ロシア・ウクライナ戦争の死傷者数が50万人に迫るという推計が出されました。
ニュースソースは「米政府高官」とだけ。
もちろん,ロシア・ウクライナ政府とも肯定していません。
ロシア政府の発表は過少と言われ続け,
ウクライナ政府はそもそも公式発表をしていません。
50万人…途方もない数字です。
さて前置きが長くなりました。
この戦争はいつまで続くのか。
ウクライナ副首相が「年内の終戦は難しい。来春以降になるだろう」と見解を示しました。
あなたはどう思いますか。
早く終わってほしい,終わらせなくてはいけない…
それはボクも同じ気持ちです。
しかし,「社会科のセンセイ」としては,個人的思いは置いて,思考してみたくなるのです。
正直言って,この先書くこと,つまり〈ボクの思考過程と結論〉と同じ論評の類を見聞きしたことはありません(もちろんボクが知らないだけかもしれません)。思考…予想…妄想…それは読んだあなたが判断してください。
結論から書きます。
来年2024年中にこの戦争が終わることはありません(停戦も終戦もありません)。
理由を書きます。
それは来年の世界の選挙スケジュールにあります。
1月:台湾総統選挙。
2月:インドネシア大統領選挙。
3月:ロシア大統領選挙。クリミア半島併合10周年。
4月:インド下院総選挙。
5月:ウクライナ大統領選挙。
11月:米国大統領選挙。
台湾,インドネシア,インドについてはここでは触れません。
ロシア,ウクライナ,米国の大統領選挙にしぼります。
ロシアにはプーチン大統領に対抗する有力候補はないとされています。そこで重要なのは投票率と得票率になります。大きく低下するとプーチン氏の威信が損なわれ,大きな政治変動の引き金になる可能性があります。
ウクライナでは実はゼレンスキー大統領は「1期限り」を表明して当選したのですが,再出馬は濃厚です。今や「英雄」視されている氏の圧勝と日本では思われているかも知れませんが,有力な対抗候補がいます。首都キーウ(キエフ)市長であるクリチコ氏です。元ボクシングの世界王者で,彼もまた「英雄」です。
米国はご存じのごとく,共和党はトランプ氏,民主党はバイデン現大統領の再対決が現時点では有力ですが,予断は許されません。
どの候補者も大統領選挙の勝利には「戦争の勝利」が必要と考えるでしょう。
しかし,そもそもです。
この戦争は「勝利の定義」が未だに不明です。
また,どちらかの国が「降伏」するほど軍事的に一方的な決着がつくことは考えられません。つまり「終戦」はありえないのです。
「停戦」もしくは「休戦」の場合,条件が折り合う可能性がありません。
ロシアは「クリミア半島に加えウクライナ東部地域を事実上の支配下に置く」ことができなければ,プーチン大統領に対する国民の批判は一気に高まるでしょう。ワグネルなどの過激派が離反する危険もあります。
ウクライナは「事実上領土割譲を認めた」となれば,ゼレンスキー大統領は一気に国民の信を失うでしょう。
それだけではありません。もし仮に何らかの和平が実現したとしましょう。それはプーチン大統領やゼレンスキー大統領の再選を保証するかと言えば,そうとは限らないのです。
第二次世界大戦の例を思い出してください。
1945年,5月ナチス・ドイツの降伏により,人気絶頂に達したかにみえたチャーチル首相は,7月下院総選挙でよもやなの大敗を喫して,大日本帝国の降伏を待たずして,政権を追われることになったのです。
最大の理由は,英国民の戦争に対する倦み,平和への希求,ひとことで言えば「気分転換」です。もう戦争は終わったと実感したい。もうチャーチルの顔は見飽きたよ,あの顔を見ていると,戦争のことばかり思い出す…。
プーチン,ゼレンスキー,バイデン,3名の大統領にとって,当選にとってもっとも良い状態は「戦時の継続」です。
〈「国民の団結の必要性」を掲げて批判を封じる〉――古今東西の政治権力者が味わおうとした「禁断の蜜の味」を,三者が欲しない理由が浮かびません。少なくともボクには…。
―― 以上です。
ボクが「ロシア・ウクライナ戦争は2024年中に終わることがない」と考えたその理由をあなたはどう思われますか。
最後に書きます。
ボクはこのような予想を立てていますが、そのことを望んではいません。
かつてクラウゼヴィッツは書きました「戦争は他の手段をもってする政治の継続である」と。
ロシア・ウクライナ戦争のだらだらとした継続…それは,何よりも〈権力者の自己保身〉という身もふたもない政治的動機に基づいています。
彼らは,ロシア,ウクライナ,米国の国民,巻き添えとなっている世界の人々の日常や平和,安心や幸せを考慮に入れようとはしません。
戦争ってそういうものだ
――ボクが歴史から学んできたことです。