にぎやかなに草相撲

帰化のヒメコバンソウ



草相撲。

草木の花や茎をひっぱりあって勝負する子供の遊びである。

マツバをからませてひっぱるマツバ相撲、

スミレのくるりと曲がった花の茎をひっかけて引くスミレ相撲などさまざまである。

 

子どもたちのいうスモウグサとはヒメコバンソウのことである。


この草もすっかり島に住みつき、

道ばたや畑のふちなどに群生している。

黄金色の小判に似た穂をつけるのがコバンソウ、

もっと小さなうす緑色の小判に似た穂をたくさんつけるのがヒメコバンソウ(姫小判草)である。

 

スモウグサで勝負。

ヒメコバンソウを互いにからましていっぱりあう。

小さな穂がぽろぽろ落ちる。

何回もくりかえし、

少しでも穂が残った方が勝ちとなる。

 

ダンゴバナの首切り。

ダンゴバナはクローバーの花である。

花の付いた茎を下げて差し出す。

他方の花茎で相手の花をめがけて打つ。

ぽろりと首(花)が落ちた方が負け。

太くてかたい花茎でやる子は素人。

首はすぐ斬り落とされる。

柔らかくしてしおれたようなものがよい。

花と茎の間をこすって柔らかくしてたおれたようなものがよい。

花と茎の間をこすって柔らかく細工するようになると、

子どもも首切りの玄人になる。

 

オオバコ相撲。

オオバコの花茎は、

すらりと長く丈夫である。

二つ折りにして互いにひっかけて引きあう。

ひっかけるにあたりに唾をつけてもんだり、

葉でかんで柔らかくしたりしてーさあ勝負だ。

オオバコ相撲のことを相川町小川ではゴヤンジ相撲、

新穂村皆川ではキッキマッカとよぶ。

 

オオバコは大葉子で、

大きな葉からでた名。

女の子はままごと遊びのサラにする。

男の子はいじめて死にかけたカエルを包む。

カエルを生きかえらせる奇跡の葉であるとされ、

この島でも昔はゲイロッパと呼んだ。

ふみつけに強い植物である。

ふまれると他の草は育たないが、

オオバコは育つのである。

 

「佐渡山野植物ノート:伊藤邦男」

(2002)

引用させていただきました