首都圏の普通列車グリーン車では、車内を通り抜ける扉の多くは、電動の自動ドアになっている。
自分の力で動かすのではなく、タッチすれば、自動で開くようになっている。正確に言えば、扉の部分をタッチすると、光が遮断されてドアのスイッチが入るわけだ。(空っぽで透明なペットボトルがスイッチに触れても、扉は動かない。)
現在は、普通列車グリーン車と言えば「2階建て車両」だが、昔はそうではなかった。 旧式のグリーン車も連結されていた。私は「平屋」と呼んでいた。
そして、平屋のグリーン車は、扉が自動でなかった。自分で扉を開く必要があった。
私がグリーン車中毒になった2009年頃は、2両のグリーン車のうち1両が、平屋の時がかなりあった↓。
平屋はリクライニングの角度が小さくて、人気がなかったが、私は大好きだった。空いていたのに加えて、アテンダントさんの動きがよく分かるからだ。凄腕アテンダントかどうかが、実によく分かるのが平屋車両なのである。
見極める大きなポイントは、これだった。
乗客が通る前に、扉を開けて待つのが一流のアテンダント。
横浜や大宮のような乗降客が多い駅に着く直前に、一流のアテンダントは手動の扉を開けて、乗客の手をわずわらさないようにするのである。
二階建てと平屋のグリーン車が1両ずつなら、手動の扉2ヶ所のうち、アテンダントが開けられるのは1ヶ所だけ。でも、開いて待ってくれている姿には、感激 したものだ。
アテンダントが開閉するのには、もうひとつ理由があった。客が開閉すると、勢いよく「ガッシャン!」と大きな音がすることだ。力の加減が分からない客は、力を入れすぎて、大きな音を立ててしまう。ウトウトと眠っている客は、飛び起きてしまう。
今から5年以上前は、高崎線・宇都宮線でグリーンアテンダントの乗務がはじまったばかり。経験豊富なアテンダントは少なく、一部の気遣いができるアテンダントは目立っていた。
現在の二階建て車両は、基本的に自動ドアになった。
ところが、総武線快速は押しボタンで開き、自動的に閉まる方式だ。
東海道・高崎・宇都宮線の一部とヒドラは、下の写真のように、手動で開閉する。中途半端に乗り慣れた乗客は、タッチして「あれ開かないぞ」と戸惑うことがある。
とはいえ、自動扉でない「総武快速」と「東海道・高崎・宇都宮線」の扉は、昔と違ってゆっくりと閉じる設計になっている。大きく開いて手を放しても、時間をかけて閉じるから、ガシャンと音を立てて閉まることがない。
ずいぶん楽な時代になったものだ。
さて、ここまでが前置き。
自動扉になった現在でも、扉の開閉に気遣いをしている凄腕アテンダントもいる。
宇都宮線で見つけた凄腕アテンダントさんは、笑顔でキッチリ巡回する。乗客の下車駅をチェックして、小さい駅でもデッキで見送りする。頑張っているなと思っていたが、驚いたのは手動の扉を閉める時に、手を添えながらゆっくりと閉じたことだ。時間にして5秒ほどかけて、音をたてないように慎重に閉めるわけである。
これには驚いた。
扉を開いたまま放しても、ゆっくり閉まるわけだから、ガタがきた扉でない限りは、音はほとんどしない。でも、音を立てないとしい姿勢、気持ちが伝わってきて、感激した。
こういう人だから、格上の「金バッチ」をつけているんだろうなと感じた。あるいは、「金バッジ」をつけているから、それに見合った仕事が、後からついてくるようになるのかな。