千尋は自分の部屋で1人、ベッドに突っ伏してそう呟いた。
まさか、あんなことになるなんて…。
ー時は放課後の帰りに遡る。
「実は好きな人がいるんだ」
そう俺が言った瞬間、舞の顔が落ち込んだように見えた。
だが、すぐ元の笑顔に戻ったので続きを告げることにした。
「好きなのは先輩だよ。生徒会長の夏美先輩」
俺は『本当に好きではない人の名前』を舞に告げた。
舞の表情がどうなってるか見ると、今にも泣き出しそうな表情になっていた。
ーしまった。
そう思ったのが遅すぎた。
舞は泣きながら僕を無視して、走り去って行った。
追いかけることも出来ず、千尋はその場に取り残されてしまった。
ただ舞の反応がどんなのか見たかっただけだったのに泣かせてしまった。
そんな罪悪感で千尋は凹んでいた。
本当に好きなのは舞なのに…、なんて馬鹿なことをしたんだ…。
千尋も舞と同じく、お互いのことが好きだった。
ただ、俺の好きな人が他の人だったら舞はどんな反応をするのか。
僕のことを想ってくれているのか。
それが知りたかったが為だけで泣かせてしまった。
明日、朝一に舞の家の前に行って舞に謝ろう。
そう心に決め、ベッドに寝転んだまま壁を仰ぐ。
ー思い返せば、舞は俺に好かれようとしてくれていたのかもしれない。
俺が髪は短めがいいと呟いたら、次の日から舞は長かった髪をスッパリ切り、ショートになっていた。
俺が唐揚げが食べたいと言うと、次の日の昼に作った唐揚げを食べさせてくれた。
他にもたくさん舞は俺のために色々してくれていたような気がする。
こんなことをしなくても、もう俺の気持ちはとっくの昔に舞に届いて居たのかもしれない…
そう考えると余計に千尋は罪悪感に押し潰されそうになるのだった。
ー次の朝。
「やっべぇ!遅刻した!!!!」
朝一番に舞に謝りに行くつもりが、まさかの遅刻ギリギリの時間になってしまっていた。
急いで着替え、鞄を抱えて外に出て、学校へと猛ダッシュで疾走する。
こんな日に限って…何やってんだ俺は……!!!!
今日は一層にも増して悪い予感を感じながら学校へ到着。
ギリギリ間に合ったようだ。
教室に入ると全員がそれぞれの席に座って談笑に明け暮れていた。
舞は他のクラスなので、今は確認出来ないが後から謝りに行こう。と心に決め、席に着く。
休み時間になり、舞のクラスを訪ねてみた。
「なぁなぁ、舞いる?」
近くにいた知り合いの女子に尋ねる。
「舞ちゃん?舞ちゃんはー…あれ、今はいないみたい」
教室をぐるっと見渡し返事をしてくれる。
「そうかー、ありがとう」
お礼を言い、女子がヒソヒソ話しているのを気にせず、教室に戻る。
舞いなかったな…。仕方ない、また帰る時に謝ろう。
どんどん先延ばしになっている事に危機感を感じていながら、仕方ないとばかりに気合いを入れ直す。
ー放課後。
なんでこんな時に先生の話が長いんだ…。
他のクラスが帰って行っている中、千尋のクラスだけは先生の長々しい話が続いていた。
早く行かないといけないのになんでこんな時に…!!!
やっと、先生の話が終わり、開放され、舞のクラスに行ってみると、教室にはもう誰もいなかった。
またかよ…。
仕方ない。舞の家に行って謝るか。
最終手段ではあるが、そう決め、家へ帰る。
舞の家の前に着くと、少し胸の鼓動が早くなっていることに気づく。
怒ってたからわざわざ俺を避けて居たのかもしれない。
もう俺と話したくないのかもしれない。
そんな懸念をしている自分にちゃんと謝らないと!と喝を入れ、インターホンを押す。
ピンポーン
しばらく待っても出てこない。
嘘だろ…?
もう一度押してみる。
ピンポーン
やはり、出てこない。
これは…避けられてる!?
それなら相当凹むぞ………。
ーまるで何か大きな力に邪魔されているかのように。
ーまるで俺と舞を会わせまいとしているかのように。
とぼとぼ家に帰る千尋はまだ。
もう、舞に会えない。
そんなことは微塵にも感じていなかった。
前編 了
とてもとてもお久しぶりです。
皆さんこんばんわショウです。
今回は少しいつもより長めとなりました。
千尋側から描かれる舞からは分からなかった事実。
それを書きたくて前編を書かせて頂きました。
ここから、最終的に舞と千尋はどうなるのか。
長い長い(連載期間的に)ストーリーがやっと終わりを迎えます。
最後まで読んで頂けると嬉しいです。
それではまた、後編でお会いしましょう。
では、また。