朝日歌壇の歌詠みのこと | 隠居ジイサンのへろへろ日誌

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九州北部の街で、愛するカミさんとふたり、ひっそりと暮らしているジイさんの記録

備忘メモ。

朝日新聞の歌壇(読者の短歌投稿欄)の常連で、長尾幹也さんというサラリーマン歌人の方がいました。晩年に難病を患い、今年の1月、66歳で亡くなられました。わたしと同時代を生きてきた方です。

中堅どころの広告会社のサラリーマンだったとかで、リーマンショックで会社が苦しくなった時に、同僚をリストラする役割を担わされて、まるで自らの身を切り刻みながら、同僚をリストラしていくつらい気持ちを詠み込んだ歌が、当時、何首も入選していたことを覚えています。さらに退職後の晩年には、手足が動かなくなる難病を患い、くやしさやつらさを、胸の奥からふり絞るような言葉を刻みつけた歌がたびたび入選していました。亡くなったいまでも、長尾さんの歌が心に残る人がたくさんいるようで、きょうの歌壇にも、長尾さんをしのぶ歌が入選していましたし、「番外・天声人語」というコーナーでも長尾さんのことが書かれていました。

わたしが俳句や和歌を詠うことはありませんし、新聞の俳句や和歌のコーナーの熱心な読者でもありませんが、長尾幹也という名前を歌壇に見つけると、いつも「心して」熟読していました。同じサラリーマンとして、身につまされるというか、同感、同感、お互い宮仕えはツライですなぁとか、病中歌を読むと、心身ともつらいだろうな、とそんな感じでした。

 

朝日歌壇には、有名なアマチュアの歌詠みがたくさんいます。

歌壇のコーナーでいつも名前を探していた方、現在でも名前を探す方がいます。

・石川県輪島市の山下すてさん。

能登の厳しくて美しい情景を詠み込んだ心に沁み入る歌を詠んでいました。お亡くなりになったようですが、ファンも多かったようで、今回の能登半島地震のあとに、山下さんの秀歌をしのぶ投稿がたくさん寄せられていました。

・獄中歌人の郷隼人

鹿児島出身で、現在もアメリカの刑務所に収監されている無期懲役囚(殺人及び殺人未遂)です。一時期、投稿が途絶え歌壇でも心配する歌が載りましたが、いまはまた、時折、作品が掲載されるようになりました。図書館で「LONESOME隼人(ローンサム・ハヤト)」という歌集を借り読んだことがあります。

・ホームレス歌人・公田耕一さん

新聞に掲載される歌には、住所と氏名が添えられるのですが、この人の場合は、住所が「ホームレス」となっていました。新聞紙上で本人に「連絡を乞う」という記事が出ましたが、結局、名乗り出なかったということは、名前もペンネームだったのでしょうね。1年くらいで突然、投稿がなくなりました。暗く、地を這うような孤独感を感じた歌でした。

・あさま山荘事件・連合赤軍メンバーの坂口弘死刑囚。懺悔記録。死刑はまだ執行されていない?

松田梨子さん、松田わこさんの姉妹。

小学生のころからの入選常連の姉妹です。ご家族や友人たちとの交流など、明るいタッチの歌をいつも楽しみに読んでいます。お二人とも成人されて、就職活動や仕事、恋の歌が多くなりました。

・過去には、大分・中津市の作家・松下竜一センセも常連だったようですが、掲載されていた当時は知りません。歌集「豆腐屋の四季」は感動して読んだなぁ。

 

言葉は永遠に残ります。

※著作権がありますから、それぞれの作品は、ここでは紹介できません。作品をお読みになりたい場合は↓「朝日歌壇ライブラリ」で検索してください。

 

以上、きょうの新聞を読んでメモってみました。

 

(追記)

そうそう、5歳くらい上の会社の先輩に短歌を詠むSさんという人(短歌専門誌の歌人リストに名前が載っているらしい)がいて、若い頃、Sさんから「短歌をやらないか」と誘われたことがあります。そのころ、わたしは会社の広報関係の仕事をしていて、文章を書くのも好きでしたし、労働組合で機関紙(組合新聞)の編集なんかもやっていました。そういうこともあって、短歌をやらないかと誘ってくれたのでしょうね。あるとき、絶叫歌人として知られる福島泰樹さんの「短歌絶叫コンサート」という中原中也の詩を大声で叫ぶという朗読会兼コンサートのような会に連れて行ってくれたこともありました。あれにはちょっとびっくりしたなぁ。

しかし・・・文章には、芸術的なものと論理的なものがありますよね。わたしはどちらかというと論理派ですから、読むほうはともかく、詩歌や小説的な芸術ものを創作するのは、とんと苦手。残念ながら、そちらの方面には向きませんでした。

S先輩は退職後、地域の短歌の会で講師をしていると聞きました。福岡県のローカル紙・西日本新聞の歌壇では入選の常連でしたし、朝日新聞の歌壇でも1度名前を見かけたことがあります。

下世話な話で恐縮ですが、新聞に作品が掲載されたら、けっこうなお小遣いになるとかで、S先輩いわく「〇〇くん、俺はもう、短歌の投稿だけで100万稼いだもんね」と笑っていました。

糖尿病持ちなのに、鏡開きのお汁粉を3杯食べて後悔していた甘いもん好きのS先輩、お元気でしょうか。