昨日見てきた、ターナー展の感想。
( 私は美術評論家ではないし、専門的に勉強をしたわけでもない。単に絵を見るのが好きで、ほんの中学生の頃から何かというと美術展・博物展に足を運んでいるだけの素人ですので、まあ素人の戯言と思ってくだされば幸いです)
ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(Joseph Mallord William Turner、1775年4月23日 - 1851年12月19日)は18世紀末から19世紀のイギリスのロマン主義の画家である。イギリスを代表する国民的画家であるとともに、西洋絵画史における最初の本格的な風景画家の1人である ― wikiより転載
子供の頃から画才があったようで、少年時代、理髪店を営んでいた彼の父親は、彼の書いた絵を店の窓に洗濯バサミで吊り下げて自慢すると同時に何シリングかで売っていたそうで。
微笑ましいけど商魂たくましいな、父ちゃんw
この美術展、彼の初期~晩年までの作品を年代順に並べてあって、彼の絵の変遷がよく分かります。
初期はくっきりと輪郭のよく分かる絵を描いているのですが、徐々にその輪郭が曖昧になっていく様子がはっきりと。
実を言えば、初期の絵は確かに上手だしいい絵なんですが、そう感心はしなかったんですよね、私。
清明な色使いは、鮮やかというのとも違って透明感があって、きっとイングランドの五月の色はこんなんだろうな、と思わせてくれるものがありましたが、見惚れるほどじゃないというか……
偉そうなこと言ってすみません
けどまあ、それが正直な感想。
けど、晩年に近づくにつれて曖昧になっていく輪郭は圧巻だと思いました。ものの中心の色だけが浮かび上がり、他のものは全て光の中の溶かしこまれていくような、あの描写は、ターナーならではのものだと思います。
そう、溶かしこまれていくのが、闇じゃなく光、というところがターナーだなと。
美術展の壁にあった説明書きによると、ターナーが好んだ色は黄色で嫌いな色は緑だそうですが、風景画家なのに緑が嫌いとは…
ちょっとビックリですが、黄色が好きだというのは絵を見れば納得ですね。
綺麗な綺麗な黄色が随所に生かされていて、見事です。
さて……
今回ターナー展を見ての私の総合的な感想は、総じて彼の絵は非常にイングランド的だということ。
どうイングランド的か?
一口に言うと、他国の絵画と比べた場合の印象の違いです。
ターナーはクリアな色を多用していることが多いです。
それが光と影のドラマチックさを好むように感じるスペイン絵画との大きな違いでしょうか。
明るいという点ではイタリア絵画も明るいのでしょうが、あちらは歴史的宗教的土壌ゆえか、絵画の題材の選び方がそもそも違うような……
例えば、重要人物のイギリス到着という題材でも、 ターナーはその重要人物の到着寸前を描きますが、イタリア人画家なら、到着の瞬間を描くでしょう。そういう差です。
綺麗な色を多用する点ではフランスの印象派も同じですが、大きな違いは色使いに潜むイメージの違い。
印象派の色の中にはコケットリーやロマンティックなものが含まれているような気がしますが、ターナーには少なくともコケットリーはない。ロマンティックといえばロマンティックなんでしょうが、フランス絵画が女性的なのに対して男性的という感じ。そして、明るさの中にある種のメランコリーとでもいうのか、乾いた憂鬱とでもいうのか、微妙な陰影が感じられました。
彼が活躍したのは、イギリスが非常に栄えていた時代で、国ぐるみそういう覇気というか活気があったんでしょう、そういう題材の絵もかなり多いことからも分かりますが、それでもイギリスらしいと今の私が感じられる何かがあるのが面白いなぁと。
ちなみに、ターナーは水彩画も多く描いていて、今回もたくさん出品されているので、油絵の重さが苦手な方も楽しめるのではないでしょうかね?