因縁の舞台で三度目の対戦。。「羽生三冠-橋本八段を振り返ろう」
ニコニコ超会議 が盛大に行われた
本日土曜日の将棋界は、公式対局はお休み。
今回は来週の月曜日に行われます
第27期竜王戦ランキング戦1組トーナメントの準決勝
「羽生善治三冠-橋本祟載八段」に注目。。
両者が竜王戦の舞台で顔を合わせるのは今回が三度目。
ここまでの2戦はいずれも、橋本八段が勝利をおさめています。
最初の顔合わせは2011年7月6日。
第24期竜王戦決勝トーナメントの準々決勝でした。。
13手目▲8八飛。
▲橋本七段(当時。以下同じ): 歩
△羽生二冠: 歩
先手・橋本八段の初手▲7六歩から
△3四歩~▲6六歩~△3ニ飛~と進行し
戦型は「相振り飛車」に。。
49手目▲9四歩。
上図での持ち駒
▲橋本七段: 歩
△羽生二冠: 歩
先に飛車に手をかけた羽生三冠は「三間飛車」
遅れて飛車を振った橋本八段は「向かい飛車」に構えると
橋本七段は「金無双」に、羽生三冠は「美濃囲い」に
それぞれ玉を囲って、駒組みが完了。。
上図49手目に
橋本八段が「美濃囲い」の端から歩を突き合わせて
戦いが始まりました。。
76手目△4六桂。
上図での持ち駒
▲橋本七段: 銀、桂、歩
△羽生二冠: 香、歩3
歩を利かせながら羽生玉に絡みつく橋本八段に対し
羽生三冠は桂馬を打ち込み王手・金取りから反撃へ。。
上図から、以下
▲4八玉~△5八桂成~▲同金~△3五角成と進行。
羽生三冠がうまく角を戦場へと引き戻し、馬を作りますが。。
81手目▲3六銀。
▲橋本七段: 桂2、歩
△羽生二冠: 金、香、歩3
その直後、橋本八段は銀で馬を追いさらに威嚇。。
橋本八段は現在31歳。
研究将棋全盛の将棋界にあって、最新定跡に囚われることなく
自らの手に馴染んだ模様を大切に将棋を作る無頼派。
もみ合いが続くコッテリとした力戦が滅法強く
最近では、第72期B級1組順位戦でケンカを売ってきた
豊島将之七段を二枚腰でうっちゃり、返り討ちに した一戦が
目の肥えた将棋ファンの間で高い評価を得ました。
本局も
橋本八段の持ち味が遺憾なく発揮された名勝負となりました。
上図での持ち駒
▲橋本七段: 金、桂、歩
△羽生二冠: 歩4
形勢は羽生三冠優勢。。
橋本八段は狭い地点に玉を押し込み
来るなら来いと、徹底抗戦の構えを見せますが。。
94手目△3五飛。
上図での持ち駒
▲橋本七段: 金、桂、歩
△羽生二冠: 桂、歩4
大駒を渡すと危ないと見られていた
羽生三冠は構わず飛車が桂馬を取り込みました。。
しかし、橋本八段はこの飛車を取らずに
馬に金をぶつけて露骨に取りに出ます(95手目▲5七金)。。
まさにどちらも紙一重は重々承知のスリリングな終盤戦に突入。。
103手目▲7一飛。
上図での持ち駒
▲橋本七段: 金、桂、歩
△羽生二冠: 歩4
互いにわが道を行き
羽生三冠は銀を、橋本七段は角を入手。
羽生三冠がさらに橋本玉へと迫りますが
際どくかわして手番を握った橋八段が狙いっていた
▲6一角(101手目)から電光石火の反撃へ。。
羽生二冠が銀で合い駒すると、今度は飛車を投入。
劣勢から一転、何と後手玉に「詰めろ」がかかりました。。。
▲8一飛成~△9三玉~▲9四歩~△同玉~▲9九飛~
△9五歩~▲8六桂~△9三玉~▲9四銀までの9手詰め。
羽生三冠が
振りほどくかどうかの勝負でしたが。。
【 投了図・107手目▲8三歩 】
投了図での持ち駒
▲橋本七段: 金、銀、桂
△羽生二冠: 飛、歩4
羽生三冠は粘ることなく、あっけなく投了。。
難解な終盤戦で何か見落としがあったのかもしれませんが
橋本八段の腰の重さが光った逆転劇となりました。
この年、橋本八段は大ブレーク。
連勝につぐ連勝で勝ちまくり、年度成績は39戦29勝10敗(.744)。
順位戦もB級1組で9勝3敗。見事、「A級、八段」を達成しています。
32手目△2ニ玉。
上図での持ち駒
▲橋本八段: なし
△羽生二冠: なし
両者二度目の顔合わせは
大熱戦からわずか8ヶ月後の12年3月7日
第25期竜王戦ランキング戦1組トーナメントの2回戦で
相対しました。。
先手は再び橋本八段。
初手から▲7六歩~△3四歩~▲6六歩~と
前回の対戦と同じ出だしとなりましたが、次の4手目に
羽生三冠は手を変え△8四歩と飛車先の歩を突きました。。
すると、橋本八段も居飛車を志向し戦型は「相矢倉」に。
双方、ガッチリと組み合い、上図の局面で玉の入城を完了。
45手目▲6五歩。
上図での持ち駒
▲橋本八段: なし
△羽生二冠: なし
橋本八段は現代「相矢倉」の主流
「▲4七銀3七桂」型に組み上げてから、最近は影の薄い
「宮田新手」▲6五歩を入れました。。。
49手目▲3五歩。
上図での持ち駒
▲橋本八段: なし
△羽生二冠: なし
確立された定跡手順の進行から
橋本八段が3筋の歩を突き合わせて、仕掛けを開始。
以下、△同銀~▲同銀~△同歩~▲1五歩~に。。。
54手目△3七銀。
上図での持ち駒
▲橋本八段: 銀
△羽生二冠: 歩
後手は角のラインに銀を打ち込み
先手の飛車の押さえ込みを図る、当時の最先端の
課題局面へと進行。。
ちなみに、この年の順位戦で
羽生二冠も同じ形を先手を持って指して完勝 をおさめていますが
本局・橋本八段戦をベースにしていたのかもしれません。
83手目▲6七金寄。
上図での持ち駒
▲橋本八段: 歩3
△羽生二冠: 角、銀、歩2
前回の竜王戦顔合わせ以上に
コッテリと濃厚なやりとりが続きますが、こうなるとやはり
橋本八段は力を発揮しやすいのか、腰の据わった指し回しが
徐々に盤上に染みて行きます。。
120手目△9七歩。
上図での持ち駒
▲橋本八段: 桂、歩3
△羽生ニ冠: 金、銀2、歩
一方、同じ相手に同じ舞台で連敗は御免と
押し込まれた羽生三冠は怒涛の反撃。。
上図の局面では
△9八歩成~▲同香~△同香成~▲同玉~△9七金~
▲同玉~△9六歩~▲同玉~△9五歩~▲9七玉~に
△9六香~▲8八玉~△9九銀~▲8九玉~△9八銀まで
「詰めろ」を先手玉にかけて追い込みます。
しかし。。
147手目▲7ニ銀。
上図でも持ち駒
▲橋本八段: 飛、香、歩6
△羽生二冠: 金、銀、歩2
橋本玉は驚異的な生命力で羽生攻撃軍をはね返し
「詰めろ」を振り切りと、強烈な切り替えしで羽生玉を
あっと言う間に追い詰めました。。
【 投了図・159手目▲2四龍 】
投了図での持ち駒
▲橋本八段: 飛、香、歩8
△羽生二冠: 金、銀、桂、香、歩2
最後も厳しく寄せに入り
上図159手目の局面で羽生三冠、無念の投了。
竜王戦の舞台で2期連続
橋本八段は羽生三冠を破る殊勲の白星を飾りました。
両者のここまでの対戦成績は
ここまで7戦して、羽生三冠の5勝2敗。
つまり、竜王戦での顔合わせ以外は羽生三冠が全勝。。。
第25期竜王戦以降、2度の対戦ではいずれも同じ後手番で
完勝をおさめており、単なる巡り会わせと言えなくもないですが。。
ただ、羽生三冠ファンとすれば
「永世七冠」最後にして最大の関門である竜王戦が舞台なだけに
不安が募るのは事実。。
将棋以外の話題では賛否の分かれることの多い橋本八段ですが
こと将棋に関しては、プロ棋士にもファンがいるほどの豊かな才能に
高い評価が集まる「本物」だけに、月曜日の対戦は予断を許しません。
羽生三冠が「約束の場所」へ歩を進めるのか。。
将棋界の風雲児・橋本八段が三度、一発を入れるのか。。
月曜日の対戦が、今から楽しみであります。。