令和4年、2022年初めてのカメラレヴュー。
ライカM3。
やっとどうにかレビューする気になれた。
いつもカメラバッグに入れている。
ライカMシリーズにはフィルムデジタルを含め10種類以上のカメラがあるが、M3は3というナンバリングにもかかわらずMシリーズ初代である。
中にはM3を知らずしてMシリーズを語ることなかれという意見もあるほどだ。なので他のMシリーズは考慮しなかった。
それほど完成度の高いカメラとして1954年に生まれたカメラだ。
一番の特徴は、そのファインダーでこのガラス窓を通じて見る世界は他のMシリーズすら味わうことができない、カメラの歴史上これを超えるファインダーはないとされている。
発売当時ドイツに追いつき追い越せと頑張ってきた日本のカメラメーカーは、この優れたファインダーを作ることはできないと諦め一眼レフの開発に注力し結果的に大成功を収めた。コスト度外視の工芸品のようなカメラなのだ。
M3の意味は、MoreRapid(より速く)、More Convenient(より便利に)、More Reliable(より確実に)の3つのMという説があるが、カメラ修理で知られる東京浅草の早田カメラの早田さんのYouTubeでの話では、ドイツ語での3つのレンズ焦点距離に対応したフレーム表示というのが本当で、ライカの公式HPに載っているという(すみません見つけられなかった)。
ライカはドイツのメーカーなので、ドイツ語を使うのが理にかなっており英語のMore~という由来はなじまないと思っていた。
ちなみに画像にあるDRズミクロン50㎜F2レンズは早田カメラで買ったものだ。
まったくのフルマニュアルの機械式カメラなので、電池仕掛けのカメラに慣れた自分にとって使い始めた頃は、ローライフレックス同様こんな使いにくいカメラはないと思ったほどだった。
ところが使っていくうちに眼鏡に似ているような感覚をおぼえるようになった。自分の一部になるというか、道具だ。
露出も、ネガを使う限りは一度露出計で計るとそんなに神経質にならなくてもいいとわかった。
自分の効き目は左なので難しいが、右目でファインダーを覗いて左目で目の前を見ると違和感があまりない。
また、右目でファインダーを覗くと少なくても撮影者の顔左半分は見える(Mシリーズのファインダーはカメラの左側についているので真ん中についている一眼レフやミラーレスより撮影者の顔が見える)ので一眼レフより顔が見えて撮られる人は安心できるだろう。
一眼レフで望遠レンズや広角レンズを使うと実際に自分の目の前に広がる世界と違って見える。それは一眼レフの利点だ。
人間の眼もしくは脳の機能は不思議なものでいわゆる単焦点なのに重要な部分だけを強調して情報を得られるようである。
Mシリーズを使うと、ファインダーはガラス窓なので肉眼と同じように被写体を捉えて撮影することができるのだ。
そして、ファインダー内は、実際にフィルム面に映る範囲より広く設定されているので、想定しないものが急に横切ったりする際に気がつくことができ、一眼レフよりユルく使うことができる。
もちろん、いいことばかりじゃない。一眼レフやミラーレスと使い分けるのがいいと思う。
ライカには整備が必要だ。世界一と言われるファインダーも、一番新しく製造されたM3でも55年が経つので販売当時のファインダー性能を維持していないものもあるだろう。
このM3個体はいわゆる初期型。2回巻き上げのダブルストロークにストラップ取付部がドッグイヤーと呼ばれるものでさらにシャッタースピードは現在のカメラとは違う1/50秒や1/100秒がある大陸系列だ。
肝心のファインダーなのだが、以前那覇のカメラ店で見せてもらったM3のファインダーと違いガラスの存在に気がつかないほどの美しさではない。しかしそこまで気にしない。 シャッター音もささやくような音よりは幾分大きいが、調整費を考えると次のオーバーホールまで我慢できる。
このカメラは、去年高齢のため閉店してしまった岩手県盛岡市のカメラセンター松村で一昨年購入したものだ。信じられない価格で購入したうえ、不都合のついでにOHしてもらったものだ。
ライカM3はロンドンのオペラ座でも使用が許されたほどのシャッター音が静かなカメラだ。多くのライカカメラについているあの真っ赤で丸いライカのロゴはない(個人的には好きではない)。奥ゆかしいカメラなのである。
今回札幌に帰省した時にM3とDRズミクロンで撮影したプリントをスキャンした。
わかりにくいかもしれないが、やっぱりライカレンズのボケは他とは違う。
カールツァイスレンズは所有本数が最も多いので自分のメインレンズメーカーだが、ライカレンズも高価でDRズミクロンしかもっていないものの気に入っている。ツァイスもライカも日本のレンズと比べてこってり系(ツァイスもフィルム時代とデジタル時代につくられたものは描写が異なると思う)なのだが、ライカレンズはルノアールの絵を感じさせる。ボケもツァイスと違うもので特徴がある。
以前ライカミニルックスの投稿をしたが、40ミリズマリットと描写が似ている。ツァイスのつるっととは違う、ざらっとというか、滲みというか。
日本の写真家としては木村伊兵衛氏や土門拳氏がライカの使い手として知られる。フランスのアンリ・カルティエ・ブレッソン氏は50ミリレンズを使った作品でよく知られ、自分も高額なライカレンズをなかなか買うことができないが、50ミリ一本で撮れる世界があると知り撮り続けている。
M型ライカを使う有名人も多い。福山雅治さんはライカM4を使うことで知られている。
中古ライカカメラは国の経済を知る指標にもなる。バブル期は日本に多くのライカが集まった。今や中国へ流れる一方のようだ。
個人的にはライカMシリーズの中古がある限り、高額にはなるもののフィルムがなくなることはない、と考えている。
一度手にしてライカならではの世界を経験してみるのはどうだろうか。フィルムライカの中古価格は一時期下がったものの現在は上昇傾向にあるので、もし使えないとわかってもそれほど損はせずに次の所有者にバトンを渡すことができる。
M3は100年使えるカメラだ。世代を超えて伝え続けたい。
追伸
ライカを使う人は知っていると思うが、レンズキャップをつけることを忘れずに。特に日差しが強い日にレンズキャップをつけておかないとレンズが光を集めてシャッター幕が焼けるかも。