監督:市川崑 原作:横溝正史 音楽:大野雄二
出演:石坂浩二、高峰三枝子、あおい輝彦、島田陽子、加藤武ほか
DVD1976年作品
巨匠・市川崑監督追悼DVD鑑賞第一弾。
やっぱり最高傑作は『細雪』か『犬神家の一族』か悩みますね。
横溝正史原作・市川崑監督・石坂浩二主演のゴールデントリオは、
この『犬神家の一族』の大ヒット、内容的にも大成功を受けて、
合計5作品続くドル箱シリーズとなりました。
角川映画の記念すべき第一回作品でもあります。
なので、シリーズ全部が角川映画と思ってる人も多いのですが、
2作目以降は東宝映画なのです。
だから、私も持っている「金田一耕助の事件匣」というDVD-BOXは、
東宝が作っているので、2作目以降の4作品が入っていて、
シリーズものでありながら、1作目が入ってないという、
とんでもない企画のDVD-BOXでありました。
それはさておき、本作の完成度の高さは娯楽映画の域を、
何のてらいもなく、悠々と超えてしまっています。
日本人の持つ「業」というものを、こんなにも美しく、残酷に、
そして見事な総合芸術に仕立て上げたゴールデントリオ。
二枚目で売っていた石坂浩二の代表作にもなったわけですが、
それ以前・以後、多くの俳優たちが金田一を演じましたが、
石坂・金田一がダントツにハマっています。
超豪華な役者たちもこのシリーズの見どころですが、
本作では何と言っても、高峰三枝子の生涯唯一の殺人者役。
何度言ったかわかりませんが、最後の謎解きのシーンで、
石坂・金田一が言う新事実に驚き、振り向き様の「え?」は、
他の誰にもマネのできない高尚な「え?」でした(笑)。
リメイクの富司純子をはじめ、同役をやった女優たちのすべてが、
この「え?」を言った瞬間に、その実力の程がわかります。
まあ、その誰一人として、高峰三枝子には勝てないワケですが。
32年前からジジイ役をやっていた三國連太郎や、岸田今日子、
三木のり平、大滝秀治、草笛光子、加藤武、小沢栄太郎などなど、
脇役の一人一人に至るまで、文句なしのオールキャスト。
大野雄二の音楽が、血の色の赤を美しく映えさせます。
シリーズもので、1作目が一番いい、という説は、
このシリーズにも当てはまりますが、
シリーズすべての水準の高さは、他の追随を許しません。
こんなものを32年も前に見せられた岩井俊二や庵野秀明が、
度肝を抜かれて映像作家を目指すのも無理はありませんね。
100点