
徹底抗戦/堀江貴文

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ぼくの評価




(いわゆる暴露本。堀江氏の現在の心境やライブドア事件に関心のある方はどうぞ)
本書を読んで率直に「おそらくこれが真実なんだろうな」と感じました。
年月が経ち、すでに世間では風化してしまったライブドア事件。
それを今になって、真実を曲げてまで事件の主役が本を出版する意味があるのだろうかとぼくは思います。
このタイミングで出版されていることには大きな意味があると思います。
本書の最後にも書かれていますが、
「この事件の真実を一人でも多くの人に知ってもらいたかった」という言葉に偽りはないとぼくは感じます。
ぼくがこの事件に対して非常に残念に思うのは、ライブドアの本当の目的である「livedoor」というポータルサイトのアクセス数向上という至上命題がどこかに忘れ去られてしまっているということです。
一時期、堀江氏がマスコミで訴えていた「ヤフーのアクセス数を超える」という言葉は真意だったに違いないはずです。
それはIT企業の社長としてすばらしい宣言だし、それをもし成し遂げたとしたらIT業界における本物のカリスマと呼ばれていたことでしょう。
この事件を引き起こしたひとつの大きな要因。
それはこの堀江貴文という人物の異常なほどに表面化した野心これに尽きるのではないでしょうか。
そしてもうひとつ言えること。
それはテレビというメディアは国家権力に匹敵するということ。
本書を読んでなんとなくこの日本という国の陰に隠れた国家権力が見えた気がします。
具体的に挙げると次の4つの組織です。
1.政治家(唯一表面化している国家権力)
2.官僚(裏の国家権力)
3.検察特捜部(国家権力行使部隊)
4.テレビ局、新聞社をはじめとする大手マスコミ、メディア(国民の目を敵、味方自在に操れる組織)
事件の背景において、堀江氏は1.3.4の3つの組織を敵に回しています。
そして3がライブドア事件のような動きをするのはめったにないことです。
ちなみにそれに近い事件が最近起きました。
それは小沢代表の公設第一秘書が逮捕された事件です。
背景には麻生総理の政権継続が非常に困難な状況に追い込まれたことを受けての事件でした。
つまり行き過ぎたことが起こると最終的には検察特捜部が動くということですね。
検察特捜部が動くのは最終段階まで突入した場合だと考えられます。
IT業界は優秀な方が多いのですが、この堀江氏のように若いながらにして大きな野心を持っている方が他の業界に比べて多いように感じます。
天才的な頭脳と国家権力をも恐れない行動力とマイノリティ精神、この3つが大きな力を生んだ結果がこのライブドア事件だったのではないかと思います。
でも、この3つの能力は今の日本ではたらく我々に最も必要とされる能力です。
表裏一体でひとつ間違えるとライブドア事件のようなことに発展してしまうかもしれませんが、
これからの時代を担うイノベーションで世界を変えるほどの若い力には変わりありません。
堀江氏の場合はそれを受け入れてもらえる人があまりにも少なかったのだと思います。
資本主義とはいえ、日本は民主主義の国です。
どんなにそれが正しいことで将来のためにどんなに必要なことであったとしても、先で述べた4つの組織が首を縦に振るか。
そこも視野にいれた経営が必要だという象徴の事件だったのだと思います。


