「土地の動きが活発になってきています。住宅プチバブルが2008年にハジけた際に、多くの業者が抱えざるを得なかった物件が動き出しています。都内では不動産バブルの兆しがありますね」

 しかし、注意したいのは、マンションだという。

「確かにマンションも盛況です。今、マンション購入のトレンドは、駅直結型のマンションと
都心の高層マンションでしょうか。
マンションは『立地』と『管理』を買うべきというのが基本的な選び方ですが、
その傾向が加速しているようです。
駅直結型のマンションは都心に限らず、再開発がいろいろなところで行われていて、
シニア層の駅直結型のマンションへの関心度が高くなっています。
もう一つは都心の高層マンション。
東日本大震災後の帰宅難民問題などもあって職住近接志向が強まっている上に、
東京五輪決定で臨海地区が注目され、バブル的に盛り上がっています」


●中古マンションは要注意

 中古物件も動きが出てきているが、注意しなければいけない中古マンションがあるという。

「東京では、業者が誰も手を出さなくなったマンションがあります。
それは、『特定緊急輸送道路』沿いのマンションです。
『特定緊急輸送道路』とは東日本大震災後に制定されたものですが、
災害時の緊急輸送に使われる幹線道路が指定され、
その道路沿いに建つマンションは耐震診断と耐震化の状況報告が義務化されることとなったのです(耐震診断の期限は15年3月。
「東京における緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例」より)

これにより、特定緊急輸送道路に接するマンションで、
いまだ耐震工事をしていないマンション(特定沿道建築物)は事実上、

“違法”状態になってしまうのです。


しかし、こうしたマンションは耐震工事をするお金がない」

 毎月の管理費は日々のマンション管理に、
修繕積立金は10~15年に1度行うマンションの外観や配管などの修繕費に消えていく。
これ以上の負担は耐えきれないということで、耐震工事は後回しになっていたというのが実情だ。

「自治体が補助金を出すので、耐震工事をしなくてはいけないとなっても、古いマンションは工事をするための積立金を持っていない。
そうすると、私たちは売る時に、違法なマンションとして説明して売らなくてはいけなくなる。
これはとても売りづらい。
プロ筋でも今、特定緊急輸送道路に面した中古マンション(具体的には昭和56年5月以前に建築された旧耐震基準で、道路幅員のおおむね2分の1以上の高さの建築物)は手を出しにくくなっています」
しかも、この特定緊急輸送道路が意外と多いのだ。
数多くの幹線道路が指定されていることがわかる。
東京都によれば「対象となる建築物約5000棟のうち、分譲マンションの対象棟数は約700棟。
このうち約5割が耐震診断を実施中または実施済み」という話だ。
350棟が手つかずで、業界にとってはババ抜きのような状況が続いているということになる。



●年収300万円から買える戸建住宅
 

「さらにマンションは、ほかにも怖いことがあります。
マンションの最後は、どうするつもりなのでしょうか。
何十年後かに老朽化した時、建て替えられるとホントに思っているんですか? 
業界では『マンションは資産形成にもなりますよ』というのだけれど、
『マンションの最後を考えたら資産形成にならない』恐れがある」

 工法が進化したことによって半永久的に居住ができる時代にはなったが、
いずれ建て替える時期はやってくる。そのときに誰がお金をどれだけ負担するのか。
耐震工事でもこれだけ話が進まないのに、建て替え話が進むのだろうか。


「現に建て替えに成功したマンションはそれほど多くありません。
成功したケースは、同潤会江戸川アパートメントとか桜上水団地のように、
それまでよりも大きなマンションにして、新しく分譲して建設資金に充てるやり方ができる、
土地に余裕のあるところだけです。
大都市圏のマンションでは、すでに容積率ギリギリに建っているので難しい。
つまり、お金も土地も余裕がないのです」

 こうした事情もあって、一般的に「マンションか戸建て住宅か」という問いには、
「断然、戸建て住宅」と答えるという。

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