穀物価格急騰 食料危機への警戒が必要だ(2月9日付・読売社説) | NPO法人生涯青春の会

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 小麦や大豆など主要穀物の国際取引価格が急上昇している。

 食料の値上がりは、新興国の政情不安やインフレを加速させ、世界経済の懸念材料になりかねない。

 途上国で暴動が相次いだ2008年の食料危機を再燃させないよう、先進国は警戒を強め、価格高騰をあおる投機に対する規制などの対策に乗り出すべきだ。

 先物市場では、1年間でトウモロコシが8割、小麦が7割、大豆が5割も値上がりした。砂糖は30年ぶりの高値、コーヒー豆やカカオの上昇も目立つ。国連食糧農業機関(FAO)が発表する食料価格指数は過去最高を更新した。

 きっかけは、世界的な異常気象で供給量が減少していることだ。ロシアが昨夏、不作で小麦の輸出を停止し、カナダ、豪州、南米などの主要産地も大雨や洪水、干ばつなどの被害に見舞われた。

 中国やインドなどの新興国の食料需要が増大し、需給バランスが崩れていることも、価格を押し上げている。

 それに拍車をかけているのが、投機資金の存在だ。米国の大規模な量的緩和に象徴される世界的な金融緩和で、だぶついたマネーが穀物市場に流入している。

 日本でも国内メーカーが食用油やコーヒー、砂糖などの値上げに踏み切り、家庭の食卓に影響が出始めた。だが、より深刻なのは、貧しい国々である。

 国民の所得が低い新興国や途上国では、消費に占める食料の比率が高く、価格上昇が社会不安に直結する。チュニジアの政変も物価高への不満がきっかけだった。

 価格安定策としては、途上国自らの政策努力が欠かせまい。アルジェリアやヨルダンなどは、政府の補助金支給で、価格を抑制する方針を打ち出している。

 だが、こうした対応だけでは限界があるだろう。先進国を含めた国際協調体制を改めて検討すべきではないか。

 今年の主要20か国・地域(G20)首脳会議は、農産物価格を主要議題に取り上げる見通しだ。議長のサルコジ仏大統領が訴える投機規制は検討に値しよう。

 金融市場に比べて規模の小さい穀物相場は、資金の動き次第で乱高下しやすい。食料への投機で得た利益に対する課税を強化するなど、一定の歯止めをかける方法を模索すべきだ。

 途上国の生産拡大に向け、先進国が技術支援や農業投資を行い、国際機関も融資を拡大する。こうした取り組みも必要である。

2011年2月9日01時29分売新聞)