今年は入梅が遅いと思ったら、もう明けたようで、
本当にあっという間でした。
日本の雨の歌というと、どこか物悲しい、寂しげな
ものが多いのですが、アメリカではどうでしょうか。
それではジャズの中の「雨」の曲を取り上げてみましょう。
「どうせ降るなら別の日に」 |
カウント・ベイシー・オーケストラ |
| ”心を繋ぐ6ペンス”より |
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1967年の作品。この曲はもともとはミュージカルの中の曲です。
カウントベイシーオーケストラのレパートリーの中でミュージカルものでは、「マイフェアレディー」の中の「時間通りに教会へ」があります。その方は有名で、その曲が入ったアルバムはcd化されていますが、こちらは全曲同じミュージカルの曲で構成されているのに、取り上げたミュージカルが日本ではマイナーなせいか、おそらくcdにもなっていないようです。それは逆に言えばレア盤ということなのですが、決して出来が悪いわけでもない。よくスイングするバンドの演奏はここでも健在です。
曲目が舞台のシーンを思わせるような「彼女は高嶺の花」「私は自分を知っている」「あるあまる金」など、おもしろい題名が並んでいて、ストーリーに沿っており、それだけで楽しめるアルバムなのです。
簡単にストーリーを言うと、貧しい青年のアーサー・キッブスが恋人のアンを捨てて、金持ちの令嬢のヘレンにプロポーズする。しかし上流社会になじめずヘレンをあきらめ、アンに許しを請い結婚する。その後叔父さんの莫大な遺産が転がり込むが、ヘレンの兄にだまされて、そのお金を使い果たされてしまう。その後アーサーは立ち直って小さな店を持ち、アンと一緒に幸せに暮らしていくというものです。タイトルの「心を繋ぐ6ペンス」とは6ペンス硬貨を2つに割って、アーサーとアンがそれぞれ持ち愛を誓うとことからです。
スイセンの曲は令嬢のヘレンとのデートの日が晴れになるようにと祈るが、結局土砂降りとなり、やけになったのか、雨の中を踊りまくるというもので、その内容とおりに愉快なメロディーを持った曲です。ブラス・セクションのアンサンブルとソロのバランスが絶妙によく、軽快なビッグバンドサウンドを堪能できる1曲です。
メンバーはベイシー亡き後3代目のカウント・ベイシー・オーケストラのリーダーとなったグローバー・ミッチェル(トロンボーン)をはじめ、マーシャル・ロイヤル(アルト・サックス)やイリノイ・ジャケー(テナー・サックス)など退団後も活躍した有名なプレイヤーが参加しています。 |
ヒアズ・ザット・レイニー・デイ |
バド・シャンク |
| ”バド・シャンク・ミーツ・ザ・リズム・セクション”より |
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ウエスト・コースト・ジャズを代表するバド・シャンクは、アルト・サックス、テナー・サックス、フルートを使い分けるマルチ・リード奏者です。
1996年作のスタンダードを集めたアルバムからの1曲です。
この曲はヴォーカルではフランク・シナトラが歌ってヒットしました。
冷え切ってしまった恋愛を悲しむ歌です。
おだやかな空が徐々に曇りだしたかと思うと、ポツポツと地面を雨粒がぬらし、駆け足で雨足が激しくなっていくといような、曲を大胆にフェイクしながら、ゆっくりとしたテンポで始まり、突然急速テンポに変わっていく。そこからはザンザン降りの雨のように怒涛のフレーズが展開していきます。
緩から急にだんだん変わる過程が楽しい曲となっていますので、そこに聞き応えがあります。
メンバーは他にサイラス・チェスナット(ピアノ)やジョージムラーツ(ベース)、ルイス・ナッシュ(ドラム)です。 |
「カム・イン・アウト・オブ・ザ・レイン」 |
オードリー・モリス |
| ”ビストロ・バラッズ”より |
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しっとりしたおだやかな歌声で静かに心にしみるような歌を歌う。
最初聞いた印象はそういった感じです。無駄を剥ぎ取ったような、派手さはないが、その分聞くものを歌に引き込む力強さがある。よく耳を澄ますと、シンバルの音がかすかに入っているので、もう一人メンバーが参加しているのが分かりますが、ほぼ効果がないので、ピアノとベースがメインのバンドを言っていいでしょう。
ピアノはオードリーモリスの弾き語り。
1955年の録音なのですが、華やかなオーケストラをバックに歌ったものと違い、時代的な古さを意外と感じませんでした。それは最近のヴォーカルものが小編成のものが多く、あえて古いアレンジを意識していることが少なくないからでしょうか。
この歌唱を聞くと歌はシンプルなほど心に響くんじゃないかと考えさせられます。この曲は恋の仲直りの曲だとライナーノーツに書いてあります。夏の夜に聞くとじんわりと心に染み入り、オードリー・モリスのトリコとなるでしょう。 |
どうやらアメリカでも心情を背景にしたものが多いようです。
話は変わりますが、北九州の門司港レトロでは毎年7、8月はジャズのライブが船上レストラン前のハーバーデッキで行われています。
地元のバンドを中心に、毎週出演バンドが変わります。
18:00ごろからおそらく3ステージずつあると思いますので、夕涼みがてら、気になる方は行ってみてはどうですか。 |