日本北限のシイ


(大目神社の椎)

暖帯林の主要樹のひとつであるシイは、

北上して新潟県に分布する。

新潟県における分布の主体は佐渡で、

島の中央を通過する38度線を境にして、

その南側の地域に多い。

佐渡では南佐渡に多く、

佐渡のほかには県中央部の刈羽郡西山町石地だけである。

 

シイの分布を決めるのは暖かさ、

それも冬の2月の平均気温摂氏2度が分布限界とされる。

この限界線が佐渡に北上分布し、

佐渡が日本のシイの分布北限となる。

 

「小佐渡北端のシイ林」(名称)として、

昭和61年度に新潟県の特定(重要)植物群落に指定されたシイ林で、

日本の北限のシイ林である。

 

『第2回新潟県特定植物群落調査報告書』(1986年度)に概要次のように報告されている。

 

「小佐渡の北端の姫崎(両津市大字大川字野城・地名姫崎・北緯38度5分)は、

シイの日本の北限である。」

 

姫崎灯台のある姫崎より竜王崎を経て水津に至る、

海抜20㍍の海岸段丘のヘリや斜面にシイ林が見られる。

これらの林の中でよくまとまった林は「竜王山のシイ林」である。



灯台のある姫崎と平行に海に突き出している竜王崎、

この崎の70~80㍍沖合の海中に竜王岩(りゅうおういわ)がある。

この巨岩の形が、

海中から首をもたげた竜に似ることにより命名されたが、

海の守護神の竜王を祀る竜王堂が、

竜王岩の対岸の段丘上にある。

 

この竜王堂を囲む山を、

地元の人は「竜王さんの山」という。

竜王堂をとりまく堂林は、

東西100㍍、

南北6㍍の小さな林であるが、

樹高16㍍、

胸囲直径40~50㌢のシイ20数本が、

竜王堂の周りに林立する。

その周辺は、

幹径15~35㌢若いシイ林で、

かつて伐採された現在は遷移の途中相である。

 

高木層はシイが優占し、

カスミザクラ、

ホオノキ、

コナラが混じる。

中木層と低木層はヤブツバキが、

草本層はヤブコウジが優占し、

組成の上からシイーヤブコウジ群集に属するシイの北限型の林である。

 

日本の北限のシイ林として、

竜王堂周辺の自然を含め保全したい。

 

「佐渡 巨木と美林の島:伊藤邦男」

(1998)

引用させていただきました