海藻ギンバソウ

ホンダワラ


※海藻は植物ではありません


和名ホンダワラ。

褐藻類ホンダワラ科ホンダワラ属の海藻。

東北から九州に至る沿岸に産する。

干潮線かその下に生える。

高さ1~4㍍。

多く枝分かれし葉を多くつける。

小枝の先に円錐形の小さな実(生殖器托)を多くつける。

食用。

汁の実。

味噌漬け。

佐渡方言ジンバソウ、

ホンダワラ、

ギバサ、

ギバソ、

ジバサ、

ジバソ。

古名・古文書にナノリソ。

 



食用海藻のギンバソウまたはジンバソウ。

和名ホンダワラ。

『牧野新日本図鑑』(1961)に次のように解説される。

「ホンダワラ、

別名ジンバソウ・ナノリソ・ホンダワラ。

東北地方から九州に至る沿岸に産する褐藻で、

干潮線付近及びその下部に生ずる。

体は質軟かく高さ1~4メートルの位になる。

本種は質が軟いので食用に供される」と。

 

佐渡では海辺の両津、

相川、

小木などではギンバソウの名で呼ぶ。

またこれのなまったギバサ・ギバソの名でも呼ぶ。

国仲の村々ではジンバソウである。

これのなまったジバザ・ジバソの名でも呼ぶ。

 

ジンバソウは人馬藻の意味

 

「むかし平家が西国に落ちのびたとき、

人も馬も飢えに耐えかね、

浜に寄りあがったギンバソを、

食い食い走ったもんだっちゅうことです。

それからしても人も馬も食うたちゅうので、

人馬藻ということだと聞いておりますがのお」と、

二見の橘のノリ摘み老人から聞いた話を、

福島徹夫は『海草と暮らし』(1983)に紹介している。

 

私は国仲平野のまんなかの村の泉(金井)に生まれ育った。

この辺りはジンバソウと呼ぶ。

海藻を食べたとすれば第一はワカメ、

もっぱらワカメのお汁である。

第二はジンバソウ、

味噌で味付けした油いため、

またはジンバソウの味噌漬け、

いずれもおかずとした。

 

私の手元に相川郷土研究会の発刊した『残しておきたいおふくろの味』(1986)がある。

ギンバソウ料理として紹介される5品は、

(1)ギンバソウの味噌漬けの油いため、

(2)熱湯にさっと通す位にして割り下醤油で食べるギンバソウのおひたし

(3)ギンバソウの酢味噌和え

(4)ギンバソウとワラビ、フキ、ニンジン、

  ブロッコリーを混ぜたピクルス風の酢漬け

(5)ギンバソウの味噌漬けの5料理品である。

 

佐渡奉公所の編した『佐渡嶋菜薬譜』(1736)の菜糧の項に、

「ホンタラ・海藻也」

と記され、

海藻類15種の中に

「ホダワラ 方言キバザ 賤民の糧なり」

と紹介される。

同じく佐渡奉公所編の『佐渡志』(1816)の物産の項に

「備荒の用をなす」

海藻としてあまも(方言イワノリ・和名ウップルイノリ・スサビノリ)、

すがも(和名カヤモノリ・ヨレカヤモノリ)、

いじこり(和名コメノリ・ツノマタ・マツノリ)、

てんつ、

こてつつ、

わにかづら(方言ツルモ)かせがま、

なのりそ(和名ホンダワラ)などが記される。

 

「なのりそ」は、

東大寺正倉院文書(740年頃成る)に、

万葉仮名で

「奈能利曽(なのりそ)」

の名が出ている。

ナノリソはホダワラの古名で、

万葉集には「名告藻(ナノリソ)」

の名で歌われる。

 

「佐渡山菜風土記:伊藤邦男」

(1992)

引用させていただきました