マチソワを観た8日後の6/16。
相葉アンジョの楽に合わせての名古屋MY楽でした。
8日は2階席でしたが、16日は1階席。
前の席の方が私よりも背の高い方だったので若干視界がふさがれた感はありましたが、他に視界を遮る方はいらっしゃらず、まあまあ快適。
2階席と違って傾斜がほとんどない構造なので、要するに運次第ってことだな~と。
席配置もちどりにはなっていないので、センターブロックで前に座高の高い方がくると致命的かもしれません。
サイドだと視線は前ではなく斜めになることが多いので、すぐ前の方より視線の延長上にいる方の座高が問題かな。
人数が多くなる分、差し障る可能性は増えますね~
しかしながら良いところも結構多い。座席ふかふかで座り心地が良い、残響の少ない設計で音が一音一音クリアに聞こえる、帝劇より一回り小さいサイズで舞台との距離が近く照明も明るいので役者さんの表情がよく見える、トイレが多くて回転が速い、等々
音に関しては、噂に聞く博多座と同じ感じなのでしょうか、楽器にしても歌にしても、ぴたっと音が止まるので、後に残る響きを楽しみたい人やいきなり無音になるのに慣れない人には辛いかもしれません。歌舞伎やる劇場は多かれ少なかれそんな感じの音なので、それに慣れてる人には大変心地よい音です。その分、スピーカー調整する人が慣れてないと調整が上手くいかず、左右の不均衡やらの不具合は出てくるかも?
トイレは文句なしです。あそこまで回転が速く、時間に間に合うかとかのストレスなく列が進むのは宝塚大劇場くらいかも。宝塚は客の99.9%が女性という想定で作ってあるので、大変トイレ並びが快適なんですが、それと匹敵するくらいの快適さでした。
劇場に関してはこれくらいかな。1階席の見え方が運次第という欠点はありますが、悪くない劇場で私は好きです。
とはいえ、運を天に任せるのは怖いので、今後、御園座で観劇する場合、客席降りがないことが分かっている演目ならB席選びますね~(笑)
さて、16日のキャストですが、福井バルジャン、川口ジャベール、二宮ファンテ、ふうかエポ、三浦マリ、小南コゼ、じゅんテナ、朴マダムした。
今回、9列目(実質5列目)という前方席だったのもあって、ほぼオペラグラスなしで観劇しましたが、帝劇10列目くらいでオペラグラス使って観るよりはるかによく観えました。
それで改めて凄いと思ったのは川口ジャベール。2幕で瀕死のマリウスを連れたバルジャンを逃がした後、手がぶるぶる震えているのがよく分かる。右手に構えていた銃を左手に持ちかえるの、単にその後銃を捨てるからで大して意味を感じてませんでしたが、震えているのがわかると、持ちかえてるんではなくて、震える手を押さえるために両手で銃を握りなおし、それでも止まらなくて利き手で顔を覆うからだという流れがくっきりと見えてくる。元々、ジャベールの中では川口さんが一番「芝居」をきちんとする役者さんだと思っていましたが、ここまで細かく作りこんでいたとは!
あ~、やっぱり好きだわ、川口ジャベ……
そして、よく観えることで鬼気迫る印象が強まったのが二宮ファンテ。死ぬ場面の、ここではないどこかを見てるあの視線、狂気の世界に片足どころかほとんど全身を突っ込んでいるようで、ゾッとしました。愛する娘を想い、狂気に陥るほどの母性って、怖すぎる。私も一応母親ですけど、あそこまで我が子を愛せるかどうか考えると、本当に怖かった。
そのファンテが亡くなった後、コゼットを救うためジャベールを打ち倒して去る福井バル、今回はファンテの額に口付けしてましたね。帝劇ではしなかったことなので、地方公演に入って、皆色々と変わってるんだなぁ。
福井バルは本当に普通の男という感じのバルジャンで、ファンテに個人的な思い入れをしてても不思議じゃないというか、そういう可能性もあるよな、と思えるバルジャンなので、そういう仕草がとてもらしいと感じましたね。
これ、多分吉原バルはやらないし、やったとしたら絶対不自然。シュガーバルもありえないので、福井バルならではだと思います。
あと、びっくりしたのが三浦マリ。彼に関しては散々辛口感想書きましたが、今回、初めていいと思えるシーンがありました。
結婚式でテナ夫妻に集られてお金を与えるシーンがそれ。それこそ犬にでもやるように、お金を投げ捨てるんですよ。その仕草が、三浦マリのお坊ちゃん感と合わさると、マリがテナを父を救ってくれた人でエポの父だから仕方なしに顔を合わせたりはするけど、本当は心底軽蔑してるし嫌ってるし見下してるというのがめちゃくちゃよくわかる。
あそこね、海宝マリはあまりにノーブルでそういう仕草が相応しくないように感じるし、内藤マリだと軽蔑して腹を立てているのはわかるけど、見下してる感じがない。
そこまで感じるのは、三浦マリに幼いといっていいくらいのお坊ちゃんな雰囲気があるからだろうな。
5回目にして、初めて三浦マリのいいところが見つかりました。いいぞ。もっと成長して、9月の大楽には結構いいマリウスだったと思わせてくれ!
そうそう、小南コゼとふうかエポ。プリュメ街で顔を合わせるシーン、小南コゼがはっとしてエポを見つめるのに対して視線を逸らした昆エポに対し、ふうかエポは帽子を深く被りなおした!ふうかエポの方が昆エポより可憐で一途なんですけど、あの仕草一つで今の自分の惨めさをこれ以上自覚したくないとでもいうような辛い心情を表してるのがグッときました。思わず、小南コゼに気付かないでいてあげて!と言いたくなる可憐さ。昆エポと小南コゼは視線が交錯した瞬間、火花が散ったような感じでしたけど、ふうかエポにはそこまでの意地はなさそう。むしろ、気付かないで欲しい、見ないで欲しい、と願って身を縮こまらせてる感じがして、哀れでしたね。
屋比久エポだとどうなんだろう。ますます観るのが楽しみになってきました!
あとね、この日、小林くんがガブローシュだったんですが、もの凄く良かった。特に2幕のバリケードのシーン。市民が来ないことを察知したアンジョが「子供ある者と女たちは去りなさい」と指示を出すんですが、そこでグランがガブをバリケードから押し出すのがいつものパターン。
この日、小林ガブは全身全霊でそれを拒否してました。とうとう痺れを切らしたグランが彼を抱え上げて放り出すようにするんですが、それでも手足をばたつかせ、出たくない、ここで戦うと、表現していたのが凄かった。
そして、舞台が近いからこそ観えた、外に弾を取りに行って戻ってきた時の晴れやかで誇りやかな笑顔。その笑顔のまま撃たれて、アンジョの腕の中に落ちてくるんですよ。あの笑顔が衝撃で、泣くことも出来ずに見入っていました。
そして、相葉アンジョ。ガブをグランに渡した後、膝を付いて拳を握り締める姿からは、怒りや悲しみ、苦しさ、そういった渦巻く感情が噴出しているように見えました。あの握り締めた拳。ガブの血の温かさが失われることを実感して震えているような妄想さえ浮かぶほどで、今もってどう言い表していいのかわかりません。
実は、「子供ある者と女たちは去りなさい」と歌った時、16日の相葉アンジョは泣きそうなつらそうな瞳をしているのに無理に微笑しようとしているように見えたんですよね。その後、戦いの最中はまるで鬼神が乗り移ったかのような壮絶な戦いっぷりで、その落差にもやられていたんですが、そこにガブの死です。
あの、何かに耐えているような表情。彼は何に耐えていたのか。彼の全身から噴き出ているように感じたあれはなんだったのか。
「死のう、僕らは」と宣言した時にはもうその影はなく、全てを振り切って天に向かって駆け上がっていくかのように「世界に自由を」と絶唱した後、本当に天に召されてしまった。
亡骸の静謐さは以前と同じで、だからこそ、どうしようもなく考えてしまいます。
まさか名古屋の最後であんなものをみせられるとは。
大阪ではどうなっていくのか。
楽しみな反面、怖いなぁ。