第63期王将戦7番勝負/第4局「羽生三冠完勝、番勝負は振り出しに」
渡辺明王将に
羽生善治三冠が挑戦する、第63期王将戦7番勝負。
ここまで3局を消化し、渡辺王将の2勝1敗で迎えた
勝負どころの第4局が昨日より、青森県は弘前市
「弘前市民会館」にて行われました。。
第4局の先手は羽生三冠。
その初手は同じ手番で行われた第2局と同じく
飛車先を突く▲2六歩から。。
4手目△5四歩。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: なし
△渡辺王将: なし
渡辺王将の2手目は角道を開ける△3四歩。
この手をみて、羽生三冠も3手目に角道を開け
居飛車を明示(3手目▲7六歩)。。
両者のこれまでの対戦は
相居飛車が前提となっており、本局も次の4手目に
渡辺王将は△8四歩と返すものと、思われましたが。。
しかし
渡辺王将は飛車先ではなく、中央5筋の歩を突き
「ゴキゲン中飛車」を示唆しました。。
本局の直前、先週の金曜日(14日)に行われた
佐藤康光九段との対局でも、渡辺王将は後手番で
「ゴキゲン中飛車」を採用しており、事前研究があるのは
間違いなしの出だしに、羽生三冠の手が止まります。。
6手目△5二飛。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: なし
△渡辺王将: なし
羽生三冠がしばしの考慮の後
飛車先を決めたのを見て(5手目▲2五歩)
渡辺王将は満を持して飛車に手をかけ、中飛車に。。
どちらにとっても正念場
踏ん張りどころの第4局の戦型は
渡辺王将、まさかの「ゴキゲン中飛車」となりました。
16手目△4四銀。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: なし
△渡辺王将: なし
羽生三冠は
玉を6八の地点に保留したまま、右の銀を繰り上げる
「ゴキ中対策」の決定版、「超速▲3七銀」を投入。
一方、飛車を振ったからにはその作戦に注目が集まる
渡辺王将は数ある対抗策の中から、自らの左の銀を
先手に合わせて4段目に繰り上げる「銀対抗」型を採用。
「ゴキゲン中飛車」の現在進行形の模様から
駒組みは進行していきます。。
43手目▲6八金。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 歩
△渡辺王将: なし
渡辺王将は
振り飛車の相棒である「美濃囲い」は築かず
端歩も受けて「穴熊」にも潜らず。。
対する羽生三冠は
二枚銀を戦場に好戦的に繰り出してから
居角のまま金無双に構えました。
渡辺王将の振り飛車は意外でしたが
ここ数年、隆盛を極めた「ゴキゲン中飛車」の
最先端にして最高レベルの研究、構想を将棋界の誰より
受けて立ち続ける羽生三冠にとっては手馴れた戦い模様。
相居飛車でねじり合よりも
むしろ、やりやすい展開となったように感じられますが。。
果たして
経験値に乏しい振り飛車側を敢えて持つ
渡辺王将にスペシャルな秘策はあるのでしょうか。。
上図から次に
渡辺王将が右の銀を自陣三段目上げると。。
(44手目△6三銀)
45手目▲5五銀左。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 歩2
△渡辺王将: なし
羽生三冠は繰り出した二枚銀のうち
左の銀を天王山・5五の位に力強く突き出し
仕掛けを開始。。
互いの角と飛車のラインがクロスする地点で
銀交換を要求しました。
【 一日目終了図・47手目▲5五同銀 】
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 銀、歩2
△渡辺王将: 銀
渡辺王将も銀交換に応じ
局面は一大決戦含みの流れとなり、緊張感が高まった
上図の局面で渡辺王将が「封じ手」の意志を示し
一日目は終了。。
「ゴキゲン中飛車」も
一度開戦となると、もう後戻りの利かない激しい戦型だけに
早くも終盤の入り口、本局の急所を迎えたと言っても
過言ではありません。。。
両者の思惑が交錯する中、一夜が明け
迎えた本日、決着の二日目。
48手目△7四歩。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 銀、歩2
△渡辺王将: 銀
渡辺王将の「封じ手」は△7四歩。
争点から離れた地点の歩を突き、決戦ムードから
事態の穏便化を図ります。。
この「封じ手」をみて
羽生三冠も5筋に浮いている銀の背後に歩をあてがい
一つ、呼吸を整えました(49手目▲5六歩)。
すると、次の瞬間
50手目△6五銀。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 銀、歩2
▲渡辺王将: なし
渡辺王将は
6五の地点に手持ちの銀をべったと打ち込み
5筋と7筋に浮いている先手の歩を取りに出ます。。
以下、▲5七金直~△7六銀~▲7七歩~に
△8五銀~下図55手目▲7九角と進行。。
55手目▲7九角。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 銀、歩
△渡辺王将: 歩
渡辺王将は貴重な一歩を手持ちにした上で
先手の角の7筋、9筋からの活用経路を封鎖し
押さえ込みに成功しました。。
このままでは大きな戦力ダウン、ということで
羽生三冠は角を引き、戦場から離しラインを変えました。
62手目△2三歩。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 銀、歩
△渡辺王将: 歩
渡辺王将は8筋の銀を拠点とし
右の桂馬を跳躍させて攻守ともに迫力を増します。
上図62手目の局面までで
午前の対局は終了。お昼休憩突入となりました。
【 お昼のメニュー 】
羽生三冠: 鳥のくわ焼き
渡辺王将: 松花堂弁当
65手目▲4五桂。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 銀、歩
△渡辺王将: 歩2
一方の羽生三冠も
飛車先を自陣再下段まで引き下げ守りに利かせると
右の桂馬が軽快に二度目の跳躍。。
本来、攻撃陣の主役であるべき
飛車と角を自陣再下段に待機させたまま
飛び道具を攻撃の基点に据えました。。
上図から次に
渡辺王将が角を4二の地点に引くと(66手目)
羽生三冠は3四の地点に、手持ちの銀を投入。。
(67手目▲3四銀)
攻撃に厚みを持たせ
こちらも模様に迫力が増していきます。。。
73手目▲2三飛成。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 歩
△渡辺王将: 歩
しばし押し問答が続いた後
羽生三冠が機敏に仕掛け、飛車先突破に成功。。
後手の飛車・角を押さえ込みつつ
先に龍を成り込み、形勢を握ります。。。
80手目△5六歩。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 香、歩2
△渡辺王将: 桂、歩
やはり、振り飛車は捌きが命ということなのか
渡辺王将が張った模様は連携はするものの
自陣にとどまり動くに動けない状態に。。
何とか局面を解すべく
渡辺王将は頭の丸い桂馬の先の歩を伸ばし
▲3四歩を誘い、遅まきながら捌きを狙いますが。。
81手目▲4三香。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 歩2
△渡辺王将: 桂、歩
しかし、羽生三冠は許さず。
行き場のない渡辺角の頭上に香車を突き立て
勝負そのものを決めに出ました。。
87手目▲2一角。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 桂、歩2
△渡辺王将: 桂、香、歩
羽生三冠は
捕獲した角をすぐに渡辺陣営に打ち込み
駒を回転させながら、崩しに掛かります。。。
構想を不発に終わり、捌きも封じられた
渡辺王将は見るからに、苦しくなりました。
92手目△4一香。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 桂、歩2
△渡辺王将: 桂、歩
それでも、渡辺王将は必死の抵抗。
小技をつないで懸命に粘り、最善を尽くします。
羽生三冠は馬取りに構うことなく、上図から次に
5四銀成と前に出て、寄せの形を作りましたが。。
100手目△5七歩。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 飛、銀、桂、歩3
△渡辺王将: 角、銀、桂、歩
土壇場に来て、渡辺陣営の堅さが活き
さすがの羽生三冠も簡単には渡辺玉に迫れず。。
その間に、渡辺王将はジワリ、ジワリと歩を進め
羽生玉に不穏な足音が届くまで追い込みます。。
一手のミスも許されない、最終盤戦。。
最後に勝利をものにしたのは。。。
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【 投了図・111手目▲9四歩 】
投了図での持ち駒
▲羽生三冠: 飛、金、銀、桂、香、歩5
△渡辺王将: 飛、角、銀、桂、歩
渡辺王将は際どく迫るも、羽生玉は遠く。。
逆に羽生三冠は確実に「詰めろ」をかけると
上図111手目の局面で渡辺王将、無念の投了。
羽生三冠は第3局に続く連勝を飾り
今シリーズの成績を2勝2敗の五分の星に戻しました!