おはようございます。
今日はいい天気ですね。
定期的にブログを書くと、書きたくないことまで無理に書いてしまうのでやめました。
ちょくちょく気が向いた時に書きますので、今後ともよろしくお願いします。
昔、ゲームを作っていく上で売り上げを上げる事について相談(酒のつまみ)にした事があります。
その時に言われたのが
「人を増やせば良いんですよ、人を増やせば仕事が増えてお金も増えます」
と言うような事です。
僕の感想は「・・・ん?」でしたが、この話題は相談と言いつつ酒のつまみ程度の事なので特に言及もしませんでした。
しかし、僕は二つの疑問が残りました。
1. 人を増やしたらビジネスが広がるか?
2. なぜ彼は人を増やす提案をしたのか?
の二点です。
まず、1点目について考えてみます。
僕のビジネスは僕がゲームを作る事で成り立っていて、僕の作ったモノに価値があるわけです。他の人が作ったモノに価値があるわけではありません。
このように書くと誤解を生むかもしれないので、もう少し詳しく書きます。
これは「新たに雇った人には価値を作れない」と書いているのではありません。その人に価値創造を求めていないと書いているのです。
例えば雇った人が売れるゲームになるアイデアを出してくれるのでしたら、僕はそのような人を雇いたいです。
しかし、今の僕が雇える人でそのような人は思い当たりません。(そのような価値を生み出せる人を探すのは困難です。)
「雇った人がたまたまそのような人だった。」と言う事もあるかもしれませんが、これは博打と変わらないので僕には出来ません。
そう考えると、僕が雇う人は価値を生み出せる人ではなく、僕の仕事を補佐してくれる人ということになります。
しかし現状で僕の仕事はほとんが価値想像がメインで、他の人に任せられる雑用はあまり無い状況です。
・・・と言うわけで、僕が人を雇うというのはまだ先のようです。
次に2点目について考えてみます。
では、なぜ彼は人を増やすと言う結論になったのでしょうか?
ちなみにですが、僕が想像していた回答は以下のような類いのものです。
「あの部分のUIを変えればアクセスが増えそう。」
「課金システムがわかりにくいですよー」
「あのレビューに書かれている事は致命的でしたね。」
などの回答を想像していました。
しかし、彼の回答は「人を増やす」という事でした。
なぜなのかを考えた結果、これはSES契約に起因しているためだと思いました。
SES契約とは
「企業に人を月○○万円で貸し出す」
商売です。
つまり人貸し商売なのです。
SESは人がいれば商売が成り立つのです。
問われるのは「プログラムが書ける事」だけなのです。
なので、
ビジネスを大きくする = 人を増やす
と言う発想になったのだと思います。
さて、ビジネスの進め方について考えます。
プログラマーが食っていくためにSES契約を使うのは良いと思います。
しかし、ビジネスを進めていく上で重要なのは
顧客への価値提供
であり、人を増やす事ではありません。
「価値を提供するための人が足りない!」と言う状況になってから人を増やせば良いのです。これが逆になってうまく行くビジネスは基本的にはありません。
基本的にはありませんが、SES契約などの人を売る仕事はこれに当てはまります。
そのため、彼の回答は「人を増やす事」だったのだろうと思いました。
本題です。
他の業界のことはよく分からないので、ここからもう一歩IT業界に踏み込んで考えてみます。
このSES契約について考えようと思います。
このSES契約はお金を設けると言う観点で考えると、とても理にかなっています。
企業側は人が欲しくて、請負側はお金が欲しい。
「じゃぁ、人を貸しましょう」
と言うのは十分価値提供になっています。
しかし、このSES契約は人を育てません。
正確に書くと、「SES契約を踏み台にしてやろう」くらい思っている人でない限りは企業に良いように扱われておしまいです。
他の業界ならなんの問題も無いかもしれませんが、IT業界は違います。
IT業街は技術の進歩が早いです。長期間企業と契約をしていると、その間に技術が進歩してしまい自分の技術力が世の中で通用しなくなってしまう事があります。その結果、次の契約が取れない場合があります。
しかし、今現状ではSES契約の仕事は山ほどあるので皆それに気がつきません。
下手をすると「人を貸せばお金が手に入るから、新人や素人も一緒に送り込んでやれ!」と考える請負業者もいたりします。
そうなると、技術者のレベルはどうなるでしょうか?
とにかく仕事が余ってる状況の現状、たいした勉強もせずに「現場に入ればなんとかなる!」となっていくと思いませんか?
そして、気がついたら「日本の技術者は古い技術ばかり使いたがる。」と海外から言われてしまうでしょう。
そうなったら、経営者は新しい技術を使える海外の技術者を雇い始めるのではないでしょうか?
(もちろん、その現場を踏み台にして成長する人はいます。ただ、そう言う人はSES契約云々ではなくどこでも成長していくでしょう。)
それと、もう一つ。
現場によっては技術力を学べるため、技術力は学べる人は育つかもしれません。
しかし、ビジネスを考えられる人は育たないでしょう。
なぜなら、人を増やせば成り立つビジネスしか見ていないからです。
そう言う意味でも、人を増やすことで成り立つビジネスは人の成長を手助けすることはないのです。
しかし、このビジネスは急速に成長して行っています。
僕がフリーランスになった時は小さいなエージェント会社(エンジニアの人材紹介会社)が乱立していましたが、今では大きな会社がたくさんあります。(当時の大きな会社は首都圏コンピューターと言う会社くらいでした。)
なぜ、このようなビジネスが成り立つかと言うと発注側にも問題があります。
発注側の会社はビジネスが成功したが人が足りないと言う状況で人を雇います。その時に一時的に人を借りるSES契約はうってつけです。
しかし、大抵において経営者は技術に関して無頓着だったりします。
その結果、人の採用などを現場に任せるため技術者が人を雇います。
経営面で見る場合は、人を雇う際にどのような効果を期待するかを考えます。(僕が上記に書いたように、どの仕事をさせるべきか?その人を雇うことでどのような効果があるのか?など)
しかし、技術者は技術力で人を測ります。
そのため「Javaができる人」や「Rubyができる人」のように、技術力で人を集めてしまいます。この募集で集まった人はあくまで技術での貢献を考えるため、大抵はビジネスに関しては無頓着です。
結果、ビジネスが技術の集大成のような形で作られてしまいます。
一見これでも良さそうに思えるかもしれませんが、これはビジネスに対して悪影響を与えます。
僕が見てきた例でも
「それは技術的に難しいですね。」
「あの技術を入れるとこのような事ができますよ。なので、提案とは違うことをしましょう。」
「契約した人の技術力が低いので変えましょう。」
と言う、なんでも技術を基準に考え始める文化を多々見てきました。(僕が技術者としてこのような文化を作ってしまったこともあります。)
挙げ句の果てに、「営業や経営は技術がわかってないからな」と言い出す始末まで発展します。
結果、経営を回すためには技術者の顔色をうかがわなければならなくなります。
(これは逆のケースもあります。技術力がネックになってビジネスが進まない場合は「技術者がしっかりしないから、人を増やしたり残業させたりしてでも完成させろ!」と経営側から言われる場合もあります。)
そのため技術者と経営側で乖離がすすんでいきます。
これって「人を増やせばなんとかなる」「残業させればなんとかなる」と言う視点で人を雇っているからではないでしょうか?
本来はビジネスを促進させるために人を雇っているはずなのですが、実際はビジネスを遅らせてしまっている事に気がついていないのです。
しかし、日本でSES契約を主軸としてビジネスを回している企業はこのような企業が多いのです。
そのため、SES契約で雇われる人は技術力だけで現場に入ってきます。そして、現場は混乱してデスマーチなどと言う言葉が生まれたりします。これでは人は育たないと思うのです。
※注意
ここに書いていることは全ての現場に当てはまるわけではありません。
しかし、このように経営面と技術面での乖離が進んでいる現場は数多くあることは事実です。
「働き方改革」によって残業が増えた中間管理職がそれを物語っているかと思います。