2011年2月7日
【シンガポール=塚本和人】昨年末からの記録的な大雨による洪水に続き、今月3日に大型サイクロン「ヤシ」が上陸したオーストラリア北東部クインズランド州で、主要輸出産業の農作物や鉱物資源が大打撃を受けている。
ヤシは3日未明(日本時間2日深夜)、最高勢力の「カテゴリー5」を保ったまま、同州の観光都市ケアンズ近郊に上陸した。徐々に勢力を弱めたが、州当局の調べでは、住民1人が死亡したほか、住宅400軒以上が損壊し、計20万世帯が停電に追
い込まれ、道路や港など交通インフラも被災した。
豪州ではこのほかにも、ビクトリア州で大雨が降り続き、シドニーでは記録的な猛暑が続くなど新たな災害の発生に予断を許さない状況だ。
豪州はブラジル、タイに次ぎ、砂糖の原料となる粗糖の主要輸出国の一つ。クインズランド州北部は豪州のサトウキビ栽培の約3分の1を占めている。地元業界団体は少なくとも2割が壊滅に追い込まれたとし、5億豪ドル(約414億円)の被害を見込む。米ニューヨーク市場では2日に粗糖の相場が急騰し、30年ぶりの高値をつけた。その後は下落しつつあるが、国際価格の高騰が懸念されている。
また、豪州は世界最大の石炭輸出国で、日本が輸出先の第1位だ。特に鉄鋼用原料炭では同州からの輸出が豪州全体の9割に及ぶとされ、サイクロン上陸直前から一部の鉱山が操業を一時停止し、輸出するための多数の石炭運搬船が港に接岸できない状態が続いた。豪州の資源業界筋によると、同州で操業する計57カ所の炭鉱のうち昨年末からの水害で8割以上が被災。復旧途上にあったところをサイクロンが襲い、大幅な減産は避けられないとみられる。
輸出先のアジア諸国の企業の中には豪州以外の供給先を求める動きも出ている。