読書録:「志賀越みち」伊集院静 のつづき | 隠居ジイサンのへろへろ日誌

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九州北部の街で、愛するカミさんとふたり、ひっそりと暮らしているジイさんの記録

直前の投稿記事、伊集院静の小説「志賀越みち」の話のつづき。

 

 

 

題名の「志賀越みち」というのは、琵琶湖から比叡山を超えて京都の荒神橋までの古道のこと。

地図で示すと ↓のような道だそうです。

(↓ネットからお借りしましたm(__)m)

 

京都市方面からいくと、銀閣寺のすぐ北の道を比叡山へ上る道があり、峠まで上って、峠の頂上を左折すると比叡山・延暦寺へ、峠を直進すると琵琶湖へ下っていく道です。10年近く前、京都へ行ったときに、車で比叡山に上り、琵琶湖方面へ下ったことがあります。その道の旧道が志賀越え道のようです。

銀閣寺あたりを過ぎれば、すぐに寂しい感じの峠に入り、上りも下りもけっこう急な峠だったような記憶があります。

 

小説の出だし。

昭和39年の東京オリンピックの前年のこと。東京から来た大学生(東京・麻布に住んでいる貿易会社社長の御曹司で東京大学の学生)が、比叡山の峠を越えて京都へ入る峠道の描写から始まります。主人公は山歩きが好きなので、琵琶湖側から歩いて峠を超え、京都盆地へ降りていきます。

「大学生」、「峠道」、「舞妓(踊り子)」とくれば、読み始めは川端康成の「伊豆の踊り子」を思い起こさせます。

京都盆地へ降り、大学で知り合った京都出身の友人の家へ遊びに行きます。その友人の実家が祇園・花見小路の置屋なんです。主人公は、その置屋で青春時代の思い出深い長い長い休みを過ごすことになります。

京都の四季や祭の描写も巧みです。祇園祭や五山送り火、どちらも見ましたが雰囲気がよく出ています。

 

京都・花見小路の友人宅に着いて幾日かしたある日の早朝、散歩に出た主人公は、建仁寺の境内で運命の人に出会います。最初は、ちょっとしたきっかけでしたが、どちらも一目だけで恋に落ちてしまいます。ここまでが、伊集院版の「伊豆の踊り子」という感じ。

ぼんぼん育ちのモラトリアム大学生と、祇園で人気・実力上昇中の舞妓。しかし、舞妓の肩には実父が作った多額の借金が・・・。

いくら愛し合っても、祇園のおきてでは絶対に結ばれることのないふたり。

恋の舞台は、祇園・花見小路・四条大橋・建仁寺・鴨川・銀閣寺道・哲学の道・寺町・先斗町・八坂神社・知恩院・・・ふたりが密かに逢引するのは、祇園から離れた永観堂や荒神橋、そして花脊。祇園や銀閣寺のあたりは、京都に遊びに行ったときにそぞろ歩きましたから雰囲気はよくわかります。

 

そうこうするうちに、その舞妓さんに髷替え・水揚げの噂が・・・。

話は、これ以降、急展開しますが、それは読んでのお楽しみ。

 

最初は、「なんか、どっかで聞いたような月並みな話やなぁ」と思いながら読んでいたら、この、けっして結ばれることのない恋の話は、友人や祇園の人たちなど、周囲の人を巻き込みながらだんだんと切なくヒートアップしてきます。障害が多いほど燃え上がる愛の炎!

結末は、納得できるような、納得できないような悶々とした気持ちです。

 

さて、この小説を映画にしたら、主人公の大学生と美しい舞妓さんはだれがいいのか・・・途中からイメージしながら読みました。

悲恋ものがたり。ワケありの舞妓さんは、ちょっと色気もほしいので吉高由里子ちゃんかな?

あまり笑わないで、こんな雰囲気の憂い顔で演じてほしい。

・・・伊集院さんの中では夏目雅子さんかもしれませんね。

 

主人公であるボンボン育ちで、女も知らないまっすぐな性格の大学生は、若き日の三浦友和さんがいいな。

↓ 百恵ちゃんといっしょに「伊豆の踊り子」に出ていた時の写真です。

イメージにぴったり。

 

てなことをイメージしながら、純情じいさんは、ドキドキしながら長編恋愛小説を読み終わりました。