38、新時代を告げる世界一だ | NPO法人生涯青春の会

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                  2010110日  新潟日報社説

 2009年の新車販売台数で中国が米国を上回り、初めて首位に立った。
 米フォード・モーターによる乗用車の本格量産開始から約100年たつ。この間、世界の工業化と経済発展を先導した自動車産業は新局面を迎えたといえる。
 米調査会社によると、米国の新車販売台数は08年比21・2%減の約1043万台となり、27年ぶりの低水準に落ち込んだ。
 中国は1350万台を超えた。04年の500万台から5年で2倍以上の驚異的な伸びになっている。
 経営難に陥った米ビッグ3(大手3社)の苦境が続く。手放した傘下企業を中国企業が次々に買収した。
 中国政府の思い切った財政出動で市場が勢いづき、国内産業も力強く立ち上がろうとしているように見える。
 今はまだ生産技術などの面で日米欧のメーカーとの差がある中国企業だ。
 しかし本当の実力が備わったとき、世界の自動車地図は塗り変わるだろう。市場規模の米中逆転はそのことを十分に予感させる。
 新車販売世界一は中国市場が世界経済に及ぼす影響力の大きさを示す。それは自動車産業だけの話ではない。
 世界不況からの立ち直りの糸口を、各国は中国を筆頭とする新興国向け輸出の中からつかんだ。
 中国の高成長に陰りは見られない。国内総生産(GDP)でも近く日本を抜き米国に次ぐ世界2位に躍り出る。米国債を大量に引き受け米財政を直接支えてもいる。
 米国との「G2」とさえ称され、中国は今や世界で最も重要なプレーヤーの一人であることは論を待たない。
 日本経済にとって、その中国市場での競争にいかに勝ち残るかは今後の死命を制するといって過言ではない。
 フォルクスワーゲンとスズキによる資本業務提携に見られたような大胆な再編も有力な手法となってこよう。
 しかし、中国や新興国の経済成長に頼るばかりではいけない。足元の内需を掘り起こす努力を怠れば、いずれつけが回り足腰が弱るだろう。
 当面、最大の切り口は環境だ。環境技術は海外市場開拓の大きな武器だが、国内でも環境をキーワードとした産業振興を進めなければならない。
 日中間の政治的な安定が、両国の経済連携の前提となる。鳩山由紀夫首相と中国の習近平国家副主席は先月会談し、日中の戦略的互恵関係を深化させることで一致した。
 東シナ海のガス田問題などの懸案も十分に踏まえながら、緊密な外交関係を築かねばならない。成長を続ける大切な隣人との付き合い方を前向きに再構築する。その気概が必要だ。

新潟日報2010110