
チョビさん帰国後の最初の公演だしね。
なんというか、相変わらず鹿殺しらしい舞台でした。
平易な言葉。
ありがちなようであり得ないシチュエーション。
普通な顔してどこかイカれている登場人物。
話が進むにつれて、もうどうしようもないくらい悪い状況にはまっていく筋立て。
全然救いなんてないのに、ナゼカ奇妙に明るくなる雰囲気。
そして、唐突に奏でられる鼓笛隊。
いや、マジで鼓笛隊なんですよね、鹿殺しの場合。
バンドじゃないの。
管楽器が主力で、そこに太鼓がいて、時々弦楽器が混じる。
今回は弦楽器はバイオリンでしたけど、鼓笛隊としか言い様のない編成なんだよね。
それが、舞台の袖やオケピで演奏するんじゃなく、舞台上に出てきて、ブンブカ演奏始めるの。
その音楽のタイミングとか、曲調とかが、これまた狂気の沙汰というか…
とにかく、全部合わせて、「これぞ鹿殺し!」って空気に劇場中が染め上げられる。
そういう舞台。
ワタクシは、多分、ストーリーを楽しむというより、この空気に浸りに行ってるんだろうな。
なんか、中毒になりそうな、そんな空気感なんだよね…
んでもって、役者さんたちも相変わらず。
流れる汗すら見えそうな小さな空間だからこそ生きる演技だなぁ、といつも思うんだけど、今回も同じ。
客演の木村了くんがそこにピタッとはまってたのには感心した。
んで、脚本が売ってたので購入したわけですが、やはり戯曲というものは肉声を伴ってこそだと再確認。
もちろん、書かれている言葉は味わいがあっていいんだけど、舞台で役者が肉声をもって発する台詞の方が数倍いい。
これは、シェイクスピアだろうがなんだろうが同じ。
というより、役者の肉声を通して生きない台詞しかないようなら、その戯曲は失敗作なんだろうと思います。
というわけで、鹿殺しのワールドに、やっぱりヤられたワタクシでございました。