学生時分のバイトで

大学生の頃、某外資系ホテルでバイトをしていました。
 
ベッドメイク中心のバイトで、とにかく体力仕事。
 
それでも、格式あるホテルなので身なりはきちんとしていて、確か蝶ネクタイだった覚えがあります。
 
ホテルの客室は14階くらいから27階まであって、大体2フロアを担当し行ったり来たりします。
 
1日に30部屋くらいを担当したでしょうか?
 
思った以上にキツかったのですが、慣れてくるとどの部屋を先にやった方がいいかとか、要領をつかんで来て、ペース配分も上手くなってきます。
 
すると上司(社員)の人に評価され始め、階層の高いフロアを任されるように。
 
海外からのVIPな客が泊まる部屋やスウィートルームも担当しました。
 

清掃チームの怖いマネージャーさん

男性はベッドメイク、女性は清掃に分かれていて、各フロアでチームのようになっています。
 
階層の高いフロアは、ベテランの人がいて、厳しい女性マネージャーがいました。
 
ものすごく怖いと噂で、バイト仲間にも恐れられていた人のフロアで働くことがありました。
 
確かに仕事はテキパキして、他のスタッフへの指示も的確です。ベッドメイクはほとんど学生かフリーターの男子なので、当然指示される側です。
 
この怖いマネージャーにも、部屋に入る順番を叩き込まれ、女性清掃スタッフが入っている部屋を優先するなど、部屋が同時に完了するように、ベッドメイクの動きもちゃんと把握しています。
 
厳しかったけど、幸い嫌われてはいないかな?と言う程度で、同じフロアになることも増えました。
 

偏頭痛で仕事

そんなある日、偏頭痛に襲われながら、仕事をしていたのですが、やはりペースが落ちるし捗らない。
 
するとちょうど同じ部屋を担当してた、同年代の若い女性スタッフが気がついて、調子悪いのか?と聞くので、偏頭痛ですと答えた。
 
当時は、なるべく薬を飲まないようにしていたので、我慢して寝ると言う対処の仕方でしたが、その日はガンガンに痛い日。
 
まあ、若いから乗り切れていたようなものです。
 
しばらくすると、上のフロアから、あの怖〜い女性マネージャーが、自分の担当している部屋にいきなり入ってきました。
 
「あんた!偏頭痛だって?どうも今日は様子がおかしいと思っていたのよ。これ飲みなさい!」
 
そういって、彼女が持っていた頭痛薬を箱ごと渡し、上のフロアに戻っていきました。
 
てっきり、仕事のペースが遅いので、注意しにきたと思ったのですが、他のスタッフから偏頭痛のことを聞いて、自ら薬を持ってきてくれたのです。
 
あの怖いマネージャーがです。
 
他の子に、持っていかせることもできたし、学生バイトの頭痛なんて無視してもおかしくはないです。
 
正直びっくりしましたが、ああ言う仕事に厳しい人って、根は優しいのだとも思いました。
 
もらった薬を1錠飲んで、鬼マネージャーのところに、薬の箱を返しに行きました。
 
「どうもありがとうございました。薬助かりました。」
 
というと、
 
「頭痛いならもっと早く言いなさいよ。あたしも頭痛持ちだからわかるわよ。」
 
口調はきついものの、彼女の優しさに触れ、他の人の行動や様子もつぶさにみているんだなと思いました。
 
それ以降は、プライベートな会話もするようになり、仲良くなりました。
 
 
その頃、自分は呑気な大学生。
 
海外に行く資金を貯めていたという目標はあったけど、マネージャーはご家族のいるお母さん。
 
自分の親よりは若かったはずですが、まだ若い子供のいる、家族のために働いていた人。
 
その責任の重さの違いというか、仕事に対する志の違いを感じました。
 
大企業のキャリアウーマンもかっこいいけど、このマネージャーのように、パートで外資系ホテルのハウスキーピングの仕事でも誇りを持って、家族のために働いている姿は尊敬できました。
 

目標があるとポジティブになる

自分が大学生の頃は、とにかく何事もポジティブに捉えることができ、このホテルのバイト先でも上司から仕事を高く評価されました。
 
自分でもなぜかわかりませんが、やれることは全力でなんでもする、やる気の塊みたいな学生でした。
 
バイトと正社員は全く違うといいます。バイトの経歴などほとんど評価されない日本社会ですが、たくさんいろんなバイトをした経験は、十分社会勉強になりましたし、大学卒業後就職し、正社員になってからも経験は生きていたと思います。
 
外資系ホテルだったこともあり、外国人のスタッフも割といました。
 
今でこそコンビニの店員の多くが外国人ですが、そのころはまだまだ少なかったと思います。
 
ある中国人女性は、元極道の妻だったとか、ネパール出身の同僚は、日本の大学に留学中で、将来は故郷の村に全家庭に電気をひきたいと、大きな夢を語っていました。
 
その彼は今では、日本の大学で助手をしています。
 
賢いし、ハングリー精神も違う。言葉もすぐ覚えて、文句は言わない。
 
自分がちょうど海外に行く準備をしていたので、果たして彼のように海外でやっていけるかなと考えながら目標にもしていました。
 
あの頃の鬼マネージャーさんは、もう引退していると思いますが、お元気なのかなあ?と急に思い出した1日でした。