ひとつの町が植物園をもつ



羽茂町の『佐渡植物園』。

ひとつの町が”植物園”をもつ。

これはすごいことである。

昭和23年(1948)設立。

戦後の混乱の時、

県下に先がけての設立である。

 

設立の趣旨は

①佐渡島の植物分布の特異性、

多様性の縮図として、

島内自生の植物をできるだけ多く収集し植栽して研究のための資料を提供したい。

②未来を背負い青少年の生涯学習の場として植物園を提供したい。

③文化的、

学術的な資料を提供し、

豊かな情操を培わせる第一歩として植物に親しむ場を提供したい。

④地域社会の生産と厚生の参考の場としての植物園としたい。

地元の植物研究家の酒川哲保、

海老名一郎、

葛西秀夫、

近藤福男(金井町)、

北見秀雄(入川)など識見ある指導者が核となり発足した。

日本の植物学の泰斗の牧野富太郎

佐竹義輔 木村四郎博士などの指導を受け、

本田正次博士(東京大学教授・付属植物園長)、

武田久吉(日本山岳会会長)からは来園実地指導を受けた。

 

植物園の総面積およそ65㌶。

現在7つのゾーン別に植物が植栽される。

 

①照葉樹林(スダジイ、タブ、アカガシ、シロダモ)

②既存林の保全と花木園(バラ称の花木中心)

③佐渡の代表的山野草園(ユキワリソウ、エビネ、フクジュソウ)

④ロックガーデン(スカシユリ、ハクサンシャクナゲ、高山植物)

⑤ツツジ園(アカマツ林床)

⑥ヤブツバキ園

⑦水生植物(ヒツジグサ、コウホネ、ミツガシワ)

⑧ミズバショウ園(湧水水域)

⑨スギ林とシダ植物園(マメヅタ、クリハラン、オニヒカゲワラビ)

⑩落葉広葉樹(ヤマザクラ、ヤマモミジ)と里山の山野草(ヤマユリ、シュンラン)

⑪竹林(マダケ、モウソウチクのタケ類、ササ類)

⑫冷温帯の森林植物園(ブナ、ミズナラなどの大佐渡の冷温帯の広葉樹)

 

明治神宮より下付されたハナショウブ園(5000株・330平方㍍6月中旬満開)が隣接する。

佐渡の原植生(タブ・シイ・ミズナラ・ブナ林)の復元林や佐渡の植物研究センター設立などは近き将来の課題である。

 

 

「佐渡 巨木と美林の島:伊藤邦男」

(1998)

引用させていただきました