Ai NIKKOR 105mm F2.5S 安価な製品にこそニッコール魂は宿る | 1m71

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札幌出身。日本各地、デンマーク、米国、印度、豪州、現在京都と専門職資格を手に生き抜く。欧州一周鉄道旅行、Amishとの異文化生活と千ドル中古車で北米大陸二度横断、マザーテレサの家ボランティアと世界を探検中。インスタグラムはonlyzeiss。

Ai Nikkor 105mm F2.5S。

 

 

買ったのは確か1995年だったと思う。

 

購入から30年近く経つが手離していない。

 

当時の定価は3万6千円か3万9千円だったと思う。当時はアメリカに住んでいたが、値上げするというので札幌の実家に頼んで買っておいてもらった。ヨドバシカメラ札幌で2割引きだったような。

 

このレンズの歴史は長く、初代は1959年発売だ。

 

レンズ構成は3群5枚のゾナータイプから4群5枚のクセノタータイプに変更されたものの、変更されてから30年レンズ構成は変更されていないので、完成されていたのだろう。

 

このレンズの良さは日本よりもアメリカで知った。

 

90年代終わりあたりまで日本では高級志向が強くカメラ誌も高い製品を勧めるものが多かったが、アメリカではコストパフォーマンスが重視された。同じ焦点域の105㎜F1.8よりも廉価なこのF2.5の方が定番レンズで特にポートレートレンズとして知られていた。アメリカのカメラ誌で撮影情報にこのレンズ名を何度も見た。実際アートスクールの講師が前のAiバージョン(レンズ構成同じ)でニコンのコンテストで入賞していて大変気に入っていた。

 

先日投稿したが、あまりにも有名なスティーヴ・マッカリーの「アフガンの少女」もこのレンズで撮影されている。廉価なレンズでもプロの仕事に応えられる性能があったのだ。

 

マッカリーには及ばないが、自分にとっても105㎜F2.5Sは思い出深いレンズだ。FM2の兄弟機FE2にこのレンズを装着して撮影したアーミッシュ(Amish)の姉妹の写真がカメラ誌に掲載され、生まれて初めて自分の写真を世に発信した機会をくれた。

 

使ってみてF5.6が一番気に入っているのだが、解放値F2.5で無理がないのだろうかF2.5でも描写は劣らず素晴らしいと思う。

 

D800Eを使いCarl Zeiss Makro-Planar 100mm ZF.2. と絞り値F5.6で比較したが、解像度に関する限り自分には判別が難しいほどだった。

 

また、フードも内蔵されているので使い勝手がいい。

 

この前まで中古価格が1万5千円ほどで買えたのだが、今や4万円5万円は当たり前。

 

特に製造番号上四桁が1043以降の再後期ものはSIC(Super Integrated Coating)が施されているとのことでプレミアム価格になっている。

 

この所有レンズの製造番号は1042半ばだが、ネットの情報では1043前の製造番号にもSICが施されたレンズがあるという。

 

このレンズは前玉に傷をつけたため交換している。元々SICが施されていたのか、それともSICの前玉に交換されたのかどうかはわからないが、ネットでSICが施された個体のコーティング反射と同じように見えてしまう。

 

もっともスティーヴ・マッカリーの「アフガンの少女」がナショナルジオグラフィック誌に掲載されたのが1984年で、SICが施される前のAi105mmF2.5Sで撮影したものだった。

 

コレクター的価値や転売目的ならSICが施されているか否かは気になるだろうが、「アフガンの少女」を見る限りSICであるか否かはどうでもいいことに思える。SICよりも写真自体に向き合った方がいいかもしれない。

 

マッカリーのFM2はブラックモデルだったが、同じ機材で「アフガンの少女」を撮ったのかと思えば俺も頑張ろうという気になる。

 

安価な製品にこそニッコール魂は宿るという言葉の通りこのレンズには日本のモノづくりが息づいていると思う。

 

だから自分は手離さないのだろう。