日本植物友の会 小西氏

 

 遥かなる日本海に浮かぶ佐渡島のドンデン山は、

花の種類、

その群落の大きさ共に、

まさに最後の秘境であり、

生涯忘れ得ぬものものであった。

1人として魅了されない人がいたであろうか。


(ドンデン山の湿原)

 

薄雲の新宿を8時に出発。

24名。

「小川先生はご都合で途中参加ですが、

飯泉会長、

能戸副会長がおいでなので安心です」と、

久し振りの守屋さんのご挨拶。

小泉さんから旅のプログラムと、

ドンデン山を案内してくださる地元の塚本健二さんから地図入りの資料をいただく。

9時30分、

予定通り上里SAに到着。

心地よく晴れて、

車窓からは今を盛りのエゴの花やニセアカシア、

ライラックなど眺める。

関越えの山並みが見えてきて、

輝くばかりの新緑に藤の花房が映える。

 

上信越道に入り、

トンネルを抜けると雨がぱらつく。

この辺りはヤマザクラが美しい。

妙義山・荒船山は雲の中、

確氷・軽井沢といくつものトンネルを通って佐久平にでる頃には、

また晴れてきた。

黒姫山の雄姿、

妙高の味わいある山容を楽しみながら直江津港に12時40分着。

日本海だ。

それぞれに昼食。

港ではハマエンドウ(深い紫色)、

トサミズキ、

キリの花、

ヒメウツギ、ハマヘクソカヅラ、トビシマカンゾウ、

シロバナノオドリコソウなど。

小川先生が出迎えに来てくださる。

明日は御用がおありで乗船せず春日山へ戻られた。

 

13時20分、

カーフェリーに乗船する。

緑青色の海にオオミズナギドリがゆったりと飛翔している。

2時間30分の船旅。

甲板にでて風をうけて大海原を楽しむ人、

船内で車座になり議論をしている人、

横になって体を休める人。

15時50分、

小木到着。

はるばると来つるものかの感あり。

 

小木は盥船で有名な場所。

バスで真野(順徳天皇の真野御陵のある処)を通り、

佐和田から中山峠をこえて、

17時過ぎ、

相川に着く。

相川は金山で栄えた町だ。

夕陽に一番近い宿、

ホテル吾妻に宿泊。

ロケーションは最高、

七浦海岸公園の日本海に浮かぶ帆掛岩が眼前に迫る。


(春日岬の夕陽)
(イワユリ)スカシユリ

海の幸、佐渡牛、

盛りだくさんのご馳走、

夕食後、希望者は「おけさ会館」へ、

相川の立浪会の鬼太鼓や相川甚句、

佐渡おけさの公演を見に行った。

姿のよい若い男性の踊り手のしなのよさに惚れぼれした。

 

5月22日(月)快晴、

早朝、海辺の自由散策。

相川七浦海岸特定公園は、

磯に大小の岩が点在し、

眺望が素晴らしい。

紺碧の日本海は波がおだやかに静まる。

遊歩道を伝い思い思いに浜辺を散策する。

 

浜辺を彩る鮮桃色のハマナス、

ハマエンドウは太平洋側のものより紫が勝っている。

芳香のあるノイバラ。

マルバシャリンバイも一勢に花を開く。

小さなコメツブウマゴヤシ。

散策から戻られる飯泉先生に

「アラゲヒョウタンボクが咲いていたよ」

と教えて頂く。

ブッシュの中に白い花を2つずつ寄り添って咲かせていた。

 


(夫婦岩のある海岸)

海岸にスナビキソウ、

ハマボッスの芽生え。

ハマハタザオが名前通り旗竿をかざす。

鮮やかなオオジシバリ。

ハマゼリが茂り、

メノマンネングサが這生する。

ホソバカラスノエンドウの可愛い花。

ヤハズエンドウ、ハマイブキボウフウ、シャクには苔。

オオイタドリ、ハマゴウ、シオギク、ヤリテンツキ、

コウボウシバ、ハマニンニク(テンキ)、

タチオランダゲンゲ。

浜辺で出会った佐渡の花達は取りわけ、

くっきりと冴えた色をしていた。

 

7時30分、バスで出発、

ドンデン山を目指して青粘渓谷の登山道へ向かう。

車窓よりレンゲツツジ、

フジ、タニウツギ、キリ、ナナカマド、アオダモ、

ウワミズザクラなどの咲いているのを確かめつつミヤマキケマンの咲く登山口に8時40分着。

今日の登山ガイドの塚本健二さんが待っていらした。

 

塚本さんはドンデン高原の大佐渡ヒュッテの支配人を10年間していらしたベテランだ。

伊藤邦男先生とご一緒に『佐渡の花』(1995)を上梓されている。

 

「ドンデン山にはカタクリが数10万株咲きます。

葉に班が入らないのが特徴です。

希産種としてはヤマトグサがあり、

これは牧野富太郎博士が命名されたものです。

ここは梅津川上流で海抜300㍍。

青粘渓谷は全長767㍍ですが、

苔むす岩や太古の姿を残すところがあります。

ドンデン山を含む大佐渡山脈の山々は、

日本海に孤立するため厳しい自然環境にさらされ、

通常、

海抜900㍍程度では見ることができない高山性の植物群落が存在します。

植物が豊かで、

花期が長いのが特徴です」と、話された。

今はシラネアオイの最盛期だとのことで、

期待に胸をはずませる。

 


(シラネアオイ)

~続く~

 

「佐渡山野植物ノート:伊藤邦男」

(2002)

引用させていただきました