第63回NHK杯/1回戦「山崎七段、持ち味と相手の良さを引き出し、完敗」
【 投了図・155手目▲3一銀 】
投了図での持ち駒
▲佐藤七段: 金、銀2、桂、香、歩3
△山崎七段: 桂、香、歩5
昨日放送されました
第63回NHK杯/1回戦の注目カード
「山崎隆之七段-佐藤天彦七段」は、上図155手までで
先手・佐藤七段が勝利。
関西の若大将
山崎七段は後輩に示しをつけることが出来ず
早くも今期のNHK杯から姿を消しました。。
3手目▲6八銀。
上図での持ち駒
▲佐藤七段: なし
△山崎七段: なし
先手・佐藤七段の初手▲7六歩に対し
山崎七段が2手目△8四歩と返して対局がスタート。。
生粋の居飛車党である佐藤七段は次の3手目に
山崎七段の得意戦型「角換わり」を目指す▲2六歩ではなく
6八銀として「矢倉」を明示。。
以下
△3四歩~▲6六歩~△6二銀~▲5六歩~△5四歩~と
山崎七段も先手に追随する動きをみせ、「相矢倉」の
定跡手順で進行しました。。
11手目▲5七銀右。
上図での持ち駒
▲佐藤七段: なし
△山崎七段: なし
しかし、それも長くは続かず
天才肌の感覚派・山崎七段は右の銀を素早く繰り上げ
「急戦」を匂わせます(10手目△5三銀)。。
この動きに対して
もともと受けに自信の佐藤七段は素早く反応。
自らも右の銀を中央5筋の自陣三段目まで繰り上げました。
19手目▲7九角。
上図での持ち駒
▲佐藤七段: なし
△山崎七段: なし
その後、互いに中央5筋自陣三段目に構えた
銀を中心に、通常の「相矢倉」を目指す定跡とは違い
駒組みを双方指向する展開に。
佐藤七段は右の銀に続いて
金ともう一枚の銀も三段目に上げてから角を引き
「早囲い」の準備。
一方、山崎七段は
「高美濃囲い」の中に角がおさまる形となり
いかにも山崎七段らしい難解な序盤模様を予感させます。。
30手目△7三角。
上図での持ち駒
▲佐藤七段: なし
△山崎七段: なし
後手陣に比べて
スマートな駒組みを目指した佐藤七段は
飛車を3筋へと振り、その飛車先で駒をぶつけます。。
その最中に、山崎七段は角に手をかけ
△5一角~△7三角と旋回し、角度を変えました。
51手目▲8六歩。
上図での持ち駒
▲佐藤七段: 歩
△山崎七段: なし
しかし、すぐに開戦には至らず。
佐藤七段は飛車先の歩を切ったことに満足して
玉を盤面向かって右側へと寄せていき、手堅く「穴熊」へ。。
山崎七段も角と入替わる形で
「高美濃囲い」の中に、玉がおさまり囲いを完成。
「天彦穴熊」を咎めるべく
左の桂馬が軽やかに二度の跳躍を果たしました。。
佐藤七段がその桂馬の丸い頭に歩を突きつけ
3度目の跳躍を催促すると、山崎七段は9筋へと桂馬を跳ね
「穴熊」の弱点となる端攻めを高らかに宣言し、開戦へ。。
(52手目△9七桂成)
67手目▲7八桂。
上図での持ち駒
▲佐藤七段: 歩2
△山崎七段: なし
歩の突き捨てを連発し、細かく模様を動かしながら
圧力をジワジワと強める山崎七段。
佐藤七段は落ち着いた対処から
手にした桂馬を受け駒として自陣に投入。。
この辺りは両者の棋風が交錯します。。
78手目△9七歩成。
上図での持ち駒
▲佐藤七段: 歩4
△山崎七段: 歩
佐藤七段が受けに自信なら
山崎七段の魅力は何といっても、独特の感性に身を委ね
才気と狂気が同居する、その攻め筋。
本局も先手の飛車を5筋へと呼び(74手目△5八歩~▲同飛)
8筋の金を吊り上げてから(76手目△8六歩~▲同金)
9筋の歩を突進させ、攻撃開始。。
95手目▲2八香。
上図での持ち駒
▲佐藤七段: 香、歩4
△山崎七段: 金、歩3
守りの要駒・金を一枚剥がし
「天彦穴熊」の形を崩した山崎七段は、飛車を2筋へと振り
がら空きの盤面向かって右側から佐藤陣営への切り込みを
狙います(94手目△2五飛)
しかし、佐藤七段はすかさず
香車ロケットを飛車先に配置し切り返し。。
香車を使わせたことに満足して
次に飛車を再び9筋へと戻す手も考えられましたが。。
96手目△2七金。
上図での持ち駒
▲佐藤七段: 香、歩4
△山崎七段: 歩3
山崎七段は山崎七段らしく
せっかく手にした金を惜しげもなく捨てて、より実戦的に
香車の確保と飛車の成り込みを狙いました。。
しかし凄い手。。
上図から、もちろん
▲同香~△同飛成~▲2八香~△5七歩と進行するも
以下、山崎七段の佐藤陣営からの後退を余儀なくされ
形勢も微妙な空気が漂い始めます。。。
119手目▲3五角。
上図での持ち駒
▲佐藤七段: 飛、金、歩3
△山崎七段: 歩
金を捨ててまで
攻撃に出た山崎七段でしたが、佐藤七段の受けの前に
先手は加速するというより、先細ってきた印象が。。
一方、見た目はやたら分厚い山崎陣営攻略に向け
佐藤九段は手始めに飛車を捕獲し、戦力補強。。。
141手目▲8八金打。
上図での持ち駒
▲佐藤七段: 銀、香、歩5
△山崎七段: 桂、歩3
相手が攻める姿勢を見せたことで
山崎七段も息をふきかえし、激しい攻防をリード。。
しかし、攻められた方が頭が冴えるかのように
佐藤七段は再び手厚く受けに回り、三枚の金で玉を守ります。。
【 投了図・155手目▲3一銀 】
投了図での持ち駒
▲佐藤七段: 金、銀2、桂、香、歩3
△山崎七段: 桂、香、歩5
さすがの山崎七段も金の三枚ブロックは破れず
上図155手までで、無念の投了となりました。。
山崎七段が
佐藤七段の持ち味を引き出した名勝負との見方も出来ますが
しかし、結果は伴わず。残念ながら山崎七段の今期NHK杯は
幕を閉じました。。