KYOCERA T SCOPE (画像は輸出モデルYASHICA T3D) | 1m71

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札幌出身。日本各地、デンマーク、米国、印度、豪州、現在京都と専門職資格を手に生き抜く。欧州一周鉄道旅行、Amishとの異文化生活と千ドル中古車で北米大陸二度横断、マザーテレサの家ボランティアと世界を探検中。インスタグラムはonlyzeiss。

コンパクトフィルムカメラYASHICA T3D.。

 

 

輸出モデルだが、日本国内ではKYOCERA T SCOPEの名で売られていた。

 

1988年発売のこのカメラ、作られたのは北海道北見の工場だったそうだ。

 

北見といえば、カーリングのロコ・ソラーレで有名だが。

 

数少ない地元北海道でつくられたこのカメラを手放す気にならない。

 

シャッターボタンを押すとカッシャーンと子どもの頃の合体ロボやガンダムRX-78を思い出す。

 

不思議とうるさいと感じずに小気味よく響いてしまう。

 

このカメラ、1980年代後半のコンパクトカメラなのに、でかくて重い。

 

後継機種のSLIM-TやT-Proofよりかなりメタボな体型だ。

 

おそらくその理由はレンズにあると思う。

 

奢られているのは、カール・ツァイスT*2.8/35、35ミリの広角レンズだ。

 

F値が2.8と明るい。そのためレンズが大きくなるのに伴いボディも大きく厚くなったのだろう。

 

実際、フィルム室を開けると後玉がでかい。

 

レンズ構成はテッサ―なのだが、通常3郡4枚なのがこのカメラではなぜか4郡4枚になっている。

 

テッサ―といえば、昔から「鷹の目」と形容されるほどくっきり(特に中心部)写る。

 

ちなみにテッサ―タイプのレンズはその構成上、開放F値は2.8が限界なのだそうだ。

 

フィルム圧板は金属製だ。その後のT-ProofとT-Zoomはプラスチック製なのでコストがかかっていると思う。

 

コストがかかったカメラなので販売期間が短かったのではないかと思う。

 

写りは、まだ大きく引き伸ばしていないのだが、色乗りの良いツァイスっぽさはやっぱりある。

 

中古カメラの本ではたまに登場するカメラなのでやっぱり悪いカメラではないと思う。

 

使用電池は2CR5というちょっと大きめの電池だ。そのためストロボチャージがやたら速い。改良モデルT-SCOPE2では連写機能も付加されたのは当然だと思う。

 

他に所有しているコンタックスRTSⅢとAXと同じ電池なので共用できるのが助かる(RXとRXⅡも同じ)。

 

T-SCOPEのアイデンティティは、ニューアングルスコープ(N.A.SCOPE)にある。カメラ上部にのぞき窓があり、二眼レフのようにお辞儀をした格好で写真を撮ることができる。スナップ写真で被写体に気づかれることなく撮影できる(盗撮はやってはいけない)。視野率は67%という狭さだが、ありがたい。近頃のデジタルカメラはチルト式の背面液晶がついているものが多いが、あの時代によくつけてくれたと思う。これはT-SCOPE2のみならず今や中古価格高騰のT-PROOFにも引き継がれた。

 

背面部にあるファインダーの位置が良い。ライカM3と比較するのは怒られるかもしれないが、M型ライカだとレンズの斜め上にファインダーがあるのでいわゆる視差(パララックス)がある。T-SCOPEもいわゆるレンジファインダーなのだが、レンズの真上についているので、視差が斜めについているカメラより少なく、実画面により近いので使い勝手が良い。ファインダーを覗くとフレーム枠が見えるので、まさかライカMシリーズと同じ視野率100%なのかと喜んだが、調べてみると85%と書いてあったのでちょっと残念だった。

 

そして防塵・防滴機能。防水カメラではないし、30年以上前に作られた中古カメラが今日に防塵防滴機能を発揮できるかどうか疑問だが、当時としてはよく考えられて作られたカメラだと思う。

 

このT-SCOPEの弱点ややっぱりコンパクトカメラとしては大きくて重いことだが、レンズのF値が明るく、同じF値を求めるならコンタックスのTシリーズになるので中古価格が5倍から10倍に跳ね上がることを考えれば超お買い得である。

 

このカメラは5千円ポッキリで買ったけど、今は2万円ほどに値上がりしている。それでもT-Proofの半額以下だ。

 

フィルムでツァイスレンズを楽しみたいならこのカメラは万馬券みたいなものだ。

 

ストロボ発光禁止モードはシャッターを切るごとに解除されるのが残念だが、この時代のカメラは殆どそうだったのであきらめもつく。

 

ぜひ使ってみてほしいな。