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酒井邦嘉『チョムスキーと言語脳科学』インターナショナル新書
アドホックと思われる言語学に科学の旋風を巻き起こした鬼才・チョムスキー。
『統辞構造論』をはじめとし、未だ多くの誤解がつきまとうチョムスキーによる言語学に、
ついに脳科学による裏付けがなされる!?
言語学を科学にしたチョムスキーの理論に魅せられ、
言語脳科学の最先端を開拓する第一人者による、チョムスキー解説書!
・・・・・・って感じかなぁ。非常に面白かった!
普遍文法とか言語学の話は聞きかじりしたことはあったけど、
この本ではチョムスキーの著書に沿ってそれなりに解説されていて、
興味を持てましたね!
序盤がチョムスキーの著書に至るまでのイントロダクション、
その後、チョムスキーの記念碑的著作である『統辞構造論』の解説に
かなりのページ数を割いたあと、
最近の脳科学により(言語や認知とはまた違った)「文法」を司る脳の部位が
存在することを明らかにした著者の研究について述べられてます。
そのための実験手法、特に、
「文の意味と切り離された、文法構造のみの能力を調べるための実験デザイン」
はなかなか面白いものがありましたね。
ある意味で神秘の領域と思われていた「言語」というものが、
チョムスキーの理論によって科学の舞台まで降りてきて、
更にその理論がfMRIという科学技術の発展により実証されていく、
その流れがなかなか興味深く読めました!
中学・高校の教育を受けた感じでは、
場当たり的な説明しかできないように思われてた時制の変化や
語尾の下降・上昇が変換規則によって説明されてるのが印象的でした。
一方、本筋と関係ないところだけど、やや著者の発言には腑に落ちない部分が感じられ、
例えば、「最先端の科学理論は理解されない」例として、
2012年の「超高速ニュートリノ」の発表の例を挙げているが、
あれは結果的には誤りだったものの、
「既存の理論に合わない観測結果が得られた」という文脈で発表された研究結果であり、
別に相対性理論への無理解により発表されてたわけではない。
理論に合わない現象が観測されることにより理論が修正されていくことは、
科学の発展の流れとしては珍しいことではないでしょう。
他にもいくつか、筆が滑りすぎていると感じる部分もあり、
まぁ、ここらへんは「チョムスキー批判」への苛立ちから来ているものだとは思うけど、
ねぇ、という感でしたね。
あとは、この本、AIについて色々と書いていますが、
若干過小評価気味だなぁと思いながら読んでたら、
これ、ChatGPT以前の本だったんですね。
ChatGPTの登場を経て、そこら辺の認識に違いが出たのかは、興味が湧くところである。
ということで、色々と書きましたが、総合すると面白く読めた一冊でした!
『統辞構造論』も眺めてみたくなりましたね!気になる人は、ぜひぜひですね!