映画「護れなかった者たちへ」 | うさぎ年牡牛座さとのブログ

映画「護れなかった者たちへ」

予告編を見て関心を持った作品。ケーブルTVで放送してくれたので見た。

 

あらすじは

東日本大震災から9年後、宮城県内の都市部で全身を縛られたまま放置され餓死させられるという凄惨な連続殺人事件が発生した。被害者はいずれも善人、人格者と言われていた男たちだった。刑事の笘篠(阿部寛)は2つの事件からある共通項を見つけ出す。そんな中、利根泰久(佐藤健)が容疑者として捜査線上に浮かび上がる。利根は放火、傷害事件を起こし服役し刑期を終え出所したばかりの元模範囚だった。犯人としての決定的な確証がつかめない中、第3の事件が起こってしまう。

 

これは惹き込まれた。予告を見た時は3.11東日本震災ドキュメンタリー風に描いているのかと思っていたが全然違った。震災はあくまでの物語が展開する上でのベースとしての題材で、メインテーマはヒューマン社会派サスペンス。コメディやエロ要素は一切無く、震災で家族を失った者同士の絆、生活保護受給を巡るトラブルなど極めて重たい硬派な内容に謎の連続殺人事件が絡む。間延びする場面が見当たらず、最初から最後まで釘付けになった。震災時と9年後と場面が行ったり来たりするところは最初戸惑ったが(佐藤健は全く同じに見える)、後半はだんだん慣れてきた。

 

連続殺人の真犯人が最後でひっくり返るなどサスペンスとしても良く出来ている。前科者で気性も荒い利根が誰しも犯人だと思ってたよな。しかし円山さんは生活保護を止められ餓死した婆さんの復讐をするためわざわざあの仕事を選んだというのか?長期にわたる用意周到な復讐劇で恐ろしい執念。生活保護不正受給者を人間のクズのように散々罵倒するシーンがあるが、これもフリだったのか。

 

生活保護に関しては数々の小説や映画が作られているが現代日本社会が抱える永遠のテーマだ。本当に必要な人間を救うセーフティネットとして機能している一方、不正受給も後を絶たない。しかも「不正」なのかどうかの判断は極めて難しい。「大盤振る舞いはするな」という国からのプレッシャーもあり、板挟みとなる福祉事務所職員の苦悩は計り知れない。

 

役者陣の演技は皆素晴らしかった。暗い目をした怪しげな男の佐藤健、クセ者鬼刑事の阿部寛、しっかり者の福祉事務所職員ながら裏ではとんでもないことやってる清原果耶、見事な老け役婆さんの倍賞美津子、阿部と衝突しながらバディを組む都会派刑事の林遣都など個性が爆発している。板挟みで苦悩する福祉事務所職員トリオの吉岡秀隆、緒方直人、永山瑛太はイメージピッタリ。見た目善人なのに突然キレたし。

 

ハッピーな感じにはならない映画ですがオススメです