Ⅱ型糖尿病患者は発症した原因も様々ですし、それに従って治療法も様々です。
ただ、やはり糖尿病の食事治療にもフードファディズムの魔の手が忍び寄っており、
「低GI値だと信じて朝食でキャベツを先に食べたら血糖値が上がった」
「トマト食べても血糖値上がるじゃん」
「タマネギが糖尿病にいいって話だけど糖質多いな、食べるの避けよ」
トマトのGI値=30
キャベツのGI値=26
玉ねぎのGI値=30
確かにどれも低GI値ですね。食べた方がいいのですが…。
これは以前に私が「糖尿病ネットワーク」をちょっと批判した事に繋がるのですが、低GI値野菜だからといってキャベツやトマトやタマネギを食べても糖質を含んでいるので血糖値が上がるのは当然です。但し血糖値の上がり具合は食べる量如何によります。
結局、血糖値の上昇が緩やかだからと思い込んで大量に食べてしまっては血糖値が大きく上昇することには変わりません。その最大になる時間帯がセカンドミール効果等で食後2時間を超える場合がありますので寧ろ注意が必要です。
それでも野菜は食物繊維を多く含むので腸内環境を整えてくれる強い味方ですし、ビタミン・ミネラルも豊富です。
低GI値ダイエット(低インスリンダイエット)なる健康法がありましたが、GI値というのは炭水化物50g程度の血糖値の上昇度合をブドウ糖を100とした場合の相対値で表したもの。
GI値=「試料(サンプル)摂取時の血糖値上昇曲線の面積」÷「ブドウ糖摂取時の血糖値上昇曲線の面積」
白米のGI値=88
玄米のGI値=55
食パンのGI値=91
じゃがいものGI値=90
さつまいものGI値=48
人参のGI値=80
カボチャのGI値=65
コーラのGI値=43
日本酒のGI値=35
この公式での最大の欠点は「面積」で求めることです。ですから血糖値の上昇がゆっくりでも時間をかけて上昇する場合は高値になり、短時間で血糖値が急上昇したとしても急降下すれば低値になるのです。
更に基準となる試料にも問題があり、ブドウ糖50gは白米だと大体茶碗1杯ですが人参だと200gサイズ3本分になります(以上、森拓郎著「ダイエットは運動1割、食事9割」より抜粋)。
このGI値が血糖値曲線の面積基準(意味が分からない場合、中学数学の教科書の関数のページを開こう!)なのと試料をそのものの量50gではなくブドウ糖50gを基準にしているのは問題ですね。ですから健康に悪そうなコーラのGI値が健康に良さそうな野菜のGIと大体同じ位になったりするのですね(呆)。
低GI値ダイエットに飛びついてその食材ばかり大量に摂取してしまうのも結局フードファディズムでしかない、という事になってしまいます。
低GI値食材を取り入れても血糖値上昇を緩やかにするには色々不確定な項目が多いのです。
何度も主張しますが、糖尿病治療では絶対にフードファディズムに陥らないことが前提です。
では、炭水化物の基本に戻って、
「炭水化物」=「糖質」+「食物繊維(水溶性+不溶性)」
糖質は小腸までで消化吸収されてブドウ糖等に変換されるもの。
食物繊維は胃や小腸でも吸収されず、大腸に届いて便の材料になるもの。
ここでGI値よりも確実な栄養価算定方法があります。松生恒夫医師も自身の本で紹介していますがFI値(Fiber Index)という方法です。
FI値=摂取エネルギー(Kcal)÷食物繊維量(g)
(可食部100g当たり)
100g摂取エネルギーに対して食物繊維がどれ位の割合で入っているかの目安ですが、勘のいい方には血糖値上昇にも関連している事に気付くでしょう。この値で断定は不可能ですが、食物繊維が多い程低く血糖値を上げにくいことが、GI値よりも判断出来ます。
但し、この値は小腸まででどれくらいブドウ糖に変換されるかの目安にはなっても、血糖値の急上昇率ではありませんので注意。血糖値の上昇率は寧ろ糖質の種類によります。
精白米のFI値=560
玄米のFI値=118
食パンのFI値=115
ライ麦パンのFI値=47
ゴーヤのFI値=7
トマトのFI値=19
キャベツのFI値=12.8
玉ねぎのFI値=23.1
カボチャ(茹)のFI値=16.7
ブロッコリー(茹)のFI値=7.3
オクラ(茹)のFI値=6.3
(以上、松生恒夫著「『炭水化物』を抜くと腸はダメになる」より抜粋)
まあ、ここでも精白米は…評判が悪くなるのも頷けますね。それでも白米は白米でよく噛めば腹持ちがいい利点がありますので、毎食1膳は食べていますが。
次に同じアブラナ科でもブロッコリーはGI値=25でFI値=7.3
キャベツがGI値=26でFI値=12.8
キャベツはオリゴ糖を含んでいるし、糖質の性質により異なりますが、FI値が10以下の場合は殆ど血糖値を上げないそうです。
「糖尿病ネットワーク」では野菜から先に食べろと書いてありますけど、
FI値が低い10以下の野菜を先に食べた方が血糖値の上昇を緩やかに遅らせることが出来る、と言えそうです。低GI値よりも確実性があり、実際私も糖尿病の食事治療に直ぐに取り入れました。
さて、糖質制限原理主義者が糖質が多いと避けている根菜やイモ類ですが、
ジャガイモのFI値=46.7
さつまいものFI値=34
ニンジンのFI値=13
大根のFI値=12.9
ゴボウのFI値=4.2
菊芋のFI値=2.3
「やはり菊芋はFI値も低いから血糖値を上げないんだな。イヌリンを多く含むし糖尿病の食事治療には最高の野菜だ」
と思うかもしれません。でも私は菊芋を食卓に上げたことはありません。糖尿病治療に相応しいのは寧ろゴボウの方かも、です。
それは何故か。好物なのは別にして自論ですが、次回以降に書きます。
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