早朝発のAIR DO機に乗りこみ、初めて見る北海道の大地。本州を抜けると雲が切れ、青空が広がった。


無事旭川空港着。約40分のバス旅で市の中心部へと向かう。


空港から麦畑を抜けて住宅街、更に市街地へ。

見慣れない街路樹。クリスマスツリーとして売られているトウヒの仲間のようだ。北海道だなあ、と思う。

ほとんどの乗客が降りた旭川駅前から更に先、5条昭和通まで乗る。

画像に「1条」とある通り、旭川の街は1条、2条…とざっくり東西に走る道路と南北の道路とで形作られている。中心街は主に北の11条辺りまで、とされているがこれが実は51条まであるのだそうだ。因みに空港からアプローチした南側は住宅街が占め(バスで走ってきたところだ)、こちらも39条まであるという。


5条昭和通りのバス停。ここで運転手さんに礼を述べてバスを降りる。真正面のこのビルが今回お世話になる宿だ。駅から徒歩15分ほどだが、初日はここを起点に動き回った方が都合がいい。

ここから駅の方へ戻るかたちで歩き出す。


時刻は午前9:30の少し前。先ずは朝食をとる。

この立ち食いそば屋は予め調べてあった。東京のような真っ黒い、強く甘辛い汁のそばを食べさせてくれるという。

引き戸を開くと正面に奥から右手にかけてLの字形のカウンター、左手から逆L形に正面奥の壁までもカウンターテーブルが据えつけてある。30〜50代の女性が4人ほどカウンターの向こうで働いている。時間的には開店から程ない。この店は9:00開店というちょっと珍しい立ち食いそば屋なのだ。


かき揚げそば。この店はゲソ天が名物だそうだが敢えて私の定番メニューで。評判通りの濃ゆいカエシ、だが昆布・鰹がしっかりした出汁が一歩も引かない。そばとかき揚げは立ち食いの定番的なものだがとにかくツユが美味い。

夢中で手繰ってツユも完飲、元気な挨拶に送り出されて次の目的地を目指す。

ここまではよかった。


次の目的地とはある大手銀行だ。書類を貰うだけの簡単な話だからと鷹揚に構えていた。

そば屋から4、500メートルほどのところにその支店がある。そのこともあって宿の前までバスに乗ったのだ。

支店はすぐに見つかった。東京のサポートセンターでは用紙の名を言えば全国どこでも簡単に受け取れる、という話だったので案内に立っている男性行員にその旨を伝える。当惑する相手を見ておや、と思った。それからが難儀だった。相続に関わる書類だったものだからその筋の担当様がお出ましになり、テーブル席へどうぞとなった。簡単に、というから行動予定の隙間に寄ったのだ。当然該当する口座の通帳程度しか預かってきていない。事情を説明しても中々納得してもらえず相続手続きの代理業務だの口座の凍結がどうしたの(とっくに凍結している)、と食い下がられる。自分のところに任せろ、ということだ。都区内の口座の手続きをどうして旅先でやると思うのだろう?

通帳から調べて確かにその口座が都区内にあることと私が家族であること、更にサポートセンターとのやりとりで各種手続きが進行中であることが理解されて、ようやく私は1枚の書類を入手した。それ1枚では何の効力もない書類を手にするのに30分を要した。それでも書類が折れないように、と丁寧に包んで手渡され、良いご旅行をとお辞儀をされただけで十分、そう思った。担当者と案内の行員に笑顔で挨拶して銀行を出た。

こと相続に関わる種々の業務はいち銀行の支店にとっては小さくない利益が見込まれるのだろう。書類1枚とは言えお気楽に話を持ち込んだ浅慮を反省した。

口座は休眠口座で、残高は¥2.000-と少しだった。


気温は25℃、さすがに暑さを感じるようになった。銀行の真ん前のバス停に丁度駅へ行くバスが来たので利用することにした。旭川市内のバスは後ろ乗り/前降りだ。乗って空席でひと息つこうとしたらバス停3つほどで旭川駅前のバス停に到着した。しかも「駅前」なのは名前だけで駅前からひとつ北側の通りに旭川駅前のバス停がある。この市内バス路線の様々な複雑さには後々手を焼くことになる。

とにかくバス停ひとつ分ほど歩いて本当の駅前へ。

次の目的地は旭川市科学館サイパル。駅からそう遠くない場所だが時間を買うつもりでタクシーに乗る事にした。

タクシープールの先頭の車に乗り込み、

「科学館まで行っていただけますか?」

と問うと丸顔に黒縁メガネの人の良さそうな運転手が「まあ、行かないこともないですが…」

と返してくる。やはりそう遠くはない場所らしい。お願いしますと私が言って車は走り出した。駅前の通りを出てJRの高架をくぐり、建物の少ない一帯を走る。下草や灌木で緑地化されている—開発はこれから、ということだろうか。程なくフロントガラスの向こうに新しげな茶色の建物が見えてきた。立派な建物だな、そう思ったその時、

「ああ!」

唐突に運転手が声を上げた。驚いて運転手を見つめる私を乗せ、タクシーは旭川市科学館の建物沿いにゆっくりと左折した。