
はい、行って参りました、京都南座
当日は雨模様でしたので、散々考えた付下げではなく、全身ポリでしたが、着物着て行きましたよ。
まあ、その時点ではかなりテンションだったんですけど、席に付いたら、いきなり上がりました
2階最前列って、もの凄~く見やすい
普通の劇場でも前に座席がない状態は視界をさえぎるものが何にもないので非常に見やすいのですが、南座だと特別席ってことで座席前が広い上、近鉄特急などのように肘掛にテーブルが内蔵されてるなど、席自体結構ゆったり目。
比べると三階席はかなりミニマムなので、良いお席というのはちゃんと理由があるものだなぁと。
そんでもって、三階席だと向かって右側のお席以外は花道は舞台すぐのところしか見えない(そして右側だと舞台上が全部見えない)ことが多いのですが、2階最前列だと2/3は見えるのがいい
今回の夜の部の三つの演目の内「暫」と「娘道成寺」は主役が登場後、花道でなんやかややるので、見える席で良かったな、と。
さて、内容に関してですが…
夜の部最初の演目が御摂勧進帳(ごひいきかんじんちょう)より「暫」
「し~ば~ら~く、しぃ~ばぁ~らぁ~くぅ~!」でお馴染みのあの演目ですね。
非常に荒唐無稽なお話ですが、その荒唐無稽を楽しむ為の演目というか。
主役の松緑さんが非常に滑稽味のある役者さんなので、荒唐無稽さが更に際立って楽しい一幕でした。
なんというか、目を目一杯見開いてギロリと睨む表情が怖さより可愛らしさを感じさせられて、面白うございました。
ちなみに、この「暫」。本来は別に勧進帳の一幕じゃあございません。要するに、善人が身分の高い公家の悪人に捕らわれてあわや!という危機に「し~ば~ら~く、しぃ~ばぁ~らぁ~くぅ~!」と声を上げて現れたヒーローが悪人を成敗して善人を助け出す、という筋があれば、全部「暫」
なので色んなバリエーションがございまして、ヒーローが男とも限りません。女性がヒーロー役の場合「女暫」と呼ばれます。
基本、外題といわれる一幕完結のエピソードで、どの演目に差し入れられるかで役名が変わるのが、この「暫」の特徴というところでしょうか。今回は御摂勧進帳(ごひいきかんじんちょう)の一幕として演じられたので、役名もそれに準じていましたが、べつのバリエーションでは、皆が皆、違う名前で登場します。
全部に共通するのは、ヒーローのあの独特の衣装と「し~ば~ら~く、しぃ~ばぁ~らぁ~くぅ~!」の掛け声といったところでしょうか。
二番目の演目はやはり御摂勧進帳(ごひいきかんじんちょう)より「芋洗い勧進帳」
普通の勧進帳と違って、こちらは大らかというにも大らか。勧進帳の渋さはカケラもありませんが、ケレン味は充分。話の筋を見るとかなり残酷というかブラックなんですが、演出と脚本の影響でかなり滑稽なことになっています。
なにせ、幕切れが弁慶が引きちぎった敵方の兵の首を大きな桶に入れて金剛杖でかき混ぜるシーンですから、よくよく考えるとかなり……
ですが、いかにも人形然としたリアルさのカケラも無い首がポンポンと跳ねて飛び出すのは、ビジュアル的にはおかしいの一言。
それを松緑さんが演じるのですから、おかしさ倍増、といったところです。
松緑さんという役者さんは非常に素晴らしい役者さんなんですが、典型的二枚目というよりは三枚目的役どころがお似合いの役者さんだなぁとつくづく…
ああいう役者さんが悪役をなさるとそれはそれでゾクリとくる凄みが出ようかと思われますので、もしそういう役を演じられることがあれば、是非見たいと思います。
三番目が「京鹿子娘道成寺」
女形の面目躍如たる舞の大曲ですね。
舞われたのは菊之助さん。
お父上の菊五郎さんはすっかり立役の方になってしまいましたが、さよなら公演で見た弁天小僧はまだまだ美しゅうございましたっけ。
息子さんの菊之助さんの美貌は、そりゃお母さまも美しい方ですが、お父様譲りかなぁと。比べると、やはり年若いだけに若々しく瑞々しい印象ですが。
ただね~、ちょっとびっくりしたんですが、舞ってる時はただただ綺麗な印象だったのが、ラストでどんでん返し
道成寺なので、最後はウロコ模様の振袖という衣装で髪を振り乱した姿で鐘に登って、周囲を睨みつけるんですけど、それが、すんごい怖い
なんなの、あの怖さ……
めっちゃ好みやんか
ただ綺麗なだけの女形より、ああいう感じの役者さんの方が好き
福助さんとかね。
福助さんも綺麗な女形さんなんだけど、無頼とか悪婆とか似合うんですよね。
玉三郎さんのただただ綺麗で溜息しか出ない、というのとは違ったベクトルの魅力だと思います。
いいわ~、菊之助さん
この路線でいってくれないかしら。
綺麗なお姫様じゃなくて、物の怪とか悪女とかそういう役、やって欲しいなぁ。
などと思う私でございました。