「SEMINAR」 | シャオ2のブログ

シャオ2のブログ

最近は着物と舞台に夢中

昨日、一昨日と、二日間続けて、「SEMINAR」というお芝居を観劇してきました。


同じ舞台を2回も?といぶかしむ向きもおありかと思いますが、ライブと同じで芝居も生き物。


毎日同じなようで、どこか違うのですよ。


ええ、今回の舞台でそれを改めて思いました。





このお芝居、長さ自体は1時間45分くらい、と短めです。


派手な舞台装置や音楽もない、煌びやかな衣装もない、ごくごくシンプルなストレートプレイです。




だからこそ、ごまかしの利かない、演じる役者さんたちの実力勝負の舞台だったなぁと思います。


超大作ではなくとも、しみじみとした滋味のある良作でした。


傑作、と書かないのは、見る人によって評価の分かれる作品だと思うから。


私にはとても面白い舞台でしたが、誰もが大拍手、というわけでもないだろうな、とも思ったのです。


というのは、この舞台、起承転結がはっきりしないというか、え、そこで終わるの?というか、まあ、見る人によっては消化不良を起こすだろうな、という構成だから。


内容的にも、とりたててもの凄い事件が起こるでなし、ひたすら膨大な量の台詞が飛び交うわけで、その台詞も妙に哲学的だったりとりとめがなかったりで、一度見ただけでは良く分からない部分もあったりして。


というか、登場人物全員が作家ないし作家の卵という設定だからなのか、冒頭の部分に出てきた台詞が後からまだ出てきたり、何となくスルーしていた台詞が後から意味を持ってきたり、見るほうも記憶力と注意力が必要な、疲れる芝居でもありました。


あ、だから短めなのか。


この芝居、アフタートークで北村さんが「疲れる芝居なんですよ」と仰ってましたが、演じる方はもっと疲れるんでしょうね。


これが3時間も4時間も続いたら、演じる方も見る方も大変だわ。





閑話休題。





内容は、端的に言い切ってしまえば、四人の作家ないり作家の卵が、一人の講師に週に一度のプライベートなセミナーを受ける、というだけのものです。


講師・レナードはそれぞれの書いた作品を読み、時にはくそみそにけなし、時には褒め、時には冷酷な真実を突きつけるわけですが、それに対する書いた本人や聞いていた他の生徒が反応して、少しづつ人間関係や心のありようが変わっていくのを描いた作品。


舞台は、ほぼ、そのセミナー会場にもなっている、登場人物の一人の家。


ラストだけ、講師レナードの家に変わりますが、ずっとそこ。


幕開けは、相葉さん演じるダグラスが、とある芸術村(寡聞にしてよく知りませんが、芸術家が集まって作品を作るためだけに作られた場所ってものがあるそうで)のことを饒舌に語っている場面から始まります。


四人の生徒のそれぞれの性格やありようがはっきり伝わってきます。饒舌だけど空っぽのダグラス、利用できるものは利用するという現実的で自信家のイジー、性に対するこだわりが強烈なケイト、「ことば」を神聖視しすぎるきらいのあるマーチン。


面白いのは、それぞれの立ち居地や性格が違うにも関わらず、全員が半ば「自分の世界」で完結してるというところ。


だから2場冒頭で、講師のレナードが言う「世界と繋がっていない」という台詞が非常に現実的で説得力を持って聞こえてくる。


そこから怒涛のような膨大な台詞の応酬が始まり、詰め込まれた「ことば」の意味の表と裏に翻弄され、気がつけば終幕していて、疲労困憊した状態で客席に座り込んでいた、というのが私の状態でした。


北村さんが素晴らしい役者さんであるのは当然として、生徒役の四人も素晴らしかった。


誰一人として、そこで生きていない者がなく、誰に視線を当てても、台詞が無くとも何かを語っている。


ダグラス風に言えば、全てが完璧に、いや、完璧すぎるほどに調和していて、見事でした。


若さゆえの傲慢や自信、初めての挫折や真実の苦さ、それを受け入れる勇気、そういったものが作家の業のようなものとあいまって渾然一体となった、そんな芝居。


もしかしたら、観た直後より、後になってからの方が印象が深まるかもしれない、そう思わせてくれる舞台でした。





そんでもって、付け加え。


二日間とも、微妙に違ってて、それがなんとも味わいのある芝居でした。


こればかりは生で見た人じゃないとわかんないものなんでここがこう違う、とはっきりは言えませんが、同じ台詞なのに、どこかしら違う。


台詞が主の舞台だからでしょうか、それが際立っていたように思います。


また再演してほしいな。できれば同じキャストで( いや、同じ役者で役を入れ替えても面白いかもな、とちょっと思ったり)




相葉さんファンなので、彼には是非次も出て欲しいな。


ダグラス、良かったもの。あの空気読めなさも良かったし、レナードに作品のことを批評された時の表情も、レナードのスキャンダルを皆に言う時のどこか嬉しげな意地の悪い顔も、ソマリアから帰ってきたレナードのアドバイスを聞いているときの真剣な顔も、どれも、いかにもダグラスで、ちゃんと「生きて」た。


なんというか、成長したな、とも思ったり。


贔屓の役者さんがどんどん上手くなっていくのを見るのも楽しいものです。











というわけで、とても素敵な舞台で今年の締めくくりができて幸せです。


来年一発目は、2月の「眞田十勇士」の予定。


けど、1月に面白そうなのがあったら、行きたいな。