四国の峰の上で発見
オノエヤナギ(ヤナギ科)は尾上楊(おのえやなぎ)の意味。
牧野富太郎が四国土佐(高知県)の山中で発見し命名した。
尾上すなはち山の”峰の上(おのえ)”に生えている楊(やなぎ)である。
ヤナギは樹形から2大別され字も区別している。
枝が長く垂れるのが柳(やなぎ)であり、
枝の垂れないのが楊である。
四国では山の峰の高地にあるこのヤナギも本州中部なら平野の河畔に生える。
佐渡でも水辺に普通にみられる樹高5~10㍍にもなる大きなヤナギである。
『佐渡嶋採薬譜』(1732)に
「楊 ヤナギ、
コブヤナギ」
とあるのはこのオノエヤナギ。
このヤナギの枝のあちこちに球状の虫こぶがつき、
こぶ状にふくれるのでコブヤナギともよばれた。
『佐渡志』(1816)の物産の項に
「いやなき」
の名で記されるのはオノエヤナギである。
イヤナギの”イ”はいかなる意味か。
井楊(いやなぎ)の意味であれば、
「井」すなはち井戸・湧泉・流水を汲みとるところに生えているヤナギの意味である。
また囲楊(いやなぎ)とも考えられる。
囲は太さをはかる語で、
ひと抱えおよそ6尺ぐらいの太さを意味するが、
このオノエヤナギはヤナギ類の中で特に大木になり、
径1㍍にもなる。
ひとかかえ以上の大きなヤナギが囲楊の意味であろう。
春3月、
直上した新枝はいっせいに開葉し、
樹冠は淡緑色に彩られ明るくなる。
4月上旬、
黄色の花穂がいっせいにつく。
花穂は淡黄から黄へそして4月中旬鮮黄色となる。
それはオノエヤナギの最も美しく粧う季節である。
黄金のベールでつつまれたかと思える樹冠、
クライマックスに達した花穂がいっせいに鮮黄色の花粉を吹き出す。
国府川にかけられた落合橋、
この橋のたもとのヤナギもオノエヤナギ。
樹高6㍍幹径50㌢、
いずれも雄株であるが、
今は2本しか残っていない。
昭和45年以前は、
小倉川は金丸の村の中央を流れ中川(なかがわ)とよばれ国府川に合流していた。
この村には次のような昔話が伝えられている。
金丸ではヤナギの木で橋をかけないが、
これは昔河童と村人の約束ごとだという。
またヤナギの木の箸ではご飯を食べないとされるが、
これも昔、
村人と大亀との約束事だという。
国仲最低海抜地に位置する金丸の村。
雨3合降っても村が流れるといわれた村。
小倉川(中川)・三宮川が国府川に合流する地帯。
これらの河川の自然堤には、
オノエヤナギ・ネコヤナギなどの護岸ヤナギが林立し土堤を村を洪水から護っていた。
ヤナギを伐ること折るをタブーとしたのは当然である。
「佐渡 巨木と美林の島:伊藤邦男」
(1998)
引用させていただきました
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