12月8日,韓国で「数え年」廃止が決定されました。
ところで,今年2022年,
日本は「太陽暦」採用150周年の日でした。
「数え年」と「太陽暦」なんの関係があるの?
と首をかしげる方。
あっ!とピンと来た方。
どちらの方も,よろしかったらお読みください
さて,明治5年11月9日のことです。
当時の内閣(太政官)が「太陰暦ヲ廃シ太陽暦ヲ行フ附詔書」を布告します。
日本で長く使われ続けた,太陰暦(正しくは太陽太陰暦)を廃し,太陽暦を採用すること。1年を365日とし,それを12月に分け,4年毎に閏年をおくこと,1日を24時間とすること,などが定められました。
そこで11月9日は「太陽暦採用記念日」となりました。
そして「明治5年11月9日」は「1872年12月9日」となったのです。つまり,今年は「150周年」。
正式には「明治5年12月3日」を「1873年1月1日」として,
太陽暦が使われはじめます。
――と,ここまでは歴史の教科書に載っているかもしれません。でも,つぎのことはあまり知られていません。
新暦施行から1カ月後の1873年(明治6年)2月5日,同じく太政官によって「数え年」を改めて「満年齢」を使用することが決定されます。(「太政官布告第36号(年齡計算方ヲ定ム)」)。
つまり「太陽暦の採用」と「満年齢の使用」はセットなのです。
いずれも「文明開化」「殖産興業」という明治政府の近代化路線にもとづいた決定でした。(改暦を急いだ背景に明治政府の財政事情があったことが知られていますが,それは導入時期を早めるきっかけになっただけのことです)
さらに約30年後(1902年)「年齢計算に関する法律」が制定されます。
ところが,「太陽暦」は徐々に庶民の生活に浸透していくのですが,「満年齢」はなかなか浸透しません。
結局,1950年1月1日に「年齢のとなえ方に関する法律」が制定されます。そこには,国や地方公共団体が満年齢を使用することを義務付けています。これをきっかけにようやく,数え年での表記や表現は消えていくようになります。1873年の導入開始以来実に80年近い歳月がかかっています。
もっとも「厄年」や「年周忌」の数え方などには「数え年」の片鱗がみられます。
またある意味「元号」も,制定されたときが元年(1歳),つまり数え年なんだそうです
そんなことを言い出すと,太陽暦(西暦)も「数え年」です
0(ゼロ)年がありません。
さて,お隣韓国の話に戻ります。
実はすでに「満年齢」の使用が定められています。
1962年1月1日,それまで韓国では神話にもとづく「檀君紀元」を採用していたのですが,太陽暦(西暦・グレゴリオ暦)に改暦(改元)するとともに満年齢を使用する方針が示されました。
日本と同じく,
「太陽暦の採用」と「満年齢の使用」はセットなのです。
しかし,かつての日本と同じように,国民の間に浸透することはありませんでした。
そして,「数え年」を使用している国が世界で唯一となり,国内外で混乱が起きていたようです。BTSなどk-popスターの年齢とか「数え年」?「満年齢」?どっちだったんでしょうか?
また,これもあまり知られていませんが,
日本では誕生日が「1月1日」であれば,毎年同じ「1月1日」が誕生日です。
ところが韓国ではいまだに太陰暦の発想が色濃く残っているために,「旧暦の誕生日」を用いている人々がいます。
すると旧暦(太陰暦)と新暦(太陽暦)にはずれが生じるので,「旧暦の1月1日」を太陽暦で表そうとすると,年によって「1月7日」だったり翌年は「12月20日」だったりと変動してしまうのです。これはメンドウクサイ
尹錫悦(ユン・ソンヨル)大統領は大統領選挙の段階から「年齢の数え方を統一する」との公約を掲げており,ついに2022年12月8日,国会で「行政文書は満年齢に統一する」と明記した民法,行政基本法などの改正法が可決されたのです。施行されるのは来年2023年6月からです。
実は,ボクの奥さんは韓国の人ですが,毎年オモニ(お母さん)の誕生日がわからずに困っていました。今年もつい日が過ぎてしまい,オモニは大層ご機嫌斜めだったそうで…
来年からはこうした騒動はなくなるのかなぁ。でもやっぱりお年寄りは習慣を変えられないだろうなぁ…日本の歴史をふりかえれば,韓国に満年齢が完全に根付くには,あと30年はかかりそうな気もします。