(月曜日)
昼休みに思い立って、今住んでいるオンボロ賃貸マンションと買おうと思っている物件の良いところと悪いところを打ち込んでみた。
オンボロマンションの良いところばかり目立ち、購入を考えた物件の良いところが少なく、目につく嫌な点ばかりが出てきた。
サラを迎えに行き、お風呂に入る。サラをゴシゴシ洗っていると、神妙な顔をして俺に行うサラ。
(`・ω・´)「パパ、オチンチンをゴシゴシ洗うと痛いよ」
(´・ω・`)「はっ?俺は内腿を洗ってたんだぜ?オチンチンはサラちゃんが自分で洗うんだぞ?」
(`・ω・´)「だって痛かったんだもん」
(´・ω・`)「拳が当たっちまったのかもな。ごめんな」
俺は洗ってあげたつもりは一切なかったんだけどな。頭の中が家のことで一杯なんだろう。
夕飯時。奥さんに俺が作った表を見せると、概ね同意。
奥さん「これじゃ、買う意味ないじゃない。リスクばっかりで」
(´・ω・`)「やっぱりさ、この下町で買うことがダメなんじゃないかな。拠点をマジで移そうか」
奥さん「どこに?」
(´・ω・`)「うーん。分からん」
サラはボッーとしている。今日は寒くなかったのに、「寒い」と言っていたのが頭をよぎる。サラとのポイ活を終えたら、「体温計で測ってくる」と言い、「終わった」と見せてきたら37度。
(´・ω・`)「おいおい。熱あるじゃん。寒いとか、だるいとかあるか?」
(`・ω・´)「ダルいって何?」
(´・ω・`)「(説明が難しい)」
(`・ω・´)「頭が熱いんだよ」
(´・ω・`)「確かに。今日は早く寝よう」
(`・ω・´)「タブレットで算数したい」
(´・ω・`)「じゃあ、それが終わったら歯磨きしようね」
タブレットで算数開始。久しぶりだったが、かなりの上達。根気強く教えたが、ようやく花開いた感じ。嬉しかった。
しかし、平仮名を書くのはサラにはハードルが高く、何度も鏡文字を書く。何度も練習させてみたが、うまくできないサラは不貞腐れて逃げていった。。
またしばらく家の話を奥さんとする。
・今のマンションに設備面で不満はないことはないが、住環境は素晴らしい。
・対して、買おうとしている物件は、良いところが駅近とルーフバルコニーしかない。何より、近所の風景がヤバい。
・買ってしまうと預金がスッカラカンになり、精神的余裕がゼロになる。
・しかし、今買わないという選択肢をとると、サラが中学上がるまでの10年間は、ずっとココ。刺激や楽しみがない。
・賃貸暮らしでサラが肩身の狭い思いをする可能性もある。綺麗ではないので人を呼べない。
・とはいえ、現金がなくなってしまったら、サラへの教育資金が捻出できない事態もあり得る。それが1番可哀想。
そもそも思ったのだが。。
5,300と相手はふっかけてきている。俺の相場観では5,000程度。不動産屋も同じように考えており、5,000ぐらいで手を打とうとしている。
しかし、本来なら5,000から金額交渉が始まるものであるはずだ。5,000だったら、単なる適正価格であり、値引きゼロになる。諸経費、リフォーム費用、引越し代を加味すると、5,600になる。
今の住環境を手放して、リスクが高い家に全預金を叩くことに何の意味があるのだろうと考えた。4,800にしてリフォームなしにすれば、まあ考えても良いけどって思うが、それでも躊躇してしまう。
俺たちが余裕をぶっこいているのは、預金があるから。建物が災害でぶっ壊れようが、賃貸の俺たちには痛くも痒くもない。
しかし、買ってしまったら預金はゼロ、災害で家がなくなったりしたら、目も当てられない。
ずっとココで暮らす費用と、買った後の費用を照らし合わせると、買った方が明らかに損することが明白。そのマイナスはマイホームを持った喜びと虚栄心の対価であるが、どう考えても釣り合わない。
そもそも、現在4,700から4,800レベルのものが10年後、20年後にいくらで売れるのかと考えた際、売れる自信すら持てない。
もう答えは出てしまった。
今後知り合う人達からは、慎ましい生活をしていると見られるだろう。奥さんもそれを心配したいたが、「コッチは金があるけど使ってないだけと思えばそれで良いじゃん」という意見で一致した。
新しい物件は魅力的ではあるが、窓が小さい、近所がボロ屋ばかりで将来どんな風景になるのか分からないのが致命的だった。いくら南向きの角地でも、目の前に普通の建物が建ったら、日陰になっておしまい。価格は下落し、売り手がつかず売るに売れない、売れたとしても大幅な赤字になることは目に見えている。
迷ったら書き出すことの大切さを知った。別に賃貸でもいいじゃん。ノーリスクだし、預金が減ることもないし。設備面が絶望的だけど、別に我慢しようと思えばできるし。
サラに聞いてみた。
(´・ω・`)「新しいお家とココ、どっちがいい?」
(`・ω・´)「ココがいい。引越ししたくない」
やっぱりそうだよな。ココは居心地が良いし。サラが中学を卒業したときにまた考えよう。
とはいえ、不動産屋への義理があるので、最後まで話は聞こうと思う。
(火曜日)
不動産屋からLINE。質問書への回答と住宅診断結果。売主側が住宅診断をやっていたことに驚く。何で今頃出してくるの?
中身を見ると頭を抱える。新築から一切手を付けていない。外壁のヒビ割れ、基礎から鉄筋がはみ出し、屋根もやられている。立派な家を建てたくせに、何やってんだよ。
不動産屋に電話する。これがどの程度の酷さなのか、緊急を要するのか、費用がいくらぐらいになるのかを聞いてるが、分からないの一点張り。
(´・ω・`)「こんなの見てしまったら、5,000じゃとても無理ですよ。4,800でも厳しいです」
不動産屋「ですよねえ。。」
(´・ω・`)「妻と話して、金曜日までには結論を出します」
仕方なくネットで調べるもよく分からない。しかし、放置するとヤバいということだけは分かった。下手したら300ぐらいは行くかもしれない。
帰宅し、奥さんに話すものの理解力がなさすぎて会話にならない。とりあえず馬鹿でも分かるように工夫を凝らし、何とか状況を知ってもらう。
今日も何だかんだと話し合いとなり、サラは不貞腐れている。結論からすれば、やはり買わないとなった。5300のものが4800になるわけがないし、4800でも高い。
サラに聞く。
(´・ω・`)「本当に引越ししたくないのか?この前のお家、楽しそうにしてたじゃん?」
(`・ω・´)「やっぱりココがいい」
心の底から欲しいとは思えないんだよな。内見したときは欲しいと思ったけど、冷めちまったよ。恋人と同じだ。
不動産屋に何て伝えればいいんだろ。凄え尽くしてくれたのに、手のひらを返して申し訳ないことしちまったよ。
(水曜日)
最近、断捨離を始めた。モノに溢れた自分の部屋が嫌になり、とにかく捨てまくった。家を買わないと決めたので、気分転換に模様替えする。
(´・ω・`)「もうさ、お家の話しないから」
(`・ω・´)「ヤッター」
(´・ω・`)「そんなに嫌だった?」
(`・ω・´)「だって、サラちゃん、沢山お話ししたいことあったのに、ずっと我慢してたんだよ」
(´・ω・`)「そっか。悪かったな」
俺も奥さんも考えすぎてヘロヘロになり、サラにも負担をかけていた。もう、あの物件はいいや。
(木曜日)
不動産屋に行き、事情を説明して、買付申込書のキャンセルをする。散々振り回したことを謝罪し、菓子折りを渡して後にする。
そんな事しなくていいと色んな人に言われたが、ケジメをつけたかった。「あの家に住めるんだと、一瞬夢を見てしまいましたよ」と言ってしまったが、それが本音。4,800ぐらいに落ちたら声をかけてくださいと伝えて、不動産屋を出る。
マンションに戻ると、奥さんの自転車がない。保育園に向かうと、ちょうど奥さんと出会う。このタイミングの良さ。やはり、俺はこの人となんかあるようだ。
(´・ω・`)「不動産屋行ってきたよ。俺がサラを迎えに行くよ」
奥さん「どうして?」
(´・ω・`)「サラを風呂に入れた後に飯作ったりで大変だろ?時間もったいないじゃん?」
奥さん「お願いしていいの?」
(´・ω・`)「いいよ、別に」
サラを迎えに行く。顔が真っ赤。中が暑いとのこと。
慌てて不動産屋に行き、その足で保育園に来たものだから、サラのお菓子を買いそびれた。
(´・ω・`)「セブンに行くか」
(`・ω・´)「好きなもの買っていいの?」
(´・ω・`)「お好きにどうぞ」
店に入ったサラは悩みまくる。サラの好きそうなものが確かにない。
(`・ω・´)「チョコあーんぱん、ないの?」
(´・ω・`)「最近見ないんだよ。どうしてだろうね」
(`・ω・´)「あっ!あった」
(´・ω・`)「あっ!よく見つけたな!」
(`・ω・´)「パパ、どうして見つけられないのよ」
(´・ω・`)「(サラの言う通りだ。全く分からなかった)」
サラに注意するのを控えようと思った。「知ってるよ」「わかってるよ」「言わなくていいよ」と口答えされる場面が増えてきた。あまり口出すのは止めよう。
寝る間際。サラが腹筋運動を始めた。以前、洒落で教えたのだが、なかなか上手にできている。
(`・ω・´)「サラちゃん、痩せなきゃ」
(´・ω・`)「そうかねえ。痩せる必要あるのかなあ」
(`・ω・´)「だって太ってるもん」
(´・ω・`)「身長伸ばしなよ。そしたら痩せたように見えるよ。一杯食べて、運動しなよ」
(`・ω・´)「うん」
そんなに体型を気にしていたとは。お菓子の食い過ぎなんだろうな。
(金曜日)
疲れ切ってしまって、夕飯前にダウン。そのまま寝てしまった。午前0時に目が覚めてしまい、部屋掃除。
(土曜日)
(´・ω・`)「おーい。トイレットペーパーがないよ」
奥さん「本当だ。申し訳ないけどウンコは我慢してね」
俺がトイレットペーパーをチョコチョコ買っていたが、「安いときに買わなきゃだめだ。私が買う」と言っていたくせに切らしてしまうとは。。
サラを習い事に連れて行き、久しぶりに本を読む。筋トレばかりしていたので、本を読むこと自体が久しぶり。頭に全然入らない。
そんな中、いきなり習い事の先生から電話。サラがお漏らししたのでお迎えに来いとのこと。慌てて着替えを持って、走っていく。
先生は若干怒りながら、床をゴシゴシと拭いている。平謝りしてサラと外に出る。
(´・ω・`)「一体どうしたんだよ」
(`・ω・´)「あそこのトイレ、使いづらいんだよ」
(´・ω・`)「そうか。我慢して辛かったね。まあ、忘れよう。大したことじゃねえ」
お漏らしがトラウマにならないように、あえて口にせず、シャワーを浴びせた後は触れないようにする。
渋谷に行く。本当はサラと2人で行きたかったが、奥さんもついてきた。まあ、仕方がない。コロナになってからご無沙汰だったから、渋谷は約3年ぶりか。
母校に連れて行き、自分がかつてやっていたクリスマスコンサートをサラに見せることが一つの夢だった。ようやく叶った。
90分間、サラは大人しくしていられるのか。
奥さん「無理じゃないの?」
(´・ω・`)「サラは大丈夫だよ」
奥さん「我慢させて可哀想よ」
(´・ω・`)「あのねえ、甘やかしすぎ。これからこういう経験させないとダメだよ。クラシカルなコンサートで大人しく聴くって経験をさせないと、ずっと連れて行けないだろ?俺は、今のサラならちゃんとできると思うから連れてきたんだよ。サラ、大丈夫だよな?」
(`・ω・´)「うん。大丈夫」
奥さん「うーん」
(´・ω・`)「(ムカッ!じゃあついて来るなよ!本当はサラと2人で来たかったのに)」
サラに念押し。
(´・ω・`)「このコンサートは一年に一回。クリスマスの時期にしか聴けないんだ。これから唄う子たちは、今日のために一生懸命に練習してきたんだよ。だから、サラも一生懸命聴け。歌も光景も全部覚えろ。忘れるなよ」
(`・ω・´)「大丈夫」
コンサートの90分間は、確かに長く感じた。構成が悪いので、全体的に間延びしている。上手いのかと言われたら微妙。というか、男がゼロって何でだよ?みんな辞めちまったのか?
OBとして言いたいことは山程ある。
今のスタイルは、そもそも俺が発案したものだ。定演が終わってからクリコンまで練習期間が短いから讃美歌集にチェンジ。讃美歌の羅列じゃ客が訳わかんないから、ナレーションを入れて生誕物語風にする。それだけだとつまらないから楽器を持ち込んだり、ソロを沢山入れたりと、頭を使ってとにかく飽きさせないように変化をつけた。当時としては斬新で面白いものができたと我ながら思う。
その後、後輩たちが頭を使って、もっとみんなが楽しめる形に発展させてきたのに、指揮者の交代をキッカケに全てぶち壊しやがった。
ハッキリ言って面白くないんだよ。客入りが悪いのがその証拠だろ。途中で抜けていった客も結構いただろ。少しは考えないのかね?それにさ、楽譜見ないで、このくらいの曲は暗譜しろよ。曲数多くないんだから。
奉唱とか言って礼拝気取ってるのもいい加減にしろよ。定演とクリスマスはエンタメなんだよ。礼拝と位置付けたのは単なる練習不足を隠すためだろ?中にいた人間は分かるんだよ、そんなこと。
夕飯をどうしようか迷う。
(´・ω・`)「そうねえ。当時は金がなくてさ、ラケルってお店で後輩とよく食べたなあ。宮益坂にあるお店だけどね」
奥さん「何のお店?」
(´・ω・`)「オムライスだった気がする。もう20年以上前だし、記憶が曖昧でねえ。お店もあるのかねえ」
(`・ω・´)「オムライス食べたい!」
(´・ω・`)「確か、ここら辺。・・・ありやがった!」
パンがメチャクチャ美味かった。懐かしい。
当時よく通った中華屋、飲み屋、おでん屋など、先輩達が開拓してきた変な店はもう跡形もない。俺が全裸で踊りまくった店も無くなっていた。お店の人に怒られたなあ。
最寄駅に着くと、雨が降っていた。親子3人で手を繋ぎ、サラを傘に入れて早歩き。到着が21時。長い1日でしたとさ。夢が叶って良かった。
(日曜日)
起きたら、サラも奥さんもいなかった。どこに行ったのか分からないまま、お昼。LINEで動物園に行っていることを知る。なぜ、昨日言わないのか理解できない。
帰りが遅くなるというので、鍋を作る。
見た目はアレだが、なかなか旨し。サラは食べまくり、気持ちが悪くなったとのこと。
SUUMOを何気なく見ると、あの物件が5,300から4,980へと値下げされていた。4,800まで値切れそうだが、4,700は難しい。たった100とみるか、されど100と見るか。見なきゃ良かった。おしまいける。