読書録:断捨離小説「あなたの人生、片づけます」と実写版「ウチ、断捨離しました!」 | 隠居ジイサンのへろへろ日誌

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九州北部の街で、愛するカミさんとふたり、ひっそりと暮らしているジイさんの記録

これまで180冊以上の「片づけ本」を読みましたが、小説という形で読むのは初めてです。

とても面白くて感動的なお話になっているのに驚きました。

一話完結の中編が4編です。

「精算」

大手保険会社で忙しく働く30代の独身OLのマンションがほぼゴミ屋敷。彼女は、妻子持ちの上司と5年越しの不倫をしていています。「妻と別れて結婚するから」という彼の言葉を信じて5年も待ち続けているのに、彼のほうはいっこうに決断する気配もなく、最近は連絡もよこさなくなります。そのうち、若い魅力的な女性社員と付き合ってるという噂が聞こえてきて・・・。

これはよくある話かなと思ったら。

彼女のほうは、彼との甘い生活を夢見て、高級家具や高級食器なども買いそろえたのに、いまではホコリまみれ。ある日、そんな汚部屋に帰宅してみると、ちょっと部屋の様子が違っているのに気づきます。合鍵を持っている母親から電話がかかってきました。

「連絡がなく心配だから、あなたの部屋へ入ったのよ。ひどい部屋にいるのは、なにか心配事でもあるのでしょ。問題を解決してくれると噂の、片づけ屋の先生に片づけ指南をお願いしておいたから」といいます。

後日、テレビでも人気の片づけ屋・大庭十萬里というむっつりとした冴えないおばちゃん先生がやってきます。十萬里センセイのモットーは、「部屋を片づけられない人間は、心に問題があるから」。心の奥にある問題を解決しないと部屋も片付かないし、部屋が片づかないと心も病んでいく。

依頼対象者の心のうちと、モノがあふれ乱雑になった汚部屋の状態をじっくり観察しながら、いっしょになって汚部屋からの脱出計画をすすめていきます。

さて、依頼人のOLの話を聞き、十萬里センセイがとった驚きの行動とは?

そこまでやるとは!

わたしの予想を超えてたなぁ。

 

「木魚堂」

片づけの対象者は、長年連れ添った妻を亡くし、ひとり暮らしになった老年の木魚職人。木魚というのは仏壇の前にある木製の鉦。家事全般を奥さんにやってもらっていた一人暮らしの男やもめは、片づけ、料理、掃除・・・まったくダメ。タンスの中には、亡くなった奥さんの洋服がぎっしりはいったまま。車で30分かかるところに住んでいる娘がやってきて、食事の世話などをやってくれているが、その彼女も大きな問題を抱えて苦労している。教師の夫の受け持ちクラスが学級崩壊し、毎日呻吟しながら働いているし、進学校に合格した息子が不登校になり引きこもりを続けている。彼女もイライラ・悶々と暮らしているのだ。そんな彼女のイライラが、ある日、父親の家で小爆発する。

そこへ、十萬里センセイがやってきて、父と娘の新たな関係を再構築させ、家事のできない老職人の祖父と、引きこもりの孫息子を再生させていく。

 

「豪商の館」

夫に先立たれ、こどもたちも独立して家をでていき、文化財に指定されてもおかしくないような日本家屋の豪邸でひとり暮らしをする老女。家の中は、見える限りはきちんと掃除もされ、ガラクタが出しっぱなしになっているわけでもない。そこへ、老女の娘から依頼された十萬里センセイがやってきます。

老女は、自分のきれい好き、片づけ上手を自慢するため、広い屋敷内を案内します。たしかに、見える範囲はちゃんと掃除もされ片付いていますが、十萬里センセイの鋭い観察眼はひそかに隠蔽された大量のモノを見逃しません。納戸、押し入れ、蔵・・・目に見えないスペースに、大家族時代の什器やふとん、豪商だったころの過去の遺物がぎっしり詰まっています。屋敷が広いだけに、ものすごい物量です。さらに、昔の栄光も捨てられず、180万円のミンクのコート、特別誂えの重厚な座布団などが出てくる出てくる・・・。

さて、昔日の栄光と、「高かったから捨てられないモノ」が積み重なる豪邸をどやって片づけるのか? この先、老女はひとりでどうやって暮らしていくのか?

 

「きれいすぎる部屋」

中央官庁の高級官僚が住む都心の公務員宿舎が舞台です。

4LDKの部屋の中は、プチゴミ屋敷。依頼を受けた十萬里センセイが伺ったところ、奥さんは生気がなく、ふたりの娘も片づけができなくて部屋はぐちゃぐちゃ。ところが、いちばん日当たりがよく快適な部屋が開かずの間で、しかもきれいに片付いているのです。話を聞いてみると、その部屋は、先年亡くなった息子さんのための部屋。

・・・最愛の息子を亡くし生きる意欲を失った母親と、そんな母親を見てどうすることもできない家族。十萬里センセイの片づけ指南によって、すこしずつ家族が再生し、生きる希望を取り戻していく物語。

これは、ちょっと泣けます。

 

4パターンの片づけによる再生の物語です。

片づけなければと思いながらも、なかなか片づけられない原因というのはさまざまです。毎日が忙しかったり、めんどうだったり、もったいなかったり、そもそも片づける方法が分からなかったり・・・そんないろんな原因の中でも、小説の中の十萬里センセイがいうように「部屋を片づけられない人間は、心に問題があるから」というのは、いちばん深刻な原因でしょう。

この本は小説ですから、極端な話ばかりのようですが、世の中にはそんな極端な話がごろごろころがっているようで、わたしのブログにもよく登場するやましたひでこさん(断捨離の提唱者)が断捨離指南をするBS朝日「ウチ、“断捨離”しました!」というテレビ番組でも、幼い頃からの躾や、家庭環境などで片づけができないという人がけっこういます。そのテレビ番組が本になっています。

まさに、上の小説本の実写版という感じの本です。

片づけ前・片づけ後のビフォーアフターが写真つきで載っていて、写真を眺めるだけでも胸がスーっとします。

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