第69期名人戦7番勝負/第7局を振り返ろう。。前編
森内新名人の話
「第4局以降はチャンスらしいチャンスがなかったが
めったにない名人戦第7局で力を出し切ろうと思った。
一手一手難しい将棋だったが、辛抱して指せた。
勝てたのは自分でも驚いています。」
羽生名人の話
「3連敗から3連勝したが、1局ずつやっていくしかない。
星のことは気にせず、特別変わったこともなかった。
ミスが多かったことが敗因だと思う。」
森内九段、名人奪還 4期ぶり通算6期目 将棋名人戦 - asahi.com
森内新名人と同門となる勝浦修九段門下
野月浩貴七段のツイートより。
今シリーズ
そして最終/第7局 の計4局のうち、実に3局が「横歩取り」。
羽生二冠が昨年度から多用しながら
実は成績としてはあまり高くない「後手横歩取り」。。
昨年度の羽生二冠の横歩取りの戦跡
先手-5戦5勝。
後手-10戦5勝5敗。
将棋界有数といわれる研究熱心で
入念な事前準備を持って対局にのぞむことで知られる森内新名人にとっては
「ねらい目」だったのかも知れません。。
事前準備が最後の最後にものを言った。。
確かにそんな側面もあるのでしょうが、今シリーズに微妙に流れていた
運というものがあるならば、それは最初から森内九段の背中を押していた。
やはり、何といっても
開幕/第1局、そして名人の行方が決まる最終/第7局で
どちらも振り駒なのに、そのどちらとも先手番を握れたことは大きかったはず。
3連勝の後、3連敗。
五分の星で迎えた最終戦なのに何となく、羽生名人がイケイケドンドンで
森内九段は追い詰められた。。そんな雰囲気も振り駒の結果一発で逆転。。
「運命は勇者に微笑む」
終始、攻め続けた最終/第7局の森内九段。
運命に呼ばれている、試されていることを自覚している勝負師の姿が
そこにありました。。。
「俺が勝つんだ」と。
82手目△6二角。
上図での持ち駒
▲森内九段: 桂、歩
△羽生名人: 角、桂、歩
微妙な流れは
対局中、あらゆる気配を感じていると以前語った羽生名人も
感じていたように思われてまりません。。
名人戦/第4局以降
公式戦一つの負けも許さず、完全無欠の8連勝で
決戦を迎えた羽生名人が、別人のように沈黙。。終始受けに回る展開に。
森内飛車を歩の連打で端に追いやった後
角を自陣への引いた羽生名人。
86手目△3一玉。
上図での持ち駒
▲森内九段: なし
△羽生名人: 桂、歩
両者ともに持ち駒を投入し
盤上はざわざわと賑わいをみせはじめた頃
森内九段の85手目▲5三桂をみて
羽生玉が金と銀が壁を作る、狭い地点へと後ずさり。。
森内九段の次の手は87手目▲4四成銀。
ここから
勇猛果敢な将棋をここまで披露した森内九段が
その真骨頂、優雅にして手厚い「鉄板流」の差し回しを披露します。。
以下
△4六歩~▲6四歩~△7四角~▲7五角~
92手目△5二角。
上図での持ち駒
▲森内九段: なし
△羽生名人: 桂、歩
羽生名人の「攻防の角」を自陣まで押し戻し
つけ入る隙間を狭めていく森内九段。。
次の93手目は▲2五歩。
飛車も取られ、みるからに苦しくなった羽生名人。。
見ていて胸がしめつけられるような
息苦しさを感じた、しかしはっきりと終盤といえる戦い模様。
つづく。