「男子力」「男らしさ」のことを書いたので,
今回は「女子力」「女らしさ」について考えてみます。
NHKドラマ『大奥』が終わりました。
以前のブログに書きましたが,ボクのこの作品を,漫画時代から高く評価しています。
男女逆転の江戸時代を,史実に沿いながら,巧みなフィクションにしたてあげていく。極上のエンターテインメントでありつつ,現代ニッポンに対する痛烈な諷刺が込められている。
「社会科のセンセイ」としてはたまらない作品でした。
さて,ドラマ『大奥』は明治維新により幕を閉じますが,
史実の大奥のその後をテーマにした番組が再放送されたのでこちらも見ました。
NHKEテレ『知恵泉』
「大奥の再出発 幕府崩壊 失職女性のたくましい生き方」
3人のゲストが登場します。
石田裕子さん 「IT企業人事担当役員 女性活躍推進に注力」
真飛聖さん 「俳優 元宝塚歌劇団花組トップスター」
鈴木由紀子さん 「作家『女たちの明治維新』『最後の大奥 天璋院篤姫と和宮』」
鈴木さんが大奥の女性を「生涯雇用のキャリアウーマン」と捉える視点は新鮮でした。
真飛さん
俳優転身後に女らしさをどう演じるのかに悩む。
ちょっとだけしおらしくする,肩をすくめ気味にする,歩幅を小さくする…
先輩たちに「もっと自由でいいんだよ」「そういう女もいるから「それがオマエだろ」(と言われて),何年かたってやっと「あっ別に性別にとらわれる必要はなくて,自分の心が動いたように演じていけばいいんだと思った」
石田さん
「いやぁありますよね。女性だからとか,女性はこうあるべき,男性はこうあるべきとか,固定概念があるんだと思います。それがある以上は自由にふるまえないとか,自分らしさを出せないというのは,かなり日常生活でもあると思います」
鈴木さん
「外側の規制だけじゃなくて,自分の内側にもあるんですよね」
「やっぱり女性は柔軟ですよね」「男性は過去にとらわれて前に進めないというのはよくありますけど」
「(女性は)この生き方は自分には合わないとなったらチェンジできるっていうか,変化を怖れないというところもすごそうな気がします」
話は変わって,女性リーダーの資質について
鈴木さん
「女性のリーダーって感情に寄り添わなきゃいけないし,
女性ならではの感性を生かして,ちゃんとその人の,マネジメントする人の心情を理解して寄り添ってあげて適切なアドバイスをあげるいうことが絶対に欠かせない」
聞いていて感じたことが2つあります。
(1)自分らしさってなんだろう
真飛さんの言った「オマエらしさ」,石田さんの言う「自分らしさ」って何だろう。
真飛さんの俳優業に転身するまでの人生は,宝塚歌劇団入団以前と以後で年数的にほぼ半々。
彼女が自覚する「オマエらしさ」って,
入団以前と以後,どちらの「自分」なんだろうか?
「一人の女性,学生,娘」として生きていた前半生,
「男役としてのふるまい」を学習し続けた後半生。
もちろん混然としているでしょうけれど,少なくとも「演じる」という環境にあっては後半生が圧倒的な影響を及ぼしていることが,その語りから分かります。
「人間の思考や行動はそれぞれが属する社会や文化の構造によって規定される」なんてレヴィストロースさんが言っていたような気がします。これはこと,ジェンダー,「女子力」「女らしさ」にとどまることではないでしょうけれど。
(2)女性らしさを超える難しさ
「女性らしさ」「男性らしさ」の枠組み,固定観念からぬけだすのは,やっぱり難しい。
石田さんや鈴木さんの語りからは,男性優位な社会において女性は内側からも規制をかけてしまう傾向が伝わります。
彼女たちはそこから抜け出すための努力を続けて,現在の社会的地位を築いてきたのでしょう。
その彼女たちがこう語るのです。
「(女性は)柔軟です。変化を怖れない」
「女性ならではの感性を生かして」
そこには,
女性を男性と対比する発想,
女性の男性に対する優位性を示そうとする姿勢
が感じられます。
誤解のないように念のため。
ボクは彼女たちを批判しようとしているわけではありません。
そう読めてしまったら,それはボクの書き方か考え方そのものが成熟していないせいでしょう。
ボクは,勝手に思うのです。
彼女たちは,男性優位社会において,
男性に対抗して這い上がってくる生き方をせざるを得なかった。
その中では,男性優位社会において認知されてきた「女性らしさ」を逆転の武器とする知恵を身につけて,闘ってきたのだ,と。
まぁ1時間に見たいな番組の,言葉の断片だけをきりとっての感想なので,誤解も多いでしょうけれど。
I have a dreamです。
自分の子どもたちや孫の時代に
「男らしさ・女らしさ」「日本人らしさ」…
いろいろな「らしさ」が取っ払われて,
人と人がつきあっていけるときが来ることを。
そんなときが訪れて,はじめて世界が平和になるのでしょうか。