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フルカワJAZZ道場

お気に入りの1枚を探すために

今や夏には欠かせない夏フェス。
夏フェスといえば”ロック”と思う人も
多いでしょうが、日本でも海外でも
”ジャズ”の夏フェスは昔からあるのです。
今回は今なお続くもの、以前に終わってしまった
ものにかかわらず取り上げたいと思います。

 

☆「イン・パフォーマンス・アット・ザ・プレイボーイ・ジャズ・フェスティバル」

出演者多数
2枚組  
プレイボーイジャズフェスティバルはアメリカ、ロサンゼルスのハリウッドボウルで6月に2日間開催されるジャズフェスティバルです。

1950年代にシカゴに始まり一時中断を経て、1979年にハリウッド・ボウルで復活して以来現在まで続いています。
時期は1982年6月19、20日になっていますが、ライナーノートの日付をみると、日本で発売されたのは1984年のようです。以前はこういったライブ録音のレコードがよく出ていましたが、今は少なくなりました。
なんといってもフェスティバルものの醍醐味は、普通なら共演することのないミュージシャンたちのサプライズでしょう。それを機に一時期活動を共にすることもあるようです。数多くのミュージシャンが参加している中の抜粋されたものが収録されていて、2枚組なので4面それぞれの趣向が違っています。それでは各面ごとに紹介しましょう。

「A面」

当時若手のグループだったピーセズ・オブ・ドリーム(ピアノ・トリオ)の演奏から始まります。普段はフュージョンの演奏をしているのですが、1曲目はストレートなアコースティック・ジャズ・スタイルで「A列車で行こう」を演奏しています。とってつけた感じではなく、ストレートにジャズをやっても十分聞かせる力を持っています。2曲目は打って変わってエレクトリック・ジャズ・そのものになるのですが、その変わり方は見事といえるぐらいです。両方使い分ける力があって、フュージョンの方を選んでをやっていたのですね。
そこにグローバー・ワシントン.Jr(アルト・サックス)が加わります。グローバーは、「ワインライト」というアルバムで大ヒットし、今回はそこからの2曲が演奏されているのですが、最大の魅力は、人気曲のライブ・バージョンが聞けること。最初からメロディーを崩しながら、スタジオ録音とは違うただ一回だけのパフォーマンスを楽しむことができます。ローバー・ワシントン.Jrとピーセズ・オブ・ドリームは翌年の83年には一緒に来日しているそうなので、それはもうライブの賜物(たまもの)というものかもしれません。

「B面」

単独のライブと違い、フェスティバルではビッグな出演者が見ものです。
前半2曲はデクスター・ゴードン・グループです。1曲目の「フライド・バナナズ」は彼の「モア・パワー」というアルバムに収録されていますが、その時は同じテナー・サックスのジェームス・ムーディーが参加していましたが、今回はトランペットのウッディ・ショウに変わっています。アルバムより少し速いテンポで演奏され、冒頭のテーマの2人の合奏からスリリングで、もうすでにバトルが始まっていることがわかります。同じテンポでデクスターのアドリブ・ソロに入るのですが、その後のウッデイ・ショウのアドリブに入ったとたんテンポが急にゆっくりになって、十分にウッディのソロを聞かるのを待ったかのように、また前の急速調にもどって、そのままウッディのソロも速くなっていきます。またウッディの対応力をためしているようであり、最初から最後まで気を抜けない丁々発止の演奏になっています。
後半はウエザーリポートの演奏にマンハッタン・トランスファーが加わります。
これは、マンハッタン・トランスファーがジャズの曲のカバーアルバムを出したのがきっかけでしょう。その中にウエザーリポート代表曲「バードランド」が入っていたのが決め手で、本家との共演になったのではないでしょうか。このフェスティバル一のサプライズといえます。

「C面」

アートファーマーとベニーゴルソンのグループの演奏。
この2人は以前「ジャズテット」というグループを組んでいたことがあります。
ひさびさの共演ということのようです。美しいメロディーの「アイ・リメンバー・クリフォード」が演奏されます。若くして亡くなった天才トランペッター、クリフォード・ブラウンに捧げた曲で、ベニー・ゴルソンの代表曲です。アート・ファーマーのソフトだがよく響き渡る音で、せつせつと歌い上げます。大胆にメロディーをフェイクして吹いているのでアドリブを含めた曲全体が一つの曲のようになっているみたいです。
後半からはナンシーウィルソンがヴォーカルとして加わります。ジャズテット+ナンシー・ウィルソン。ジャズ。ファンにとってはなんとも幸せな時間だったと思います。ハスキーな歌声で時にはしっとりと、時にはパワフルに歌い上げる迫力に圧倒されます。

「D面」

ザ・グレイト・カルテットの名前を見たとき、正直「?」という気持ちでした。だけど、フレディー・ハバート、マッコイ・タイナー、ロン・カーター、エルヴィン・ジョーンズという名前を見てビッグな面々に「おおっ」と驚きを隠せませんでした。まだまだ知らないことはたくさんあります。この面々だけでじっくり演奏を聞くのが一番と思われるので、当然、途中参加のミュージシャンはありません。
ここには3曲収録されていますが、1曲目の「リズマニング」がおすすめ。難しいリズムの曲を軽快に繰り広げていきます。気心の知れた仲間を得て、フレディー・ハバートのノリノリのソロが楽しい。作曲者のセロニアス・モンクの名前を聞くと毛嫌いする人もいるかもしれないけれど、この演奏を聞けばいい曲だと思うはず。そこからモンクの原曲を聞いてみるのもいいモンクの突破口となるかもしれません。

このアルバムはいい演奏をたっぷり聞けるかなりのお得盤です。

 

 

☆「ライブ・アンダー・ザ・スカイ V.S.O.P ザ・クインテット」

V.S.O.P ザ・クインテット
2枚組  

 

 

1977年から1992年まで日本の田園調布の田園コロシアムや、よみうりランド オープンシアターEASTなどで行われたフェスティバル。
VSOPのこのアルバムは、ライブ・アンダー・ザ・スカイ2回目の登場となるライブです。開催日は1979年7月24日~29日、このライブは7月26日にあたります。

もともとV.S.O.Pはハービー・ハンコック、ウエイン・ショーター、ロン・カーター、トニーウィリアムスのマイルス・ディヴィス・クインテット卒業生の再会セッションとして企画されたが、マイルスディヴィスが休養中だったため、マイルスの代わりにフレディー・ハバートを入れて組まれたバンドです。最初は名前どおり「ベリー・スペシャル・ワン・パフォーマンス」の一夜限りの興行のはずだったが、好評により数年間続けることとなったのです。

アルバム1曲目の「ワンオブアナザーカインド」は、ライブ史上最高のパフォーマンスの一つと言えると思います。フレディーハバートのトランペットが鳴り響いたとき電撃を食らったようなショックがありました。(もちろん本当に電撃を食らったことはありませんが。)フレディーハバートは以後自分のアルバムで何度か取り上げているがやはりこの興奮をこえるものではありません。
それに加え、「伝説」となっているアンコールでのハービーハンコックとウエインショーターの雨の中のデュオ演奏などもあり、同じV.S.O.Pのアルバムの中でもきわだったものになっています。
ただよくライナーノートを読むと、曲順が違っているのです。1曲目は本当はコンサートの最後の曲(アンコールの2曲を除く)だったのです。最初から最高潮のように見える曲をあえて最初に持っていく。聞くものの心をつかむ工夫がされているのです。レコードの編集マジックといえるでしょう。

アルバムには収録されていませんが、フェスティバルの他の出演者にチック・コリアや渡辺貞夫のバンドがいました。
 

☆「ベイシー・ビッグ・バンド・アット・モントゥルー'77」

カウント・ベイシー・ビッグ・バンド
   

 

 

1967年にスイスのモントルーにて第一回が行われました。それから現在まで続いているジャズ・フェスティバルです。
カウント・ベイシーのライブ盤で最初に名が上がるアルバムだと思います。
他のライブ・アルバムが手に入りにくいこと、比較的再発されていることなどがあげられます。
その他にこのライブの前の1975年に「ベイシー・ビッグ・バンド」という大傑作アルバムが発売されて、そこから3曲演奏されていることも一つの要因でしょう。
バンドのメンバーにはトランペットのソニー・コーン、トロンボーンのアル・グレイ、ドラムのブッチ・マイルスなどの名手がいました。
オススメの曲はA面4曲目の「ザ・モア・アイシー・ユー」。アルグレイのメロディアスなトロンボーンがフューチャーされるスロー・バラードです。もともとは1945年の映画のためにハリーウォーレン(作曲)とマックゴードン(作詞)が作った曲で、ベイシーオーケストラの演奏としてはこのアルバムにしか入っていないレアな曲なのです。
ベイシーのライブ盤の良い所は、ビッグ・バンド・オリジナルの曲の他にスタンダードの曲が絶妙に配置されていること、そしてバンドの定番曲の「ジャンピング・アット・ザ・ウッドサイド」と「ワンオクロックジャンプ」で締めくくるバランスの良さでしょう。聞くものが期待をはずすこともなく、新しい発見もあり、スタジオ録音とは違う楽しみ方をするのです。

 

かつては山口県の黒井村で「マリンピアくろいジャズ・フェスティバル」が毎年あったのですが、なくなってから久しくなります。暑さで倒れそうになりながらも一日過ごしたのが懐かしいです。
みなさんも熱中症には気をつけましょう。