
▲木村八段: なし
△羽生王位: 銀、香、歩2
木村八段は
手にしてばかりの金をすぐに羽生陣営に投入。。
この手に対し
羽生王位は直接狙われた角を逃がすことなく
2筋の桂馬を取り込みました(78手目△2五歩)。。
以下、▲同歩~△4ニ銀~▲2四歩~△1四銀に
下図83手目▲7三金と進行。。。
83手目▲7三金。
上図での持ち駒
▲木村八段: 角、歩
△羽生王位: 桂、香、歩2
木村八段は
羽生玉の上空からの進撃を続けながら
金で角を取り込み、昨日からの流れそのままに
攻撃的姿勢を前面に押し出します。。
87手目▲6三歩。
上図での持ち駒
▲木村八段: 角、歩
△羽生王位: 金、香、歩2
木村八段は2筋、3筋に続いて
6筋にも歩を垂らして利かしに利かしを入れますが。。
しかし
88手目△8六歩。
上図での持ち駒
▲木村八段: 角、歩
△羽生王位: 金、香、歩2
ここまで受けに回り続けた
羽生王位が次の瞬間、飛車先の歩を突き合わせ
反撃の狼煙を上げました。。
次に木村八段が▲同歩と応じたところで(89手目)
午前の対局は終了となり、お昼休憩に突入。。
【 お昼のメニュー 】
両者ともに、松花堂弁当。
90手目△8七歩。
上図での持ち駒
▲木村八段: 角、歩2
△羽生王位: 金、香、歩
羽生王位は午後開始の一手で
木村玉の頭を露骨に歩で叩き、いよいよ本格開戦へ。。
上図から、以下
▲同金~△3三玉~▲7五歩~△2六歩~▲2八飛に
下図96手目△6五香と進行。盤上が一気に活性化します。。
96手目△6五香。
上図での持ち駒
▲木村八段: 角、歩3
△羽生王位: 金、歩
木村八段が攻め続ける展開から、一転
羽生王位が攻勢を強め、木村八段が受けに回る展開に。
上図から次に
香車に狙われた金を歩の盾で守れない木村八段は
7筋へと逃がしました(97手目▲7七金右)。
この手をみて
羽生王位は香車ロケットを発進させて成り込みます。
(98手目△6七香成)
103手目▲7六銀。
上図での持ち駒
▲木村八段: 角、歩4
△羽生王位: 金、歩
「千駄ヶ谷の受け師」との異名をとる
従来の木村八段ならば、ここから攻め駒を責めつつ
受けに回るところですが、しかし、今期好調の原動力は
積極的な受けではなく、積極的に攻める姿勢にあり。。
「矢倉」をブレークして
金が、そして銀が前方へと繰り出し、羽生攻撃軍を威嚇。
序・中盤で築いた攻撃の厚みもプレッシャーとして残っており
ジワジワと、木村八段が盤上の主導権を握り始めます。。
108手目△4ニ金打。
上図での持ち駒
▲木村八段: 歩4
△羽生王位: なし
木村八段の迫力ある指し回しを前にして
羽生王位は再び専守防衛にまわり徹底抗戦へ。。
109手目▲3七角。
上図での持ち駒
▲木村八段: 歩4
△羽生王位: なし
総力戦の様相を呈する中
木村八段は一瞬、風を通すように角を引きます。
しかし、羽生王位の次の110手目△2五桂から
以下、▲2六角~△4一金寄~▲6一「と」金~△5一金~
▲同「と」金~△3九角と、決戦模様に突入。。
128手目△2四玉。
上図での持ち駒
▲木村八段: 金2、歩5
△羽生王位: 銀、桂、歩2
実弾が飛び交う中をかいくぐり
羽生王位は玉の上部脱出経路をこじ開けました。。
さすがの底力をみせます。。
133手目▲9八玉。
上図での持ち駒
▲木村八段: 金、歩5
△羽生王位: 歩2
一方、攻勢を優勢まで持ち込めなかった
木村八段はさすがに攻め疲れたのか、玉を9筋へと寄せ
受けに回ります。。
しかし、次の瞬間
134手目△7九馬。
上図での持ち駒
▲木村八段: 金、歩5
△羽生王位: 歩2
手番を握った羽生王位は
肉食獣のようなド迫力で馬が木村陣へと飛び込み
一気の寄せに出ました。。
【 投了図・162手目△7八龍 】
投了図での持ち駒
▲木村八段: 飛、金、銀、香2、歩3
△羽生王位: 銀2、桂、歩5
木村八段は最後まで粘りますが
全てを読みきった羽生王位は正確無比に寄せていき
上図162手までで木村八段、無念の投了となりました。
常に守勢に回る難しい中盤戦を凌ぎ
終盤の一瞬の隙を見逃すことなく、勝負を決めた
羽生王位は強さを際立たせる見事な今シリーズ初白星。
対戦成績を1勝1敗の五分に戻しました。