海辺の景勝地を彩る
岩石海岸の花
佐渡は1週220㌔。
そのほとんどが岩石海岸である。
海辺にはさまざまな岩礁、
岩壁、礫、砂礫とその立地と景観はさまざまである。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20220119/23/syakunage0412/e8/45/j/o1080072015063586490.jpg?caw=800)
二ツ亀海岸遊歩道の花
最北端の海岸の二ツ亀遊歩道沿いの2㌔海岸は佐渡でも最も美しい岩礁海岸である。
二ツ亀とよばれる亀形の大岩塊は陸繁島。
近くの岩礁のひとつはトド岩とよばれ、
北方の海獣のトドが冬漂着する。
冬の氷塊水が直接ぶつかり佐渡で最も寒冷な海辺。
北方植物南限ラインのハマベンケイラインが通過する。
エゾノコギリソウは日本海側の南限。
(ハマハコベ)
ハマベンケイソウ、
ハマハコベ、
オオバミミナグサ、
オオアキノキリンソウなど北方色の強い海岸植物が優勢に分布する。
5~6月、
海辺が最も美しく粧う季節。
ハマエンドウが赤紫のカーペットになって海辺をおおう。
ハマヒルガオの花がホロホロと咲き磯浜をおおう。
トビシマカンゾウが咲きイワユリが咲き、
岩壁には童女に似たアズマギクが咲く。
この地の海岸林はクロマツとカシワ林。
カシワ林の林縁に群生するギョウジャニンニク、
ハマナスやトビシマカンゾウなど、
いずれもこのハマベンケイ線上に優勢に分布する北方植物である。
この地の海岸低木としてはハマナス、
(ハマナス)
ヒロハヘビノボラズ(日本海植物)、
沿海地のシダとしてオニヤブソテツ。
その他海岸植物としてハマボッス、
スナビキソウ、
ナミキソウなど。
エゾヒナノウスツボや塩沼植物ウミミドリ(南限)は北方種で、
ハマベンケイソウ線上の主な構成種である。
(ウミミドリ)
小川御台場草原の花
相川町市街地を北上、
車で20分。
小川に着く。
上小川は段丘上の畑を耕すイネ作りの村である。
海辺の広い段丘面(海抜25㍍)は水田地帯で、
徒歩10分で段丘のふちとなる。
ここから揚島、
姫津、
尖閣湾などの海岸景勝地が遠望される。
佐渡、弥彦、米山国定公園の指定域。
この地の海岸草原は海沿いに300㍍、
奥行200㍍の平坦な海岸草原で、
地元では「御台場」と呼ばれる。
幕末、
黒船来航が激しくなり、
幕府は海岸に大砲を設置したが、
そのひとつが、
この小川御台場である。
この地は海岸植物や沿海地植物を探訪するのによいフィールドである。
①海岸林・・・カシワ・エノキ・エゾイタヤ・クロマツ
②海岸低木・・・ハマナス・マルバシャリンバイ
③海岸植物・・・ハマイブキボウフウ・カセンソウ・トビシマカンゾウ・ハマボッス・イワユリ
④沿海地植物・・・シラゲシシャジン・アオツヅラフジ・アキカラマツ・ハマオトコヨモギ
⑤帰化植物・・・ヒメジョオン・ヒメヒオウギズイセン・アサツキ・ヘラオオバコ・セイヨウミヤコグサ・カモガヤ
二見七浦海岸の花
二見半島の春日三崎(鹿伏)から長手岬(橘)に至る6㌔海岸が「七浦海岸」で、
海岸浸食を受けた岩石が点在する景勝地である。
第三紀中新世のグリンタフ海底火山活動によって形成された緑色凝灰岩(グリンタフ)地帯で、
長手岬や夫婦岩や白島はいずれもグリンタフ域で、
県の「すぐれた自然(地形地質)に指定(1982)されている。
「春日崎海岸草原」は岬の台地上の23㌶の草原で古くは春日崎の神域であった。
草原の大部分はシバ草原で、
草原にはネジバナ、
ノアザミ、
オトギリソウ、
ツリガネニンジン、
ヒメヤブラン、
ヒメハギ、
ナデシコなどが生育する。
草原を彩る海岸植物はトビシマカンゾウ、
ハマイブキボウフウ、
アサツキ。
岩場にはイワユリ、
メノマンネングサ、
キリンソウ、
ハマボッス、
ハマエノコロ。
(ハマイブキボウフウが白花を咲かせている)
高瀬の猫岩の礫海岸にグンバイヒルガオ漂着(1982)、
50㎝のツルを8本伸ばし100枚の葉をつけたが越冬できず枯れた。
長手岬は月面世界と呼ばれるグリンタフ海食台地がすばらしい。
岩礁の外側にはイワユリが大群生しその景観は島内1である。
「佐渡花紀行 自然探訪テキスト:伊藤邦男」
(1999)引用させて頂きました