「私は、印象に残らないアイドルじゃなくて、忘れられないアイドルになれていましたか? 」

(ASTROMATE LAST LIVE「LAGASH」にて、望月さあや)

 

 

年が明けた。

少し遅れて、本当に年が明けた。

賽が振られた。

 

望月さあやのアイドル復帰が正式に発表された。

 

 

「1つ足りない賽は投げられた」、通称ひとさい。

この新たなアイドルグループの一員となることが、他のメンバーの先陣を切って発表された。

長い名前は今時の流行りなんだろうか。長い(そして関係性がわからない)名前を付けられるパン屋かラーメン屋みたいなものだろうか。

 

いかにもアイドルらしいアイドルといった衣装、メンバーカラーはオレンジ。ボードゲーム×アイドルがコンセプト…今のところは、よくわからない。

グループのダイナモたるもっちゃんには、オレンジはお似合いだろう。この人が元気ならライブは、ステージはなんとかなる、パフォーマンス面では中軸になれる、グループのエンジンになれる、そんな人だ。

この時点でどうこう語るようなこともほとんどない。まだメンバーも発表途中、今日、5人中3人目がアナウンスされたばかりだ。

ただ、元々TikTokでの毎日投稿企画なども含め、事前に動いていたのがもっちゃんだけだったということもあり、経験者がもっちゃんのみなんてことだったら大変だな、と危惧していたのだが、いまのところはツイッターのフォロワー数で見る限りはむしろもっちゃんが一番少ないくらいの状況で、正直頼もしいことしきりである。

他のメンバーとの比較の上で、事前に少しでも活動して、デビュー前に少しでも自分の客を増やしておきたい、そう思った、そんなところだったかもしれない。

自分の力だけでこの世界で羽ばたく必要などない。心強い同僚がいれば、その風も使って羽ばたけばよい。

 

いかにもアイドルらしいアイドルだ。衣装から見ても、メンバー発表動画のバックで鳴っている曲からしても。おそらく。

僕の好みか、と言われれば、別に好みではない。これは優劣でもなんでもない。ただ僕の好みからは外れている、というだけだ。可愛らしい、いわゆるアイドルらしいアイドルが好きな方にはよいものになるのだろうと思う。

落胆しているわけでもなんでもない。元々、もっちゃん本人からもそれとなく聞いていた、というものでもないが、昨年中の彼女の配信で、それとなくそのような雰囲気を醸されたことはある。

ベースはアイドルでありながらロック寄り、もしくは多少凝った楽曲、僕の好みはそのあたりなのだろうとは思うけれど、もっちゃんの今回の話があったとき、きっとそのようなところにはいかないだろうな、とも思っていた。これまでの僕の拘りからすれば、パフォーマンスの良いところ、というのももちろんあってしかるべきなのだが、こちらについては僕自身が本当にそれが好みなのか、結局曲があればそれでいいのではないのか、そういう疑義を抱いている。

いずれにしろ、もはやそのようなものも必須の条件ではない。

 

つまりは望月さあやがアイドルに復帰するのならその事実以上も以下も求めるものはない、そんな心境だ。

何であろうとただ見させてもらう。

何かを諦めたわけでもなく、理想を捨てたわけでもなく。

もっちゃんがこの雌伏の時を経て、慎重に慎重に選んだところであるなら、きっと良いところなのだろうと。それは紛れもなくただの希望的観測だが。

そんなことすらも、どうでもいいというのは暴論だが、でもやはりどうでもよく。信用に足る運営であってくれとだけは思うが。

 

売れてくれればその方がよい。しかし僕にもう売れるにおいなどわかりやしない。

流行りのをたくのやり方もわからない。ライブハウスで必死に前を取りに行くこともない。昔のように勢いよく前へ突っ込んでは波のように引いていく、そんな動きはこのご時世が許さない。コールもまたしかり。声を出さぬ間に衰えていく。

現場のをたくとしてはとうに衰えたのだろう。老兵去りゆくのみだ。

もっちゃんがもしまたアイドルをするのならそこが僕の最後だ、そう決めていた。決めたって簡単に覆るのだが。ラストリゾートだ。流れ着いた、この世の果てだ。墓標をそこに立てる。それでいい、それがいい。

 

をたくとしての最後の最後に、僕の好みのパフォーマンスをする、僕の好みの折れない燃え盛る心を持つ、僕の好みの見た目をしている、そして幸いなことにある程度理解をし合っている、そんなもっちゃんが、必ずしも僕の好みど真ん中ではない、べたべたの、アイドルらしいアイドルとして1年以上ぶりに僕の眼前へとやってくる。

それは皮肉でもあり、僕の出自、かつてのモーニング娘。やAKB48を思えば、そう、僕のアイドル観は遠くへと行き過ぎたのだ、原点回帰すべきなのだ、そう思えば、それは僥倖でもあり。

きっとアイドルは可愛ければよいのだ。そして夢を見させてくれればよい。

 

惚れこんだ人が、かつて志半ばに終わったアイドルを、完結するべくやってくる。

綺麗な衣装に身を包み。しっかりと最初から仕掛けようとする、ちゃんとそのグループを成功させようとしている運営に身を任せて。同じように、どこかでのリベンジマッチをせんとしてここへやってきた、仲間と手を取り合い。或いは、初めてアイドルになろうとする仲間がいるのかもしれない、いるかどうかは今日の時点ではわからないが、数日のうちにわかるだろう。

その仲間のことは、彼女たちと会う機会があったらそのあとに、いつかここにも記そう。最後に夢を見させてもらう仲間たちだ。彼女たちもみな、一緒に幸福になればよい。

 

もっちゃんが、今度こそ自らの思うように望むように努力が出来ればよい。自らの思うアイドルを何も遠慮せずためらうことなく表現できればよい。そして近くか遠くはわからない、あまりに近くではないように願っている、その終焉の際には、泣きつつもしっかり笑って、満足して終われればよい。

もっちゃんが、私はアイドルなのだと胸を張れればそれでよい。心から思えればそれでよい。

その終焉に僕も満足できれば、それが一番よい。

 

このあといくら文を重ねても、同じようなことを書くだけだ。

望月さあやが戦場に復帰するのだ。アイドルになるために帰ってくるのだ。もっちゃんがそれを選んだのだ。

それがとても嬉しいのだ。