スカイスワロー特区誕生
翌朝のニュースは妙に明るかった。
「政府は本日、日本初の『自動運転未来特区』を発表しました。」
応募企業は二十七社。自動車メーカー十六社。IT企業八社。
そしてファミリーレストラン三社。
スタジオの出演者が笑った。
「ファミレスが自動運転ですか?」
画面には、白い配膳ロボットが料理を運ぶ映像が流れる。
司会者も笑顔だった。
「かわいいですね。」
しかし、一社だけ笑っていなかった。
全国チェーン **スカイスワロー** の社長だった。
会見で最初に言った言葉は意外だった。
「道路は、少し広いレストランです。」
記者席が静かになった。
社長は続けた。
「私たちのロボットは、一日に何百万回も人を避け、人に避けられています。
事故を起こさない技術は、もう店の中で完成しています。」
スクリーンには数字が並んだ。
配膳回数。停止回数。譲り合い回数。
すべてAIが記録していた。
「店内では、人もロボットも同じルールで動きます。」
私は思わずテレビに近づいた。
昨日、ゆずり庵で見た光景が、そのまま映っていた。
女性スタッフがロボットに道を譲る。
ロボットが「ありがとうございます」と通り過ぎる。
あれは接客ではなかった。
訓練だったのだ。
政府はスカイスワロー案を採用した。
第一号特区は、三つの街。
ゲスト町。パーミヤン町。そして、ゆずり庵町。
道路には白線ではなく「通路ライン」が引かれた。
交差点は「配膳ポイント」。
横断歩道は「お客様優先ゾーン」。
自動運転車は配膳ロボットと同じ音を鳴らして走る。
高齢者向け説明会も開かれた。
運転講習ではない。ロボットとの付き合い方講習だった。
講師は七十代の女性スタッフ。
「難しくありません。」
「店でロボットに道を譲ったことがある人は、そのままで大丈夫です。」
会場のあちこちで笑いが起きた。受講者のほとんどが手を挙げた。
私は少し寒気がした。
免許を返納する前に、人はもう別の免許を取っていたのかもしれない。
テレビは最後に明るく締めくくった。
「スカイスワロー特区。高齢者に優しい未来の街として期待されています。」
画面の隅で、小さくテロップが流れた。
『AIが道路の優先順位を自動で決定します。』
私は、その一行だけが気になった。
(つづく)
**AI研究メモ②**
AIは、人間から仕事を奪う前に、「ルール」を覚えさせるのかもしれない。