素晴らしい接客をするJR九州の観光列車「或る列車」。
同様に、素敵な接客を続けるJR四国の「伊予灘ものがたり」と比較すると、特色がよく分かるような気がする。そこで、2つの列車を比較して、特色を考えることにする。
【1】「或る列車」の接客、自信と余裕
JR九州の豪華観光列車「或る列車」に、私はこの8月下旬に乗車した。2時間42分乗車して、24000円だ。私は2人用テーブル席を、1人で利用したため、割高な36000円を出して乗車した。
「或る列車」のアテンダントさんの接客は、素晴らしいものがあった。スマートな接客を笑顔でしてくれたが、非常に余裕が見られた接客だった。慌てる場面は全くなく、最高水準の接客と言えた。一流ホテルのレストランで、落ち着いた雰囲気で接客してもらっているようだ。
最も感心したのは、この時だ↓。
私が軽食の「熊本県産 あか牛のステーキ丼」を食べていた。食べていると、米粒が口の横1~2cmのところについてしまった。
私の頭の中は、こうだった。
『まあいいや、あと2口だから食べてから米粒を取ろう。まさかアテンダントさんが《米粒ついてますよ》と言ってくるわけないし』
(↑言葉ではうまく伝わらない気がして、コンビニでおにぎり買ってつけた米粒の写真)
ところが意外にも、アテンダントさんは、すぐ私の横に進んできて、「米粒ついています」と小声で伝えてくれた。
この時のアテンダントさんの表情の、冷静さには驚いた。
いい歳したオヤジに、「米粒ついてますよ」と伝えるのは、もしかしたら失礼だと受け止める客もいそうだ。伝えてよいのか微妙な面もあると思う。
しかし、このアテンダントさんは、迷うことなく、そしてすぐ隣にいた格上で責任者風の先輩アテンダントに相談することもなく、私に「米粒ついています」と小声で伝えたのである。
この自信と余裕には、驚かされた。
【2】「或る列車」は選抜部隊
このアテンダントさんの自信と余裕は、考えようによっては、当然と言えそうだ。
「或る列車」で接客をするアテンダントさん(客室乗務員)は、今まで「ゆふいんの森」「指宿のたまて箱」などの観光列車や、新幹線「さくら」で接客経験を積んできたそうだ。接客レベルが非常に高いJR九州の観光列車のアテンダントさんの中でも、特に腕の良い人を選抜して、更に研修を重ね、「或る列車」(そして「ななつ星」)に乗務させていると思われる。
経験を積み重ねてきた大勢のアテンダントさんの中から、特に優れた人を選び、鍛えているのである。例えるなら、オリンピックでメダルが取れそうな選手だけ選んで、練習で切磋琢磨させ、国際試合に数多く出させるようなものだ。
もともとJR九州には、1990年代から代々受け継がれてきた高い接客水準がある。これは他社よりも優れている点と言える。
【3】「伊予灘ものがたり」のアテンダント
私が一番好きな観光列車は、「伊予灘ものがたり」だと公言している。
では、「伊予灘ものがたり」の接客水準は、「或る列車」よりも上なのか? 率直に言って、「或る列車」の接客の方が、上だと思う。
「伊予灘ものがたり」のアテンダントは、観光列車のアテンダントとして、JR四国に採用されたわけではない。
JR四国の車掌や駅員として勤務していた女性職員が、アテンダントとして乗務することになった。そこで、大分県の湯布院の旅館研修をはじめ、様々な研修をしてアテンダントの仕事を始めたわけだ。JR四国に新採用になった女性職員の、初めての職場が「伊予灘ものがたり」になった人もいる。
だから・・・
《1》「伊予灘ものがたり」のアテンダントは、運転開始から乗務していた人でも2年2カ月。JR九州には5年以上乗務している人も珍しくない。接客の経験値では、「或る列車」に軍配が上がる。
《2》「伊予灘ものがたり」は、初期は8人ほど、現在は11人ほどのアテンダントが、交代で乗務している。一方「或る列車」は、大勢いるJR九州のアテンダント(客室乗務員)の中から、一定水準を超える接客ができる人を選び抜いた「選抜部隊」と言える。
つまり、長い経験を積んだアテンダントが大勢いて、その中から凄腕の人を選抜して「或る列車」に乗務させているわけだ。「伊予灘ものがたり」のアテンダント一人一人が頑張っても、なかなか追い抜くのは厳しいと感じる。
【4】でも私は「伊予灘ものがたり」の方が好き
こう考えると、客観的に見れば、接客レベルは「或る列車」の方が、上と言えるだろう。
経験年数も長くて、多くのアテンダントから選抜された人が乗務しているからだ。
し・か・し、「或る列車」の方が接客水準が上であっても、私は「伊予灘ものがたり」の方が好きだ。
《1》もともと差は少しだけ
「伊予灘ものがたり」の接客水準は、アテンダントの頑張りと、JR四国の関係者の支援で、かなり素晴らしい水準に達している。多くの観光列車の中でも抜群であり、「或る列車」との差は、少ししかないところまで達している。
《2》値段が安い。予約が取りやすい
「伊予灘ものがたり」は、何といっても安い。今年の3月には、LCCのジェットスターで成田から松山まで日帰り往復して、「伊予灘ものがたり」を4本連続して計8時間50分の乗車をしたが、運賃全部と車内での飲食含めて32000円だ。(お土産のグッズは除外)
今回「或る列車」に2時間40分ほど乗るためだけに36000円払ったのと比較すると、明らかに「伊予灘ものがたり」は安い。この点からも、「或る列車」は一流ホテルの高額レストランと同様だ。
1日4本運転されて定員も多い「伊予灘ものがたり」の方が、予約しやすいという点もある。
《3》顔見知りのアテンダント
私は「伊予灘ものがたり」に乗るために、この2年間に8回松山に出かけて、計22本に乗車した。半年ぶりに出かけても、目が合うと「またお越しになったのですね!」と、声をかけてくれて非常に嬉しい。「伊予灘ものがたり」のアテンダントは、入れ替わりが基本的にないので、声をかけてくれるアテンダント5人のうち、1人は休みでも4人は乗務しているのは有難い。
そして4つ目は・・・
【5】「伊予灘ものがたり」が好きな最大の理由
《4》一生懸命が好き
私は、一生懸命に頑張る姿が、ものすごく好きなのだ。
普通列車グリーン車のアテンダントでも、ドジな新人だったのが、頑張って凄腕アテンダントになる姿を見ていると、ホントに応援したくなる。
初期のころの「伊予灘ものがたり」のアテンダントは、ぎこちない表情で、一生懸命に頑張って客と接していた。2度目に乗車した時は、接客レベルが数段アップしていて、感動してしまった。
http://ameblo.jp/syanaihanbai/entry-12003311276.html
実は私は、特に高校生が熱中する姿が大好きだ。
岐阜県高山市の斐太(ひだ)高校で行われる「白線流し」に出かけたことが何度もある。卒業式の直後、セーラー服のリボンと、男子の制帽の白いヒモを結んで、近くの川に流す伝統行事だ。「高校生活さらば!」という区切りをつける感動の瞬間だ。
(写真↑は「白線流し」の様子2009年)
高校の文化祭にも数多く出かけ、多い年は年間60校出かけた。現在でも、9月は高校生のクラス演劇を見るために、都立国立高校、都立日比谷高校はじめ何校も出かけている。最終公演で、感動して泣きながら抱き合う姿を見て、もらい泣きしたりしている。(文化祭について修士論文も書いたことがある)
こんなアマノジャクな性格なのが、私なのである。
だから、「或る列車」のようなプロによる全く隙が無い応対、余裕を持った接客には、たいして感激しない。仮に「マニアっぽくて嫌な客」と思っても、全く表情に出さず笑顔でいることくらいできる余裕あるレベルだから、落ち着かない。かえって話をしにくい面がある。
「伊予灘ものがたり」のように、普通の人が一生懸命頑張る姿が大好きなのだ。「伊予灘ものがたり」のアテンダントは、「或る列車」のアテンダントほどは余裕がなく、困った時には困った表情をしてしまう。表裏がないところが、落ち着けるし、素直に感激できる。(私は変わり者、ひねくれ者だからね)
というわけで、「伊予灘ものがたり」万歳!
本来は、ここまでの予定だったが、もう1つ書きたくなった。
今回、「或る列車」と「伊予灘ものがたり」の比較を書いていると、頻繁に頭に浮かんでくる列車があった。しなの鉄道の「ろくもん」だ。
【6】しなの鉄道「ろくもん」
「伊予灘ものがたり」の次に、私が好きな観光列車は、しなの鉄道の「ろくもん」だ。
実は「ろくもん」は、「伊予灘ものがたり」に、非常によく似ている。
★運行開始は、共に2014年の7月。アテンダントとしての経験値は、2年と数カ月。
★会社としては初の観光列車のため、経験者は基本的にいない状態でスタート。
★「伊予灘ものがたり」は湯布院の旅館で研修、「ろくもん」は小布施の料理屋で研修。
★そして何よりも、アテンダントの一生懸命さには、感激しっぱなし。
感動的な接客は、こちら↓
http://ameblo.jp/syanaihanbai/entry-12130306865.html
「伊予灘ものがたり」と「ろくもん」のアテンダントさんは、アテンダントとして5年10年と精進して来た人には、接客レベルは及ばないかもしれない。でも、できることは全部しようと、全員で意思統一して頑張っている姿には、強くひきつけられてしまう。
私はひねくれた性格ではあるが、こういう面での一貫性はあるので、「伊予灘ものがたり」の大ファンであると同時に、「ろくもん」の大ファンになっているわけだ。
また乗りにいきたいな。
★★★★★★★
めげることがあり、落ち込んでいます。
元気が出るまで、しばらく更新を停止させていただきます。