「国民の皆さんが聞く耳を持たなくなってしまった」。退陣表明した2日午前の民主党両院議員総会で鳩山由紀夫首相は悔しそうに語り、同日夕も同じ言葉を繰り返した。しかし、退陣の原因と自ら認めた「普天間問題」と「政治とカネ」は自身の発言のぶれや軽さが引き起こした。“宇宙人”という評も「10年、20年先のことを言っているから分かってもらえない」と独自に解釈。「言葉の軽さ」は最後まで変わらなかった。

 ■反発招く

 「自分が身を引くことが国益だ。10日から1週間くらい前から自問自答していた」。2日夕の取材インタビューにそう答えた鳩山氏。理由は「政治とカネや普天間問題で、国民が聞く耳を持たなくなった。新政権は立ちゆかない」と、あたかも国民の無理解が退陣理由のように語った。

 両院議員総会でも、子ども手当や高校無償化など実績を強調する一方、「しっかりとした仕事が必ずしも国民の心に映っていない」と述べ、「私の不徳の致すところ」と残念がった。

 退陣表明時にも表れた鳩山氏の発言のぶれや軽さは任期中、指摘され続けた。最も顕著だったのが、退陣理由の一つに挙げた普天間問題をめぐる混乱だ。

 「トラスト・ミー」発言が、その混乱を象徴している。昨年11月、現行案通りに沖縄県名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ沿岸部への建設を求めたオバマ米大統領に「私を信じてほしい(トラスト・ミー)」と言った。ところが、翌日には「オバマ大統領とすれば日米合意を前提と思っていたいだろうが、それが前提なら作業グループを作る必要がない」と一転。その後も軽はずみな言動を繰り返し、沖縄県民や米国の不信感と反発を招いた。

 ■すり替え

 政治とカネの問題でも発言は軽かった。野党時代には「秘書が犯した罪は政治家が罰を受けるべきだ」と自民党議員を批判したが、自身の元秘書が偽装献金事件で起訴されると、「私腹を肥やしたり、不正な利益を得たということは一切ない」とすり替えた。

 2日夕の取材インタビューでは、5月31日の段階で「身を引きたい」と小沢一郎幹事長らに伝えていたことを明らかにした。しかし、翌6月1日は口蹄(こうてい)疫問題で揺れる宮崎県を初めて訪問し、東(ひがし)国(こく)原(ばる)英夫知事とがっちり握手。「最善を尽くしたい」「ともに頑張りたい」と発言していた。このとき、すでに退陣を心に決めていたことになる。

 宮崎からとんぼ返りした1日夕、小沢氏らとの2回目の会談後に報道陣から「続投ですか」と聞かれ、親指を出してグッドサインを作った鳩山氏。周囲は続投のサインと受け取ったが、翌日まさかの退陣劇に展開した。

 2日夕、報道陣からサインの真意を聞かれると、「(辞任を)心に決めていても、自分の心を外には一切出さないように努めた」。最後まで理解しにくい理由を述べるばかりだった。

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